太陽から放出された荷電粒子(イオンや電子)、いわゆるプラズマの流れは太陽風と呼ばれ、太陽圏内に遍く満ちわたっている。地球の磁気圏は太陽風に押し流されて地球の夜側へとしっぽが伸びたような形のプラズマシートを形成する。太陽風のプラズマはこのプラズマシートへ蓄積されていく。

 

蓄積されたプラズマが何らかの条件下において磁力線に沿って加速され地球の大気圏へと降下することがある。降下するプラズマは周囲の大気中の粒子と衝突し、励起させる。励起状態になった粒子が元の状態に戻る時に発光現象が起こる。この発光現象がオーロラの正体である。

 

オーロラは地上100kmから500kmの間の電離層で見られる。100km付近では窒素粒子が反応した青色、250km以上では酸素粒子が反応した赤色、その間では緑色の光の輝きだ。

オーロラブレークアップ

 

オーロラがよく見える場所は地磁気緯度65から70度の同心円状にあり、この帯をオーロラ帯とよぶ。オーロラベルトより低緯度になるとオーロラの出現率は低くなり、たとえばニューヨークやボストンでは年に10回程度の出現率となる。

 

磁北極は地図上の北極点とは異なり、グリーンランドの西側、アメリカ大陸の東側の北極海に位置している。そのため、日本では北海道の一部でしかオーロラを見ることができない。

 

しかし磁極は常に変動しているため、低緯度オーロラは関西や関東でも過去においては目撃されている。例えば飛鳥時代の推古天皇の時代(620年)および天武天皇の時代(682年)にオーロラ(赤気)が顕れたという記述が日本書紀に見られる。また藤原定家の明月記において1204年に赤気が出現したと記述されており、それ以外には1770年9月17日には京や江戸で北の方の空にオーロラが出現したという多くの記録が残されている。

現在シミュレーションや衛星観測などによりオーロラの中で電流が流れていることが確認されており、最大時には100億キロワットの電力を生み出している。電気が流れるとそこに磁場が発生し、もともとある地球の磁場を乱すことになる。これが磁気嵐と呼ばれるものだ。

 

今月8日から続いている最大級規模の太陽フレアの影響で地球上に磁気嵐が発生している。この磁気嵐の影響による通信障害等が懸念されているということだ。11年周期による太陽活動のピークは25年まで続くと考えられていると言う。

こういった太陽フレアの出現は負の側面はあるものの世界各地で低緯度のオーロラの観測を齎した。妖しく仄かに顕れた、その天空の光の演舞は、多くの人々の心に鮮やかな衝撃を刻み込んだ。

 

日本では北海道では肉眼で確認されたという。

 

私の義兄はアメリカ、ワシントン州のポートアンジェルスに居住しているのだが、そこでもオーロラ、Northern Lightsが肉眼で見られたとのことで、とても興奮していた。

 

上記写真はアメリカワシントン州ポートアンジェルスにて義兄による撮影

 

藤原定家は平安末から鎌倉時代にかけての公卿で新古今和歌集や新勅撰和歌集の編纂者として歴史に名を残しているが、好奇心旺盛の人であったらしく、日記「明月記」には前述の赤気の出現だけでなく、奇星についての記述も多々ある。特に客星に興味を持ったらしく陰陽師安倍泰俊に問い合わせして過去に見られた客星の例を明月記に残した。

 

その中で現在スーパーノヴァ=超新星として知られている、SN1006やSN1056(かに星雲)の超新星爆発の記述がみられる。SN1006の超新星爆発は1006年、日本では平安時代寛弘3年であり、藤原道長の時代である。ちょうど大河ドラマ「光る君へ」が今後描いていく時代であり藤原道長や紫式部、清少納言が活躍していた時代だ。

 

現代でこそ超新星爆発の原理がおおよそ理解できているが、そのような物理学的知識がなかった時代に人々は天空に現れた奇星にどのような思いを抱いたのであろうか。興味は尽きない。

 

 

超新星爆発で思い出すのが2019年末から2020年に騒がれたペテルギウスの減光に伴う超新星爆発の予測である。当時は今にも爆発が起こるという期待が高まったが、現在では超新星爆発は10万年以内とのことだ。生きている間に見られたらいいのだが......

 

宇宙関係で期待が持てそうなのがNASAが計画しているアルテミス計画だ。計画ではアルテミス3号は2026年9月以降、今世紀に入って初めての人類による月面探査を行うという。

 

何かと目の前の些細な出来事をことさら大問題化して侵略やテロを行ったり、一方的な情報だけを取り上げて他者(国や団体)の批判を繰り返している私たちの社会であるが、AI社会に突入した現在、私たちは細かいことよりは全体的なことに目を向けることに、より時間をさけることができるので、宇宙規模の視点から太陽系第三惑星の住人として、賢いヒト属(ホモサピエンス)の社会を発展させていくにはどうすべきか考える時ではないか。

 

その第一歩として夜空を見上げてみることはいかがであろうか?

 

 

このブログを書くにあたって以下を参照しました

上出洋介著 オーロラ 宇宙の渚をさぐる 角川選書

稲村榮一著 定家「明月記」の物語 ミネルヴァ書房

NASA HP