【京橋勉強会】(2024年3月16日(土))

≪西洋哲学史≫(俗説と偏見にまみれた仮説) 
(1)哲学はプラトンから始まる 
①師ソクラテスの「無知の知」に基づく、一切の常識・基礎を疑う。 
②イデア説に基づく性善説。 
 
(2)近代哲学はデカルトを祖とする 
①プラトンの師ソクラテスの様に、懐疑主義を貫いた。 
②但し、近代らしく、物質の優位性が表面化してきた様に思われる。 
(単なる観念論ではなく、「物心二元論」で世界を解釈しようと努める) 
 
(3)カントにより、哲学は科学の太鼓持ちとなる 
①人間の認識において、「神・魂・無限」等の認識不可能性を主張し、結果的に哲学の中にも、認識的には科学(者)と同じ枠組みで見る事を強要する下地を作った。 
②目に見える範囲で、すべての物事を解釈する[=有限性]という態度で、哲学の一般化と共に、「(カント)哲学」の限界も内包している。 
 
(4)ヘーゲルは近代哲学の完成者である 
①カント後のフィヒテとシェリングは、〈自我〉や〈直観〉を援用する形で、カント哲学の(準)科学性[=有限性]を乗り越えようとした。 
(科学的価値観に留まらない哲学を構築しようとした) 
②ヘーゲルは自分の時代(約200年前)に「歴史の終わり」を意識、再び〈神〉や〈直観〉等を意識しない範囲で、弁証法的な進展により人間精神[意識]の(無限)成長[=絶対知]を予感する。 
(哲学の本流・本脈をヘーゲルなりに発見し、解釈する) 
 
(5)ハイデガーの後、哲学は衰退の道を歩み始める 
①ハイデガーは20世紀最大の哲学者と称されるが、一時的にせよナチスに賛同・加担したため、中後期のハイデガーは哲学者としての道を絶たれ、西洋哲学の中興を果たした「ドイツ観念論」からの流れも絶える事となった。 
②「プラトン(+アリストテレス)⇒近代哲学[デカルト→カント→ヘーゲル]」の<西洋哲学(史)>を20世紀において、唯一引き継げる知性を持っていたと思われるが、ナチス加担の事実と神学者としての資質を持ち合わせていた事により、ハイデガー自身では、哲学の本脈を哲学的に継承・構築できなかった様に思われる。 
③少なくとも、ハイデガー[前期]を継げる哲学者は、約100年近く現れていないと思われる。 
 
(6)現代フランス思想の興隆 
①哲学の本流を継いでいたドイツ哲学が頓挫、文学的なセンスを持つ現代フランス思想が戦後、哲学の主流となる。 
②フーコー、ドゥルーズ等に才能のキラメキを感じるが、少なくとも「・・・→ヘーゲル→ハイデガー」の哲学の本流・本脈には近付きつつも、まだ道半ばである。 
③2006年のQ.メイヤスー著『有限性の後で』により、様々な仮説を援用して、カント哲学に風穴を開け始めた。 

(7)現在(2024年)
上記の流れを引き継ぐ段階・ステージとして、現在(2024年)の哲学的状況があるものと考えられる。 



≪プラトンとアリストテレスの視点の違いについて≫(推論を含む)
 16世紀イタリア・ルネッサンス時代の巨匠ラファエロの名作『アテナイの学堂』には、右手人差し指を天に突き刺したプラトンと、同じく右手を前方真っ直ぐに突き出したアリストテレスが描かれている。これは天上界の「イデア」を指向するプラトンと、あくまで現実的な視点・視座より自然界・人間界を捉えようとするアリストテレスとの認識の視点の違いを、端的に表現した絵画としても有名である。

 視点・指向性が「天上界」と「現実界」であることの相違、その結果、2人の結論がどれほど大きく異なっているか、驚きを隠せない。

 それぞれの特徴をまとめてみたい。

(1)プラトン哲学の特徴
  個人的な推測の域を出ない話となるが、プラトンは「現実界」の実在性は認めるが、それ以前に「天上界」(イデア界)を措定し、「現実界」における指向性・流れの様なものが存在するとすれば、それは完全性を備えた形象とその形象に基いて現象に向かう力、つまり、<イデア>に向かう力と指向性が潜在していると考えた。そこには、<イデア>の完全性に向かう動的な力が存在している。

(2)アリストテレス哲学の特徴
  プラトンの視点に対して、アリストテレスはあくまで「現実界」に着目、静的・空間的に現実を観察し、驚くべき知性をもって、およそ考え得る分類と考察を行い、後世、「万学の祖」と称される程の道を開いた。現代で言うところの徹底した「経験論(者)」ではなく、各個物に師プラトンの<イデア>に相当する<形相>(エイドス)を、鍵となる概念として考察していた。しかし、「現実界」から離脱する様な「天上界」は否定した。

(3)まとめ
  <西洋哲学>はソクラテスを祖とし、2人の偉大な弟子(プラトンとアリストテレス)により、その原型・雛形は完成したものとなった。先ず、プラトンが半ば宗教的とも言える<イデア>(界)の存在を認め、我々人間は、より完成された人間と社会を形成する存在者として定義された。アリストテレスは<形相>という概念こそ中心概念の一つとして重要視するが、原則的に師プラトンとは正反対に、「現実界」の考察のみに終始し、その限りで最高度の抽象化を行った。
ターレスに始まったとも言われる古代ギリシャ哲学であるが、ソクラテスの後、プラトンとアリストテレスの2人それぞれの特性を併せて、<西洋哲学>が始まったと考えられる。



≪参考文献≫ 
・R.デカルト 『省察』(ちくま学芸文庫)
・I.カント 『純粋理性批判』(岩波文庫)
・G.W.ヘーゲル 『精神現象学』(ちくま学芸文庫)
・G.W.ヘーゲル 『哲学史序説』(岩波文庫)
・Q.メイヤスー 『有限性の後で』(人文書院)