257.反省


ポール・マッカートニー&ウイングスが’77年にリリースし、スコットランド西部 キンタイヤ岬に敬意を表したサウンドで世界中で大ヒットしたナンバー"夢の旅人"のようなスコティッシュ・ワルツもしくはスコティッシュ・フォークのようなサウンド作りが印象的なスケール感の大きなスローナンバー。


ライブで'02年に参加した際に体験させて頂いたのですが、間奏での矢萩さんの放牧的でやや長尺なソロと安全地帯のメンバーによるコーラスワークは、より一層スコティッシュ・フォークの持つ放牧的な雰囲気を醸し出していて、安全地帯のグループとしての音楽性の幅の広さの拡大を21世紀再始動と同時に期待せずにいられないと感じさせられました。


安全地帯の新たな一面が垣間見るナンバーとも言えるかも知れませんね。


また玉置さんの優しさや哀しみ、哀愁などをより感じさてくれ、深みを増した感のあるボーカルが派手さはないが印象に残るナンバーだとも思います。


スコティッシュ・フォークの持つ放牧的、開放的なアコースティックサウンドを軸に、曲の持つ奥行きの深い部分を感じながら聴きたいナンバー。


資料1.さまざまな要素を取り入れた安全地帯の魅力はフリーマガジンなどでも詳細に紹介されました。




258.二人称



改めてじっくりと聴いてみると安全地帯って日本のバンドなんだと実感する"和"の要素、素材を軸にしたかのようなサウンド作りが印象的なミディアムナンバー。


聴いていてどことなくですが、'80年代のJPOPの代表作品的なサザンオールスターズの2枚組アルバム『KAMAKURA』のラストナンバー"悲しみはメリーゴーランド"のような、"和"の要素から更に踏み込んだ中央アジア的、シルクロード的なサウンドの持つ、きめ細かさと広大さの備えながら独特のサウンドを構築し始めていた'80年代初期の日本の音楽シーンのサウンドの影響も感じさせられる辺りも見逃せないポイントだと思います。


その時代のサウンドの持つ遺伝子のようなものをサウンドの響きなどから感じさられるナンバーではないでしょうか?


ジャーナリスト 鳥越俊太郎さんはとある番組で玉置さんは評した際に"最後に歌謡曲を歌い、最初にJPOPを歌ったアーティスト"と評しておられましたが、この"二人称"を聴いているとその言葉をいつもイメージしてしまいます。


このナンバーも決して派手な部分があるわけでもなく、全体的に目立たないナンバーと捉えがちな楽曲ですが、じっくりと聴いてみると曲の持つ懐の広い部分を感じられるナンバーだと思います。


そういった辺りも感じながら聴いて頂きたいナンバー。




資料2.安全地帯の幅広い音楽性が伺える作品という影響からか、この頃からギターブックなどの書籍も充実し始めました。





259.ハードル



時折、安全地帯は自分達が"ロックバンド"だというのも思い出したかのようにブルースを下地にしたような濃厚なロックナンバーを提示する。


この"ハードル"もアルバム『安全地帯VII-夢の都』収録の"Lonely Far"のような安全地帯のロックバンドとして底力を感じさせる濃厚なロックナンバー。


安全地帯らしい矢萩さんのハードなギターサウンドがゴキゲンなナンバーの一つだと思います。


'00年代初頭、ブランキー・ジェット・シティー、ザ・イエローモンキー、LUNA SEAの解散、活動停止などが相次ぎ、やや日本のロックシーンはどちらというとやや停滞気味になってきた時代。


そんな時期に活動を再開した安全地帯ならではのロックバンドとしての底力を感じさせられる一曲とも言える楽曲だと思います。


たぶん安全地帯のメンバーはそんな事はしないと思いますが、聴いていると一度アルバム全編をこの楽曲のような濃厚かつ重々しいビートのアルバムなど制作していたらまた違う安全地帯の魅力を感じられたのではないかと想像してしまいます。





260.パズル


前曲から一転してメロディー重視の、Mr.ChildrenやMy Little Loverのような聴き心地をメインに構築された感のあるメロディーが印象に残るミディアムナンバー。


小室哲哉さんと並んでもう一人の"TK"でもある小林武史さん。'90年代に上記のグループの他にサザンオールスターズの作品などにも携わり一時代を築いた稀代のプロデューサーでご存知の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?


このパズルはどことなくそんな小林武史さんの作品のような温かみあるまろやかさも聴いていて感じさせられる辺り、改めて玉置さんのメロディーメイカーとして懐の広さを感じさせられる。


散らばってしまったパズルのピースが再び集まった事に対する喜びを巧みに表現されている松井五郎さんの歌詞も改めて読み返してみると胸に来るものを感じさせられる。


地味な一曲なようで、まろやかさと懐の広さを感じさせる楽曲だと思います。



261.デッサン


ズッシリとしながら、身体に染み込んでくるような感覚のリズム、何度も聴きたくなるようなクセになりそうなメロディーと、安全地帯として作品『安全地帯IV』収録の"デリカシー"のような独特な雰囲気を感じさせられるややファンキーなミディアムナンバー。


玉置さんと安藤さと子さんとの曲の持つ"危ない香り"を感じさせられる雰囲気がたまらないコーラスワークと、さりげなく挿入されているサックスとAOR的な要素も感じられるナンバーだと思います。


'80年代の作品のような音の深みのような辺りも感じさせられる安全地帯ならでの作品だとも思います。


なかなか'80年代の安全地帯からの継続性のようなもの感じる事が少ないアルバム『安全地帯IX』ですが、この"デッサン"が収録された事により、かろうじて継続性のよいなものを感じられる貴重なナンバーとも言えるかと思います。


そういった辺りも加味して向き合って聴いて頂けるナンバーだと思います。



資料3.作品の作風などは変化しても'80年代から安全地帯としての"継続性"を感じさせられる。"デッサン"はそういう位置付けのナンバーとして聴いてみたいナンバーだと思います。




257.野蛮人でいい


先行シングル盤"出逢い"のカップリング曲としても登場したアコースティックギターの生々しさを巧みに使ったギターサウンドがたまらないロックナンバー。


アルバムでは前曲"デッサン"から間髪入れずアコースティックギターを軸にした曲のオープニングを持ってきてアルバムの作品自体の緊張感を保持するような展開は安全地帯の作品ではお馴染みの展開ですが、そういった辺りもアルバム『安全地帯IX』においても健在だと再認識された方も多くいらっしゃるのではないかと思います。


またこの場所の配置によって楽曲そのものが一層、緊張感と曲の繊細な部分あたりが感じられるように工夫されているかのようにも感じさせられて、安全地帯のアルバムを制作する際の繊細な部分まで垣間見る事ができるように感じます。


ここ近年の音楽のリスニングスタイルが配信が主体になった事に伴い、楽曲単体で聴いたり、好きな曲を集めプレイリストなどで聴いたりするスタイルが定着しつつありますが、この"デッサン"から"野蛮人でいい"の流れはぜひともアルバムの流れで聴き、アルバムの流れのような感覚を楽しんで頂きたい。



資料4.’02年ツアーパンフレットより。ライブにも流れがあるように、アルバムにも流れがあるとアルバム『安全地帯IX』の中での"野蛮人でいい"を聴いて感じて頂きたい。



262.いま


丁寧に優しく包み込むような温かみある玉置さんのボーカルが印象的なアルバムのラストを飾るバラードナンバー。


安全地帯のアルバムとなるとラストはほぼバラードナンバーで、映画のエンドロールに流れてきそうなアルバム『安全地帯VIII-太陽』の"黄昏はまだ遠く"のような壮大なバラードナンバーが多い中、アルバム『安全地帯IX』ではシンプルな温かみあるバラードで構築する辺りはこの時期ならではの展開だと思います。


振り返ってみるとアルバムがリリースされた’00年代は、洋楽では'90年代初めから国内盤よりやや安価な輸入盤対策として、国内盤にはアルバムの最後に1〜2曲ぐらいボーナストラックを入れ国内盤の購買意欲を促す対策が取られ浸透していったのですが、ボーナストラックという文化が’00年代頭辺りから、高速道路のサービスエリアや街のディスカウントストアなどに、国内盤よりやや安価なアジアからの逆輸入品として販売されてきた対策からか、国内のJPOPの作品にもシングル盤のカップリング曲やアウトテイク、ちょっとした小作品をボーナストラックとしてリリースされる傾向が見られるようになりました。




資料5.'00年代からよく見受けられるようになった風景。プライスダウンにリマスターと、この辺りはCD文化の過渡期だったように感じます。


またアルバムリリース前年の’01年には米Apple社から大型配信サイトのiTunesが、新たな携帯音楽プレーヤーiPodと共に日本の市場に登場、新たな"黒船"襲来により、音楽文化、特に視聴スタイルという部分において大きな転換期を迎えました。



資料6.’01年、Macの音楽ツールとして登場したiTunesは音楽文化そのものを変革した。視聴スタイルが大きく変化することになりました。



視聴スタイルの変化に伴ってアルバムそのものの立ち位置、流れも大きく変化し始めた’00年代。


振り返ってみればCD文化の終わりの始まりだったような時代だったのかも知れません。


アルバム『安全地帯IX』のラストナンバー"いま"をそれまでのアルバムのラストナンバーと比較するとシンプルさが際立つが故に、上記のような当時の風景を個人的に感じさせられる。


そういった辺りも振り返りながら聴いてみるのも作品の違った一面が感じられるかも知れません。






今回も長い文になりましたが最後まで目を通して頂きありがとうございました😊


次回はアルバム『安全地帯IX』からシングルカットされたナンバー"反省"とダブルメインナンバーとして収録された"あの頃へ"のリメイクバージョンを振り返ってみたいと思います。


またお時間あれば読んで頂けると嬉しいです。


引き続きよろしくお願いします🙇‍♀️



https://open.spotify.com/album/3dB66DH7k4wqT9QjDU3zbw?si=6t6L8-8fS3aYXXVAQ2CGEA