旅行手配の仕事をしていた頃のお話。
私は海外の航空券の予約を担当していた。
メールなどによる海外航空券の問い合わせを元に、予約を取っていく仕事だ。
その中で一番困るのが、「満席の便の予約を取れ」とか、「安くしろ」とか、
無意味な押し問答を仕掛けてくる人間。
席が取れない理由とその料金になる理由、代案を何度説明しても、理解しようとせず食い下がってくる。
食い下がったところで、席が取れるようになることは、残念ながらない。
本音を言えば、ここでゴネる人間だったら、余所を当たってくれと言いたくなる。
「取れねえよ、バーカ」とでも答えてやりたいのを我慢して、
普通は丁重に事情を説明することになっている。
何が迷惑かって、その間、無意味に時間を取られること。
ちゃんとルールを理解して、それに従って予約をいただいている他のお客様の迷惑になる。
何でゴネる人間に時間を割かないといけないのか、このことが私は納得できない。
特に最近の航空券は、予約後3日以内に購入とか、とにかく予約⇒購入のサイクルが早い。
だから、予約を入れてから、お客様にするアクションは、スピードが勝負。
普通、旅行会社の人間は、1人当たり同時に100人前後の予約記録を抱えている。
(この状態自体もどうかと正直思うが…)
そんな所に、無意味な押し問答を仕掛けてくれたって、迷惑極まりない。
ちゃんと待ってくれているお客さんにしわ寄せが行くのは、私は我慢ならない。
だいたい、航空券で席が取れないのは、安い席はとうの昔に他のお客さんが押えているから。
当然、日によっては予約が入らないところだってある。
色々事情はあったにしても、
手前がもたもたしていて、予約ができなくなった不始末を、他人にどうにかしろと言われても困る。
それで恫喝しようが泣き落そうが、席が取れないモノは取れない。
もちろん、放置はしない。代案は提案する。
でも、そういう人間に限って、この便でないと困るとか言い出す。
酷い場合は、実際に便が飛んでいる時間を伝えても、
便のない時間に飛ぶ前提で計画をぶち込むような御仁までいる。
うん、それ計画じゃなくて、妄想だわ。
大事な用事があるから何とかしてくれ?
他のお客様は、大事な用事があるから、さっさと予約をしていますが…
何故予約を取っておかなかったの?という話だ。
特に業務渡航だったら、何らかの会議や見本市があるのであれば、混雑は予想できたことですよね。
だから、代案を出した時点で、それに乗ってくれるかどうかにしか、手配する人間は興味がない訳だから、
取れもしないモノに固執するのは、正直どうかと思う。
仮に運良く(?)席が空いて、希望通りに取れてしまったとしても、こういうゴネた人間が感謝してくれることは皆無なのだから、やりがいがないことこの上ない。
これと似た話で、「座席が確定していないから、予約できていないじゃないか」という勘違い。
これで色々言ってくる人もも非常に多い。
航空券の予約は、あくまで「便の予約」だ。
航空会社の中では、座席の指定はあくまで付加的なサービスという位置づけだ。
だから、座席指定可能な席で、チェックイン前に解放されている席なんて、航空便の中でも一部だ。
その枠の中で希望の席が取れないからって、予約が取れていないとかギャアギャア騒ぐ。
業務渡航で慣れた人間ほど言うから非常にたちが悪い。
その文句は旅行会社に言われても困る。
取れる範囲で、座席指定を出しているだけだ。
文句を言うならば、航空会社に直接言って欲しい話だ。
「絶対に前の方、通路側がいい」ってダダをこねるなんて、お前は小学生のガキか!!
と言ってやりたくなるのを必死に押しとどめて、普通は丁重に説明することになっている。
それをしているのが子どもではなく、いい歳したオッサン・オバサンなのだから気持ちが悪い。
確かに、長時間のフライトで、真ん中の席になってしまうのは、気分の良いものじゃないのは分かる。
それで何とかしたい気持ちは分かる。
どちらにしてもチェックインの時には、座席を選べるようになるから、早めにチェックインしてみては、と案内している。
それでも、残念ながら期待に沿えないことだってある。
ここまで説明すればいい話のように私は思うのだが、それすら我慢ができない、残念な大人?が多すぎる。
だから、全ての航空会社が、チェックイン前の座席指定を有料にしてしまえばいいんじゃないのか、とすら思う。座席指定が「付加的なサービス」だという位置づけである以上は、その方が筋が通る。
(マイレージによる料金の傾斜はあってもいいと思うのだが。)
サービスなのに、無料にするからごね出す人間が出てくる。
有料にしてしまえば、航空会社にとっても、無駄な問い合わせが減っていいことだと、私は思うのだが。
旅行会社の人間は、時間に追われて仕事をしている。
だからこそ、料金や空席など、旅行会社で動かせないものでごねられるのは、非常に迷惑だ。
どうせ他のお客様の迷惑を考えられない人間だから、こういうことをするのだろうが…
こんな非生産的なゴネをした所で、結局自分の首を絞めてしまう結果になるのだ。
というのは、無意味にゴネている間にも、
容赦なく空席は埋まっていき、無慈悲に料金も上がって行ってしまうからだ。
旅行商品に関しては、明らかにゴネ損だ。
もちろん、説明を求めるのは構わない。
紳士的・淑女的に問いかければ、ちゃんと答えてくれるだろう。
納得いかないのであれば、色々な会社の話を聞けばいいだけの話だ。
売ってくれる人に全員嫌われて、売れないと言われたら、あなたがどれだけ買いたくてお金を積んでも買うことができないのだから。
売っている人だって人間なのだ、ということ心に留めておいてほしい。
ゴネたところで、ないものはないのだから。