104.To me


オリジナル・バージョンは安全地帯を含めて唯一の超大作アルバム『安全地帯V』のラストに収録されていたスケールの大きなバラードナンバー。


オリジナル・バージョンはストリングスが導入された事もあり、煌びやかな一面もあった楽曲ですが、リメイク・アルバム"ワインレッドの心"では、あえて煌びやかさを省き、シンプルな構成に徹した分、一層玉置さんのボーカルが全面に押し出されたような展開が印象的。改めて玉置さんは歌う事によって、曲のさまざまな姿を表現できるシンガーだと再確認できるという部分が出来る。そういう部分ではオープニングナンバーに抜擢されたのも何故か納得してしまいます。


ただそれまでオリジナル・バージョンをたっぷりと聴き込み、このアルバムでこのリメイク・バージョンを聴いた時はやや拍子抜けした感もありましたが、繰り返し聴き込んでいくうち徐々に曲の違った表情を感じられるようになり、違う魅力を感じられた感があります。


そういった辺りでは、繰り返し聴いて良さが響き渡る"スルメ"ナンバーなのかも知れませんね。


個人的には玉置さんのボーカル以外には、間奏での分厚く、そしてオーディエンスに寄り添ってくるような感のあるギターソロを聴いて、曲の違う一面を感じられたような気がします。


そういう辺りもふまえながら聴いて頂きたいナンバー。



資料1."To me"はオリジナル・バージョンよりテンポをややゆったりとしながら丁寧に歌う辺りが印象に残りました。




15.ワインレッドの心


オリジナル・バージョンは安全地帯としてキャリア初のオリコンチャート1位、'84年年間チャート2位を記録した不滅の大ヒットを記録した歌謡曲とAOR、童謡などさまざまな要素が絡み合うメロディーがたまらないミディアムナンバー。


オリジナル・バージョンはミディアム・ナンバーでありながら聴いていて"カチッと"した演奏からか、適度な緊張感が漂うナンバーだったのに対して、リメイク・バージョンは少しゆったりとリラックスした空気感が印象に残る仕上がりになっている。


その中でも印象に残ったのは、オリジナル・バージョンではオープニング、間奏とある意味"トドメの一発"的なインパクトのあるギターソロが、リメイク・バージョンではジャズバラードのようなジワジワと侵食してくるような懐の広さを体感できるフレーズに変更されている点。


まるで井上陽水さんのライブ・アルバム『クラムチャウダー』に収録されている"ワインレッドの心"のようなアダルトな響きがたまらない。このリメイクアルバムリリースの前年に他界したギタリスト 大村憲司さんが陽水さんのライブ・アルバム『クラムチャウダー』で聴かせてくれたギターサウンドのような、コクのある音色に仕上げられた"ワインレッドの心"をたっぷりと聴き込んでいただきたい。



61.Friend



オリジナル・バージョンは'86年10月リリースされオリコンチャート7位を記録するヒット、またそれ以降アジアの広い地域でカバーされるなど令和になった現在も聴き続けられスタンダード・ナンバーにもなっている安全地帯らしいスケールの大きさがたまらないバラードナンバー。


今作のリメイク・バージョンでは、オリジナル・バージョンにあったピアノのイントロが割愛され、いきなり玉置さんの"さよならだけ〜"からとややトーンを落としたボーカルの出だしにドキドキさせられる。オリジナル・バージョンにはないドラマチックなスタートがたまらない。


また今回のリメイク・バージョンならではのほぼ安藤さと子さんのピアノのみのシンプルな編成の為か、玉置さんのルーツの一つでもある童謡・唱歌のような音作りが構築されていて、玉置さんのボーカルをより味わい深く感じられ、聴き込みたくなるような展開になっていると感じます。


こういった辺りが、後に韓国や香港のシンガーなど幅広い地域で継承されていった要因の一つではないかと感じながら聴き込んでいただきたいナンバーです。



資料2.アルバムブックレットより。シンプルな表情のフォットが多いのもこの時期ならではの特徴だと思います。



59.夏の終りのハーモニー


オリジナル・バージョンは’86年9月リリース。

かって安全地帯がバックバンドを務めたいう経路から実現した井上陽水さんとのジョイント・コンサート"スターダスト・ランデヴー"で披露され好評を博した事もあってかオリコンチャート6位を記録した井上陽水さん、安全地帯に両者にとって代表曲の一つでもある、後のMISIAさんの楽曲のような煌びやかさ、ゴージャスが漂うスケールの大きなバラード・ナンバー。


リメイク・バージョンは"Friend"同様、安藤さと子さんのピアノが主体のシンプルな編成。


聴いて’15年以降、ビルボード・クラシックスと並行する形で、夏〜秋にかけて開催され好評を博している"故郷楽団"ツアーの原点になったのではと思える音作りの影響からか、あまり時の経過を感じさせない展開が印象的。


聴いていてこれでもかというぐらい丁寧に歌う玉置さんの息づかいまで聞こえてらきそうなボーカルにドキドキされた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?


聴いてみて改めて、玉置さんのあらゆる環境でもグレードの高いボーカルを発揮出来るという事を再確認出来るナンバーの一つと感じました。



42.夢のつづき


オリジナル・バージョンはセールス面、アルバムの評価・人気ともっとも高い名盤『安全地帯 IV』のオープニングを飾ったストリングスとの融合が心地よいミディアムナンバー。



リメイク・バージョンはどちらというとオリジナル・バージョンと違うアプローチが多い中で、玉置さんのボーカル、田中さんのスネアドラムを全面にして"アコースティック・サウンド"を構築しているが、基本的にはオリジナル・バージョンに近い音作りになっているのが印象的。この曲に関してはいかに"夢のつづき"は"夢のつづき"でどうあり続けるかという確認作業をしているような展開だが、何故か妙に新鮮。


こうして改めて"夢のつづき"を聴いてみると、不思議と日本の音楽シーンに名を刻む名盤には、シングルカットをされる事もないのに、知名度の高いナンバーという楽曲が収録されていて、そういった楽曲がアルバムの価値・評価を向上させるという事が多々あるという"名盤の法則"があるのですが、この"夢のつづき"もアルバム『安全地帯 IV』を語る上で外すことの出来ない重要なナンバーだったという事を改めて気づかされました。



細かい部分では、オープニングのストリングスがオリジナル・バージョンのようなゴージャス感を抑えながら、いかにダイナミック感を出すかをイメージしたような'00年代の日本映画のオープニングに登場してきそうな展開が、曲がアップデートして、時代と共に進化していると感じさせられる。


楽曲"夢のつづき"として変化しない一面、変化した一面の両面を見据えながら向き合って頂きたいナンバー。



資料3.アルバムの裏ジャケットより。自然に囲まれた中で、玉置さんはどんな"夢のつづき"をイメージしてたかと想像しながらアルバムを楽しむのアリかと思います。



35.瞳を閉じて


オリジナル・バージョンは’84年12月にリリースされたアルバム『安全地帯III〜抱きしめたい』のラストを飾ったどこか切なさの中に愛しさを感じるメロディーが印象的なバラードナンバー。


ところどころで、玉置さんのルーツの一つでもある童謡のような忘却的なメロディーが見え隠れする辺りも印象的なナンバーと言えるかと思います。


オリジナル・バージョンと比較して、生ギターメインのアコースティック・サウンドで再編された"瞳を閉じて"を聴いてみると、いい意味での装飾された部分が削り落とした事によって、曲の本来持つ童謡のような忘却的なメロディーがよりクローズアップされたように感じられ、また違った楽曲の表情に驚いた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?


オリジナル・バージョンよりややテンポを落とし丁寧に歌いこなす玉置さんを感じやすくしている点も見逃せないポイントの一つだと感じる。


是非ともオリジナル・バージョンと比較しながらじっくりと聴いて頂きたいナンバー。



26.恋の予感


オリジナル・バージョンは'84年10月リリース、安全地帯として7枚目のシングルナンバーとしてオリコンチャート3位を記録した大ヒットナンバー。"ワインレッドの心"と同様にバンドの運命を決定づけたキャリアを代表するスケールの大きなバラード。ロマンティックな井上陽水さんの歌詞ともに忘れられないナンバーの一つと言っても過言ではないでしょう。


リメイク・バージョンは、あえて曲に"隙間"を構築するかのようにゆっくりとした田中さんのスネア・ドラムと丁寧に歌いこなす玉置さんのボーカルを全面にした音作りは"夢のつづき"と同様だが、この"恋の予感"はあえてオリジナル・バージョンにある曲の緊張感を取り除く事によって全く違うアプローチのナンバーに仕上げながら、玉置さんのボーカルという"軸"はブレずに展開している点が最大の聴きどころだと思います。


ところどころで控え目ながら"ここ"というポイントで存在感を発揮しているカルロス菅野さんのパーカションも見逃せないポイントの一つ。


そういった辺りもじっくりと感じながら聴き込みたいナンバー。


次回は、アルバム『ワインレッドの心』の後半6曲をオリジナル・バージョンと違う点など交えながら振り返ってみたいと思います。


また読んでいただけると嬉しいです😃


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