長崎に再び居住するようになって一年が過ぎた。

帰ってきた当初は通りを歩く人の少なさ、特に子供の少なさにどこか侘しい気持ちを抱いたが、それも徐々に慣れていった。

 

逆に言えば、人が少ないがゆえに混雑しているといってもたかが知れている。人ごみの中で移動しなければならないストレスを感じないのはとても心地よいものだ。

長崎住吉商店街

 

長崎住吉商店街

長崎住吉商店街

 

2月9日から25日までの間、ランタンフェスティバルが開催された。

1987年から始まった比較的新しい祭りである。

祭りのメインとなるのは清朝をイメージした皇帝パレードと航海の安全をつかさどる女神媽祖(まそ)行列だ。ほかには市内の各地で胡弓の演奏や、辰年にちなんだ龍踊(じゃおどり)などの演目が披露された。

 

私は媽祖行列を見学した。行列はただ歩く、もしくは御車にのって移動するだけではなく、眼鏡橋や浜町商店街、メイン会場などで従者たちによる剣舞が爆竹轟く中、演じられ、大変興味深く拝見した。

 

皇帝パレードは今年は特別版として皇帝・皇后役を福山雅治と仲里依紗が演じて街中をパレードした。ただパレードの観覧はあらかじめ設けられた観覧席のみで可能とし、沿道からの観覧は禁止ということだったので、見学はしなかった。

ランタンフェスティバル

長崎は16世紀後半にポルトガル人によってカトリック(キリシタン)の宣教地として開港したことによりその都市としての歴史が始まった。開港後、九州並びに全国各地から人が集まり、海外貿易を中心として徐々に都市機能が確立されていった。海外からはポルトガル、スペイン人が主だった移住者で、その植民地であった、マカオ、マニラからはその従者たちも住んでいた。海外貿易の中心的役割を担っていた倭寇たちも合法的な貿易の場を得るために移住してきたと考えられる。その一環として明朝チャイナの福建省から唐人たち(当時の中華の人々の日本での呼称)も長崎に移り住んでいくことになった。

ランタンフェスティバル

そのような歴史的背景の中、明から清の時代にかけて、ポルトガル領マカオとの南蛮貿易が始まり、スペイン領マニラとの貿易、スペイン衰退後の江戸時代からは、オランダ東インド会社との貿易、幕末においては上海を起点とした貿易へと推移していった。その中で、明朝、清朝との貿易は中国福建省を中心に行われていた。

 

媽祖とは道教の神様であり、航海の安全をつかさどっていると考えられている。唐船が長崎入港時に船内にあった媽祖像は長崎市内の唐寺興福寺にある媽祖堂へ安置された。ランタンフェスティバルの媽祖行列は江戸時代まで行われていた、その媽祖行列を復活したものであり、その歴史的意味は大きい。

ランタンフェスティバル

翻って皇帝パレードには意味があるのだろうか?歴史上、チャイナの皇帝は一度も長崎どころか、日本を訪れていない。清朝の皇帝を模した皇帝パレードには歴史的にも文化的にも根拠がないものと考える。目的として考えられるのは観光の目玉商品と日中友好の証のみである。中国人観光客が大挙と訪問した平成時代であれば、当時は日本並びに欧米諸国も中国が戦略的パートナーであったので、意味があったといえないこともない。

らんた

 

令和の現在、このような意義を見出せないどころか、政治的に問題を起こしそうなイベントは、例えば長崎中華街の華人の子孫たちが自費を投じて行うのであれば問題ないが、税金も使われている市のイベントとしては不適切なイベントではないだろうか。

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日本とチャイナの長い歴史を考えると長崎でランタンフェスティバルを行うことは有意義ではある。日中関係が綻びかけているというよりは、中国の利己的な野望に対して西側諸国が懸念を示している中、民間レベルにおいて日中友好を存続させるためにも、政治的に問題視されかねない、皇帝パレードは来年からは中止すべきではないだろうか。

ら

その代わりに中国各地や、台湾などで行われている天灯(ランタンを夜空に放つイベント)を目玉イベントの一つとしてフェスティバルの最終日に行ってはどうだろうか?

長崎港

長崎港

 

インスタ映えするイベントとして多くの観光客が訪れたいイベントになるのではないか?長崎港の広場でMISIAに世界平和の唄を歌ってもらい、そのあと点灯した灯籠を夜空に放てばとても印象に残るイベントになるのではないか?

 

興福寺 媽祖廟

興福寺媽祖廟

 

桃の節句の間、唐寺興福寺にて雛人形の展示が行われた。

全国から寄せられた雛人形たちが凛々しい姿を披露していた。

最近のカワイイ人形たちと違って可愛さと不気味さを併せ持った趣のある顔立ちは印象深い。

興福寺 雛人形

 

 

興福寺 雛人形

 

興福寺 雛人形

興福寺 雛人形

興福寺

 

3月の上旬だというのに中島川沿いにある伊勢宮では、早くも桜が咲いていた。

長崎では一足早く春が訪れているようだ。

ただし、ほかの桜の木はまだまだ蕾がほんの僅か顔をのぞかせている状況なので、本格的な花見は3月下旬となりそうだ。

伊勢宮 桜

 

伊勢宮 桜

 

伊勢宮 桜

伊勢宮の桜

 

今のところ今年は花粉症の症状がそれほどひどくない。このままこの状態が続くのであれば、今年の春は心から楽しめそうだ。