前回のシリーズ記事から越年をしてしまいました。
で、今回は、その続きということで、乳用牛の特徴についてです。
私は、実際に乳用牛を見ることは、めったにありません(成牛競市で、たまに見ます)が、乳製品は、毎日のように、食べていますので、かなり関心はあります。
また、小生たち、和牛繁殖農家に対して、よく「へ~え、酪農 をされているんですか?」と聞かれることがよくあります。
このことは、無論、的外れですね、酪農は、乳や乳製品を扱う畜産ですから。
ただ、このことは、ある意味、一般(非農家)の方の認識をよく表している気がします。
子供に牛の絵を描かせると、白黒のホルスタインが殆ど。
それだけ、牛≒乳用牛≒ホルスタインが、浸透していることを意味し、同時に、歴史が古いことも意味します。
実際、日本で、本格的に酪農が行われたのは、明治初期だそうですから、140年の歴史があるわけです。
ただ、信じられないことに、「お乳を勝手に出す牛がいる」、あるいは、「そういう種類の牛なんだ」と思っている一般方も少なからずいらっしゃるはずです。
当たり前ですが、妊娠させなきゃ、お乳は出ません、哺乳類ですから。
つまり、お乳の搾れる牛は、全て、♀で、かつ子牛を出産したばかりであるということです。
では、その産まれた子牛は、どうするのか。
♀ならお乳を搾るための牛にすればいいですが、♂の運命は?
あるいは、お乳を搾るための牛にしなかった♀の運命は?
また、もう年老いて、受胎しにくくなった母牛の運命は?
そう、乳用牛と言えど、牛肉になっているんです。
無論、子牛は、十分に肥育してからですけど。
特に、観光牧場などでは、牧歌的なイメージ戦略が必要ですから、放牧っぽいことをしているので、一般の方には、そいういう暗い面が、伝わりにくいわけです。
話は変わって、酪農の「酪」という字、醍醐味 (だいごみ)の「醍」や「醐」という字は、全て、「酉」という偏になっています。
これって、酉偏(とりへん)なんですが、調べてみると、たくさんありますね。
酋、酌、酒、酎、配、酔、酢、酬、酪、酵、酷、酸、醇、醐、醒、醍、醜、醤、醸、・・・
何か、発酵に関するものが多いようです。
酷(こく・ひどい)や醜(しゅう・みにくい)など、ややダークな面にも使われているようです。
話が反れました。
さて、講義内容ですが、品種ごとの特徴をまとめた内容でした。
▼ホルスタイン種(Holstein)
原産地は、オランダ北部フリースランド(フリースラント)地方 。
正式には、ホルスタイン・フリーシアンという。
ドイツでも同系統種が飼養されており、オランダの牛を用いて改良された。
体格と肉質の向上目的でショートホーン種 を交配したことがある。
【毛色】
黒白斑、まれに赤白斑(ショートホーンの影響)
尾房・腹・蹄冠部は白色
【平均体重】
♂1100kg、♀650kg
【年間平均泌乳量】
6000kg~11000kg
【乳脂肪】
3.4~4.3%、脂肪球比較的大(直径0.1~10μm)
【その他】
首の付け根と乳頭と腰骨を結んだ直角三角形(くさび形)の首の付け根の近くの角度が、およそ32度が理想形
▼ジャージー種(Jersey)
原産地は、イギリス領ジャージー島 。
フランスのブルトン種やノルマン種を基礎に、1763年以来、法律により多品種との交配を行わず、純粋繁殖が続けられている。
【毛色】
鹿色灰褐の淡色
鼻鏡の周囲に白色輪(糊口)
尾房・鼻鏡・舌・蹄は黒色
腹・下肢は淡色
【平均体重】
♂750kg、♀400kg
【年間平均泌乳量】
4600kg~6800kg
【乳脂肪】
4.6~5.9%、脂肪球大、バター作りに適する
▼ブラウンスイス種(Brown Swiss)
原産地は、スイス。
ヨーロッパ最古の品種とされ、当初は、乳・肉・役の3つの用途を有する兼用種であったが、次第に乳用種としての比重が高まった。
また、アメリカで、乳専用種として改良された。
【毛色】
暗~淡い灰褐色単色
鼻鏡の周囲に白色輪(糊口)
尾房・鼻鏡・舌・蹄は黒色
腹・四肢の内側は淡色
背の正中線に暗色の線
【平均体重】
♂1050kg、♀650kg
【年間平均泌乳量】
5900~7800kg
【乳脂肪】
3.9~4.1%
【その他】
乳糖が多いためチーズに適する
▼ガーンジー種(Guernsey)
原産地は、イギリス領ガーンジー島 。
ジャージー種と同様、フランスのブルトン種やノルマン種を基礎に成立。
ジャージー種よりも、ノルマン種の影響が強い。
【毛色】
黄褐色または赤褐色地に白斑
額に白斑(ホシ)があるものが多い
鼻鏡は肉色
四肢・尾房は白色
【平均体重】
♂800kg、♀450kg
【年間平均泌乳量】
4600~6500kg
【乳脂肪】
4.4~4.6%
脂肪球大
【その他】
高千穂牧場 に居るらしいです。
▼エアシャー種(Ayrshire)
原産地は、スコットランド南西部エア州(ただし、調べてみると、エア州というものは無く、イースト・エアシャイア 、ノース・エアシャイア 、サウス・エアシャイア という行政区は存在する)。
在来種にショートホーン種やティースォーター種(かなり調べたが、分からず。羊ならTeeswater種というものが存在するようです。どうもテキスト の誤植のような気がします。)、ホイダーネス種(これもかなり調べましたが、詳細は分かりません。Heudernessという地名はあるようです。)等、多くの品種が交配されて成立した。
【毛色】
白色に赤褐色斑
【平均体重】
♂850kg、♀530kg
【年間平均泌乳量】
4500~7700kg
【乳脂肪】
3.8~4.4%
脂肪球細かい
【その他】
乳たんぱく質(カゼイン )が多く、チーズに適している。寒さに強い。
以下、中央畜産会の畜産ZOO鑑へのリンクです。
社団法人 全国肉用牛振興基金協会の乳用牛の種類 へのリンクです。
以上。
「家畜取引の知識」(社団法人日本家畜商協会編集)というテキスト、できればカタカナ外来語には、英語も併記して欲しいものです。
エアシャー? エアシャイア?
ガーンジー? ガンジー?
ティースォーター? ティースウォーター? ティーズウォーター?
フリースランド? フリースラント?
ホイダーネス(検索しても見つからず)
など、実に紛らわしいです。
次の講義内容は、豚等についてです。