258.スタートライン



約9年振りの安全地帯の活動再開を音で表現したような力強いバンドサウンドがたまらないミディアムナンバー。


力をためながらじっくりと重量感あるオープニングからの展開は、'80年代からの安全地帯のライブでお馴染みのナンバー"We're alive"を彷彿とさせる。


かっての艶やかさを捨てて、丁寧に構築されたギターサウンド、安全地帯の独特のズシリとしたリズム、それとソロに専念してさまざまな体験をしてきたからこそなる玉置さんの懐の広さを感じさせられるボーカルと、聴いていくうちに改めて玉置さんのソロ作品としてでない安全地帯サウンドを感じさせられる音作りがたまらない。復活作品としてのオープニングナンバーとしては申し分ないナンバーに仕上がっていると感じさせられる。


人生の応援歌のようでいて言葉の響きのようなものを巧く取り入れ独自の"個性"を感じさせる松井五郎さんの歌詞も印象的。


活動再開として第一歩を踏み出すには申し分ないナンバーだと感じます。




259.なにもない海へ



安全地帯が次々とアルバムをリリースしアリーナクラスでライブを展開していた'80年代後半辺り、世界の音楽シーンさ新たな流れとして、トレイシー・チャップマンさんを筆頭にアコースティックサウンドを軸にした作品が注目を浴びました。


その流れはやがてアンプラグドブームと大きな波となり、日本国内ではそれらのブームの影響を感じさせられるストリートミュージシャンが台頭し始めた’00年代。



資料1.ゆずやコブクロなど路上パフォーマンスからメジャーデビューするアーティストの登場により、路上パフォーマンスは新たな文化の一つとして急速に拡大していった。



"なにもない海へ"は急速に拡大しつつあった路上パフォーマンスをするミュージシャンへの安全地帯からのメッセージのようなアコースティックサウンドを軸にしたオープニングが印象的なスローナンバー。


単にひたすらアコースティックサウンドに徹しながら、時折響くあえて重々しく歪むギターサウンドに、力強いビートも印象的。


聴いてみて安全地帯がどのようなタイプの楽曲に対しても決して一本調子にならないように作品と向き合っているという事も感じさせられるナンバーとも言えるかと思います。



260.一本の鉛筆



'70年代前半に歴史的名盤"つづれおり"で世界的に一大ブームを巻き起こしたキャロル・キングさんやジェームス・テイラーさんの作品を通過したようなきめ細やかさと温かさ、そしてなんとなく切なさを感じさせられるバラードナンバー。


曲の中で目まぐるしく顔を覗かせるさまざまな曲としての表情、風景を感じながらじっくりと聴き込みたいナンバーの一つと言えるかも知れませんね。



玉置さんが軽井沢で音楽をするようになってから時折顔を覗かせる豊かな表現を軸にしたまろやかさと、安全地帯のバンドとしてのさまざまな音の重なり具合がたまらなくフィットしていて、アルバム『安全地帯IX』という作品の中でこの"一本の鉛筆"が特別なナンバーと捉えられている方もいらっしゃるのではないでしょうか。


安全地帯の五人にとっても、ツアーのセットリストに常時入ってはいませんが、30周年のツアーやイベントでは演奏された事から、ある意味特別な位置付けのナンバーかも⁉️


 そういったイメージも抱きつつ聴き込みたいナンバーだと思います。



資料2.デビュー30周年ツアーでは"一本の鉛筆"はセットリストに加わり曲としての"存在感"を感じる圧巻のパフォーマンスを披露。



261.?



アルバム『安全地帯V』収録の"いますぐに恋"やアルバム『安全地帯VIII-太陽』収録の"エネルギー"のようなややウェット感を感じさせられるリズムからの妖艶なムードがたまらない黒っぽいサウンドが印象的なミディアムナンバー。


安全地帯サウンドの特徴でもある玉置さんによる多重コーラスと、粘っこさを感じさせる音作りから来る安全地帯ならではの展開に思わずニンマリとしてしまう。


あまりアルバム『安全地帯IX』の収録ナンバーは他の作品と比較してみるとライブなどで演奏される機会はほとんどありませんが、近年の安全地帯のスタイルではどのような音の響きになるのだろうか?と想像しながら聴いてみたいナンバーの一つでもあるかと思います。


サウンドと比較してスーツに身を固めシーンに帰還した安全地帯。その安全地帯らしい艶やかさの残るイメージに沿ったナンバーの一つと捉えながら聴いて頂けるナンバーだとも思います。



資料3.'80年代のイメージのようなスーツに身を固め、シーンに帰還した安全地帯。"?"はアルバム『安全地帯IX』の中で数少ないビジュアルイメージに沿ったナンバーと言えるかも知れませんね。




262.たいせつなひと



'80年代の安全地帯の作品を彷彿させる王道バラードのような曲のスケールと、'90年代の玉置さんの作品を想像させられるわかりやすい言葉が融合された感のある安全地帯ならでの良質なバラードナンバー。


シンプルなピアノに、やや深みを感じさせられる泥臭さと洗練さを感じさせるギターサウンドと、'90年代に世界的にトレンドだったアンプラグドブームの流れも感じる事ができ、安全地帯のバンドとしての貪欲な一面も感じさせられるナンバーとも言えるかも知れませんね。


幻想的な世界で全体的を包み込むような雰囲気を模写しているような曲のアレンジ辺りにも注目しながら聴いていきたいナンバーの一つ。


しかし何度聴いても聴くたびにいつのまにか曲の世界観に引き込まれていくあたり、玉置さんのメロディーメイカーとしての器の広さを体感させられるナンバーの一つと言える楽曲だと思います。



資料4.世界的にさまざまな影響を与えたアンプラグドブーム。アルバム『安全地帯IX』にも影響が見え隠れする。そのあたりも聴きどころの一つだと思います。




263.遠い昔



玉置さんが軽井沢での創作活動を展開したからこその素朴さ、また避暑地ならでの穏やかさを感じさせられるメロディーが印象に残るカントリー調のミディアムナンバー。


ゆったりとした跳ねるような感じのリズムに、玉置さんのボーカルに寄り添ってやや控え目な感じの安藤さと子さんのコーラスワークあたりも地味だがジワジワと聴いていて曲の世界観に引き込まれていく、そういった辺りも見逃せない作品だと感じます。


改めて曲全体を支配している感のほのぼのした雰囲気を聴いていると、’00年代は情勢的に不景気のど真ん中、"失われた10年"と呼ばれていた時期。自分を見失い上手く行かない時は、じっくりとゆったりと足元を固めながら遠い昔を懐かしくか想うのもアリかなと感じながら聴いていた事を個人的には思い出しました。


時代に寄り添った作品の一つという側面も感じさせられる作品とも言えるかと思います。




264.ストーリー



安全地帯としては珍しい生活感を感じさせられるスローナンバー。聴いていると玉置さんにとって当時の安藤さと子さんとの軽井沢での生活が充実していたからこそのナンバーだと感じさせられる。


当時の軽井沢での生活を取り入れつつ詩の世界を作り上げた松井五郎さんの作詞家として底力や'80年代よりスケールアップされた姿を感じとる事が出来る辺りも見逃せない。


広がるような感覚のギターのカッテングと心地よく絡み合うピアノにベース、ドラムからのこの時期ならでの音の重なりから来る響きを聴くと、日本の音楽シーンでの中心的だったMr.ChildrenやMy Little Lover、スピッツなどから影響のようなモノも感じさせられ、さまざまなアンテナを用いてキャッチしながら作品を構築していく安全地帯を感じられる一曲という一面も感じられる作品だと思います。




256.出逢い



既に先行シングルとしてリリースされていた壮大なバラードナンバー。


それまでの安全地帯のアルバムにおいても先行シングルが収録されアルバムを構築する展開は多々あり、その都度、楽曲そのものの個性を感じさせられるように感じさせられたのですが、この"出逢い"に関して言えば、ごく自然にアルバムの中の一曲としてフィットしてるように感じさせられる。


楽曲そのものに'80年代のシングル曲のようなパワーは感じられないが、その分アルバム内での流れ、他の曲と並列しても違和感なくアルバムにフィットするという点においては雄一無二のナンバーになるのかも知れません。


またある程度シングル盤を軸に活動の幅を拡大していった'80年代とは違い、あくまでもアルバムを軸にそこからシングル曲、ツアーという展開をしていく安全地帯のオーディエンスに対して新しいアプローチの仕方が垣間見る事ができるナンバーとしてアルバムを通して聴く事により再認識できる楽曲かもしれませんね。


21世紀型の新しい安全地帯のアプローチを探っていきながら聴き込みたいナンバーだと思います。



資料5.安全地帯の’02年の告知ポスターより。

21世紀型の安全地帯の活動パターンとして、それまであまり訪れる機会のなかった地域のコンサート開催も増加していきました。



今回もお付き合い頂きありがとうございました😊


次回はアルバム『安全地帯IX』後半を振り返っていきたいと思います。


またお時間あれば読んでいただけると嬉しいです☺️


引き続きよろしくお願いします🙇‍♀️


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