江戸時代、庶民に愛された浮世

絵の春画。

当初から春画は幕府の咎めがあ

るなか、春画初期の頃の鈴木春

信の作品をみてみる。

 

鈴木春信と春画

鈴木春信(1725-1770)は、

錦絵の考案者で、笑本(艶本)

を含め、独学で浮世絵を学ん

でいる。

春信は、古い中国の時代の画

家・仇英に私し、かれの春

画は、中国春画のようである。

 

絵の女は可憐で、詞書(文)、

書入れ(セリフ)がはいり、

の男と女の愉しい語になっ

ている。

 

『風流 座敷八景』

「風流 座敷八景」は、「座敷

八景」から趣向、図柄を変え、

詞書をいれて描かれている。

 

「座敷八景」は旗本・巨川(きょ

せん)の摺(私家版)の錦絵で、

八景ということで八図からなる。

 

第三図「鏡台秋月」

 

 

髪結いをしている女性。

男が背後から女の腰に両手を

わし、煙管を口にし、女のもの

にふれている。

秋の夜乃雲間の月と

見るまでにうでな(台)に

のぼる秋のよの月

 

 

第五図「台子夜雨」

 

 

 

夜、部屋の茶釜の湯が沸騰し、

その音と湯気が、板間にもれる。

板間では、女が隙間から部屋の

ふたりをのぞいている。

たきる湯の音ハ志きりに

さよふけてふるとぞあめの

板間にやもる

 

 

「風流 艷色真似えもん」

春信の晩年、明和7(1770)年

の作で十二図からなる。

他人の性をのぞくために、主人

公を小さく変身させて登場させる。

主人公にあやかるために、この豆

粒のような男の名を真似えもんと

名つけている。

 

第二図「寺子屋の師匠と娘」

 

 

寺子屋の2階。

男は、手習いにきている新開嶋(

娘)へ渡る。

右足でかき上げ、右手が娘の裾か

破開(ぼぼ)へ。

この風景をそばの座机の小さな穴

のぞく真似えもん。

思いをとげんとする師匠のそばで

猫が交尾している。

 

若衆と娘の心中

 

 

娘は若衆と心中することにな

遅れてきた若衆を忙し、最期

の一戦となる。

真似えもんが「親たちの嘆きい

かばかりか」と、脇差しを隠し、

心中現場に飛び入りする。

 

鈴木春信と

歌麿・北斎「浮世絵春画」

春信以後、すべての浮世絵師は、

春画を描いている。

春信は美人画の画題に和歌、謡曲

など古典的題材のいわゆる見立て

絵が多く、歌舞伎役者画を、「何

ぞ河原ものの容(かたち)を画く

にたへんや」(「浮世絵類考」)

と蔑視し、武士出身ではといわれ

る。

 

春信の春画は、おもに文を主にし

ていたが、その後しだいに文から

画に移り、寛政期の歌麿・北斎の

春画では男女の姿を画面に大きく

すえ、そのときの肢体や表情をこ

やかに描くようになる。

春信の春画は浮世の風流な男と女

の夢物語である。

 

 

2019.9.8

葛飾北斎と浮世絵(「春画」)ー男と女の物語(27)