つい先日、小生の大好きな番組、「サイエンスゼロ」で、バクテリオ・ファージの話題が取り上げられていました。

とても、興味深い内容でしたので、ご紹介します。

 

薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがおありでしょうか。

抗生物質などが効かなくなった細菌などのことです。

生物は、毒など対して、耐性を獲得することで、進化してきました。

例えば、人に、ある薬を投与し続けると、ある時から、効かなくなることがあります。

つまり、その薬に対して耐性ができるわけです。

お酒なども、飲み続けると、少し飲めるようになる、つまり、耐性ができたということですね。

細菌に、むやみやたらに、抗生物質を使うと、耐性ができ、実に厄介なことになります。

抗生物質が効かない細菌は、宿主にとって、とても脅威となります。

で、今までは、この耐性菌に対しては、(遥かむか~し、使っていた抗生物質に、案外弱かったりすることがあるようですが)基本的に、何もできませんでした。

つまり、耐性菌が増えていけば、ものすごい数の人類が生死をさまよう事態になりかねないわけです。

それを防ぐ目的で、EUが今、ホスホマイシンを投与した牛の牛肉は輸入しないという措置をとっているわけです。

 

で、この対策が、長年、求められていました。

そこで、登場したのが、ファージ・セラピーという全く新しい治療です。

ファージとは、ギリシャ語で、「食べるもの」といった意味だそうです。

まぁ、このネーミングには、少し、一般人向けに嫌悪感をぬぐう意図が見え隠れします。

実際、使用するのは、化学物質ではなく、ウィルスです。

つまり、ウィルス療法ということですね。

このウィルスという言葉に、敏感に反応する方に対して、ファージ・セラピーという呼び方にしたのではないでしょうか。

この治療に使うものは、ある特定の細菌にだけ感染するバクテリオ・ファージと呼ばれるウィルスの一種です。

つまり、耐性菌にウィルスを感染させ、細菌の中で増殖したウィルスによって、細菌が破壊されるというものです。

 

先ほども書きましたが、ある特定の細菌にしか、感染しませんので、その細菌に感染するウィルスを見つけることができれば、治療に用いることができるわけです。

ま、それでも、ものすごい数の組み合わせになりますから、見つけるまでがとても大変だということは、想像に難くありません。

 

最近では、その探す手間を省く研究が成果を上げています。

つまり、その細菌に感染するウィルスを作ることができるようになったということです。

といっても、ウィルスをゼロから作るのではなく、感染が可能な細菌かどうかを判断する触手のような部分だけを、感染するようにデザイン(ゲノム編集)するわけです。

イラストにすると、わかりやすいのですが、一番下の部分が触手のような部分です。

この部分を用いて、感染可能な宿主かどうかを判断しているわけです。

この部分を、感染できるように、デザインできるんだそうです。

恐らく、クリスパーキャス9を使うんでしょう。

では、このバクテリオ・ファージって、やがて、増え続け、生物の体内で害をもたらす可能性はないのかという疑問がわきます。

まぁ、そこは抜かりないですよ、このウィルス、一代で死ぬように操作してあるんだそうです。

つまり、増えないんです。

また、別の疑問もわきます。

つまり、このバクテリオ・ファージに対する耐性はできないのかということです。

実は、耐性はできるんですが、毒性が、かなり弱まるんだそうです。つまり、あまり害をなさなくなるんだそうです。

フ・シ・ギ

 

ま、しかし、こうなると、抗生物質というものが、用をなさなくなる気もしますね。

薬品メーカー、縮小部門ができるかもです。

このファージ・セラピーの研究で、最も、先を行くのは、東大でも京大でもなく、帯広畜産大なんだそうです。

つまり、動物の治療に使うことによって、実績が得られるわけですね。

この辺、繁殖障害などの不妊治療と同じですね。