243.このリズムで


アルバムと同時リリースされたシングル曲にも起用された、力強いリズムとポジティブな歌詞が印象的なミディアムナンバー。


シングルナンバーでありながらアルバムのオープニング曲となるとリリース後に安全地帯としてのアルバム『安全地帯VI-月に濡れたふたり』からシングルカットされた"I Love Youからはじめよう"以来、それ以前になるとアルバム『安全地帯 II』の"ワインレッドの心“以来。


それだけ玉置さん自身"このリズムで"というナンバーがアルバムを象徴するナンバーという意気込みで制作されたのかもしれませんね。


ゆったりと歩くようなテンポで、生ギターとピアノが絡んでいき、ダンボールで奏でるパーカッションで躍動感を構築しながら徐々に盛り上げていく展開がオープニング曲という存在感の中で際立っているように感じさせられる。


またアルバムのオープニング曲として起用した事により、後に玉置さんが『ソロアーティスト"玉置浩二"は人生の応援歌のような存在になりたい。』といった趣旨の発言をされてましたが、この辺りの作品でそういった方向性みたいなものが固まっていったようにも感じます。


そういった意味で、"このリズムで"をオープニング曲に持ってきたという事は大きな意味を持ち、重要な事だったとも言えるかと思います。



資料1."このリズムで"のMVより。人生の応援歌的なオープニング曲、シングル曲として玉置さんのソロアーティストとしての方向性が定まっていったナンバーと言える時期のシンプルな映像が印象に残りました。




244.甘じんて受け入れよう


オープニングでの玉置さん、矢萩さんのスリリングで濃厚なギターの絡みあいがたまらない、鋭いサウンドのミディアムナンバー。


玉置さんのボーカルと時折重なるように、また対峙するように演出されている矢萩さんのギターが聴いていてより一層、曲をスリリングな展開に導いているように感じさせられるあたりが最大の聴きどころ!


終盤の乾き具合、泥臭い濃厚さ具合がちょうどいい具合に調和されたようなギターソロを聴くと、玉置さんがおそらく触れてきた'70年代の"ヨーガク"のような響きをイメージさせられて、ある意味玉置さんのルーツなどが垣間見ることの出来るナンバーとも言えるかと思います。


また歌詞に関して、リリース時に玉置さんは「最初の1週間くらいはなんにも出来なかった。でも突然書き出したんだ、取り憑かれたように。ほとんど歌詞は自分に対して言っているんですよね。一年の半分は詩のことばかり考えていた。」と語っておられます。


そういった辺りがストレートに綴った内容の聴き手にダイレクトに伝わってくるメッセージに繋がっていくナンバーになったのかも知れませんね。


そういった辺りを念頭に入れてじっくりと向き合ってみたいナンバー。




245.△〔三角〕の月


どことなくクセのあるタイトル、ダルさやルーズさを全面にしたブルースを下地にしたフォークロックのようなアプローチが印象に残るブルージーなナンバー。


'90年代に世界的に大ヒットしたエリック・クラプトンさんの大ヒット作"アンプグラド"を参考にしたかのような雰囲気が印象的。


また聴いていてどことなく’70年代後半〜'80年代初頭の井上陽水さんの作品のようなややコッテリした夜をイメージさせられる音作りも印象に残るナンバー。


こういったルーズさを全面にしたブルース調のナンバーの場合は、どちらかというとあまり見過ごしがちになりそうな音の重なりの緻密さ的な部分も丁寧に対応されていて、作品のノリ、雰囲気的にはアルバム『安全地帯V』のようなアダルト的な印象が残るナンバーとも言えるかと思います。



https://open.spotify.com/track/3Ac1sTGlxaBnYnMmqKsJQv?si=NIUR8rznT-22opcS7pdcVg&dd=1

資料2.意外にもライブで演奏される機会が少なく、ライブバージョンは'07年ツアーを収録されたライブ・アルバムのみ、そろそろ久しぶりにライブで聴いてみたいナンバーの一つでもある。




246.太陽になる時が来たんだ


軽井沢時代の特徴でも放牧さと、'80年代の安全地帯の特徴でも音の緻密的要素を組み合わせたかのようななんともいえないムードが滲み出ているミディアムナンバー。


翌年'02年には安全地帯として再始動することになるのですが、もしかしたらこの時期に安全地帯としての作品を見据えながら制作されていたのかも知れませんね。


賛否両論ありそうなナンバーではありますが、きめ細かい音と染み込んだ音の組み合わせたようなギターの音など新しい試みも見受けられ、こういったサウンドが苦手だという方も再度視野を広げながら聴き直して聴いてみる価値のあるナンバーだと思います。



247.夢見る人


カントリーミュージックのような、どことなく放牧的でのんびりとした雰囲気のミディアムナンバー。ルーズさと緻密さがフィットしているブルージーなギターがたまらない。


アルバムレビューでも触れたさまざまな音を用いてのリズムが妙に曲のムードにフィットしていて、イメージ以上に緻密に構築されたナンバーと言える作品だと思います。


音を重ねながら徐々に盛り上げ、静から動の展開を見せるなど、新たな試みが見られる辺りは、前曲"太陽になる時が来たんだ"同様、翌年活動を再開する安全地帯を見据えながらの結果だったようにも感じられる。

聴いていてどことなく安全地帯の作品のような艶やかな部分、宅録的なリラックスさがところどころで垣間見ることができる辺りもこの曲の聴きどころだと思います。


こういった作品を製作する過程についてリリース時、玉置さんはインタビューで『ある程度形が出来たら"歌うか?"って。ここまではほかの人には何をやってるのかわからない。で歌うと、他の人にもだいたいわかってくるよね。そこから矢萩がギターを考え、さっちゃんがピアノを考え、その間に俺がドラムを入れ、ベースを弾く。」と詳細にコメントをされています。


そういった製作時の風景をイメージしながら聴いて頂きたいナンバーだと思います。



資料3.宅録的である意味実験的なレコーディングの様子はドキュメンタリー番組"情熱大陸"でも取り扱われました。




248.アンクルユニオンのテーマ


当時多頭飼いしていた猫の鳴き声、"アンクルユニオン"と無秩序にコーラスを入れて構築している小作品。


作品と言ってよいか迷うところですが、アルバムにあえて一呼吸を入れるという試みは、のちに安全地帯の'10年代の作品にてドラマ仕立ての作品を収録するなどに繋がっていった原点だったのではないかと感じさせれる、その一方で、この辺りから、いい意味で玉置さんの遊び心というか、他のアーティストとは一味違うアルバムに対する個性が全面に出てきたように思います。


こういった隠し技のようなトラックを収録される傾向として安全地帯の作品から携わってきたプロデューサー 星勝さんはリリース時を振り返りながら、『玉ちゃんていろんな色を楽しめる人なんですよ。だから一つのところに留まってないし、瞬時に開発する。今できなくてもすぐに自分のものにする。』と振り返りながら、『努力して積み上げるという事もあるかもしれないけど、彼はもう少し感覚的で、自分にイメージしたものをずっとやる事によって、努力したのと同じ状況になる。だからそう意味では現実的な人でもある。勿論簡単に才能のあるヤツって言ってしまえばそれまでだけど。』と振り返っておられます。


そのような製作時の流れも踏まえながら玉置さんのスタイルが確立していったドキュメント的トラックとして捉えて向き合っていただきたい。



249.スペード♠︎


鋭さと緻密さ、玉置さんらしい展開、音作りが印象に残るメロディがたまらないミディアムナンバー。


サビの部分での"ガマン ガマン"あたりの展開が、玉置さん得意の音の響きを重視させられる通称"デタラメ英語"から発展したような展開に思わずニンマリしてしまう。


まるで'80年代の安全地帯の作品のようなクセになるメロディーが印象に残る作品ですが、'80年代の安全地帯の作品と軽井沢時代の玉置さんの作品ではボーカルの聴こえ方が違うように感じさせられる。


'80年代の安全地帯の作品は大きな会場で聴いているようなスケールの大きさを感じさせられるのに対して、軽井沢時代の作品は凄く身近に、まるでそばで玉置さんが歌ってくれているような響きを感じる。


よく似た傾向のナンバーでもさまざまな表情、表現で曲を構築する辺りは玉置さんが改めて規格外のボーカリストだという事を気付かされるようにも思います。


またここから発展していき、翌年の安全地帯の再始動アルバム"安全地帯IX"収録の"野蛮人でいい"辺りにつながって行ったのではないかとイメージしながら聴いてみるのも良いかもと思います。



資料4.リリース毎に発表される告知ポスター。

楽曲同様にシンプルなデザインですが、アルバムの内容の奥深い点は見逃せないアルバムだとも思います。


次回は、アルバム『スペード♠︎』の後半6曲を振り返ってみたいと思います。


またお時間あれば読んでいただけると嬉しいです😃


よろしくお願いします🥺