沙羅の花  161/365

 

 

 

沙羅の花

  

芥川龍之介      

 

 沙羅木は植物園にもあるべし。

 わが見しは或人の庭なりけり。

 玉の如き花のにほへるもとには太湖石(たいこせき)と

 呼べる石もありしを、今はた如何になりはてけむ、

 わが知れる人さへ風のたよりにただありとのみ聞えつつ。
 

 また立ちかへる水無月の
 歎きをたれにかたるべき。
 沙羅のみづ枝に花さけば、
 かなしき人の目ぞ見ゆる。
 

 

(大正十四年五月)

底本:「筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻」筑摩書房 
   1971(昭和46)年6月5日初版第1刷発行
   1979(昭和54)年4月10日初版第11刷発行

 

 

村山槐多展に行った帰りに

沙羅の花が落花しているのを

見ました。

白い花の美しさに心を奪われました。

 

 

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