最近見たドラマの感想を書きたくなった。

 

まずはNetflixオリジナル「The Crown」について。

2016年より配信開始されたエリザベス2世女王の半生を描いたドラマでシーズン6が昨年末配信され、8年に渡ったシリーズが完結した。ほぼ一話完結で、1947年の彼女の結婚式から物語は始まり、時折彼女の少女時代のエピソードも挿入しながら2005年チャールズ皇太子の再婚を以てシーズンは終了した。

 

興味深かったのはウィンストン・チャーチル、マーガレット・サッチャーやトニー・ブレアなどのイギリス首相と女王をはじめとする王室との関係が丁寧に描かれていたことだ。歴史的な背景を踏まえた君主としての苦悩、それは個人としてのエリザベス・アレクサンドラ・メアリーの存在が封印され、エリザベス女王として国民とともにありながら絶えず孤独な決断をしなければならなかったもので、それゆえに見るものに深い感動を覚えさせた。

 

彼女の崩御の際は、このドラマの視聴者は、他国の君主であるにもかかわらず、深い哀悼の念を抱いた人も多かったのではないだろうか。

 

多くの予算が費やされたドラマであるが、物語も映像もそれに見合った素晴らしいものだった。一つだけ難点を揚げれば、シーズン5と6は、ダイアナ妃とチャールズ皇太子の物語が中心であり、女王が二人の離婚とそれ以降についてどのようにかかわってきたのかの深堀がされていなかったのが残念だった。まあ制作人がイギリス王室を忖度したことは致し方ないことではあるが。

 

私の好きだったエピソードはシーズン1,2で描かれたマーガレット王女と侍従武官ピーター・タウンゼントとの悲恋の物語とその後のシーズン5での40年ぶりの二人の再開だ。老いたタウンゼントを演じたボンド俳優ティモシー・ダルトンが渋くてよかった。

 

私の評価は4.8、満足度は95.

 

クラウンが終わって喪失感が年末訪れた。その喪失感から立ち直ることができたのはアメリカのStarzで放送された「アウトランダー」だ。私はNetflixの配信で見ている。

 

物語の内容は第二次世界大戦中に従軍看護婦として従事したイギリス人女性クレア・ビーチャムが戦後夫と共にスコットランドのインヴァネスを訪問する。そこである夜ストーンヘンジの周りでかがり火の中、怪しげな踊りをしている集団をクレアは目撃する。翌日同じ場所へ一人訪れたクレアは昨夜の痕跡を探しながらストーンヘンジの一つに触れた。その瞬間彼女の意識は遠くなり、次に彼女が目覚めたときには当たりの様子が若干違っていた。不思議に思い、車を駐車した場所まで戻るのだが、車がなくなっていた。道も舗装されておらず、途方に暮れた彼女が歩いていると突然赤い軍服を着て銃を持った騎兵隊に襲われる。彼女は道から外れて崖の下に逃げるのだが、一人の軍人が彼女を執拗に追ってきた。その軍人はなんと彼女の夫、フランクとそっくりだった。

 

男は銃を向けながら彼女がジャコバイトの反乱軍の関係者かと尋ねるが、気が動転してしまった彼女はうまく返答ができない。その彼女の窮地を救ったのがみすぼらしい制服のスコットランド軍の男だった。彼女を救い出した男は彼が居住している城へと彼女を連行する。その城はクレアが昨日夫フランクと共に訪れた古城だった。もっとも昨日は廃墟でしかなかった城が、今彼女の目の前で燦然とそびえたっていた。彼女は1747年のジャコバイトの反乱にくしくも紛れ込んだのである。

 

このようにしてアウトランダーは始まった。タイムリープのファンタジーだ。ただ単なるファンタジーでないところは、1945年の時代といい、1747年の時代といい、時代の描写が恐ろしく忠実なのだ。夜の場面などあくまでもろうそくの明かりだけで暮らしていた当時の様子を再現して、どこまでも薄暗く撮っている。言葉も当時スコットランドのハイランド地方で使われていたゲール語が頻繁に飛び交う。風景描写だけでなく、人々の服装や生活様式なども忠実だ。例えば当時ハイランドでは手づかみで食べていたとか。

 

物語のメインは18世紀に迷い込んだ一人の女性が、当時の戦争や政争に巻き込まれ、如何にして敗北が決まっているジャコバイトの反乱を未然に阻止するかといったものだが、それだけではない。

 

まるでハーレクインロマンスのように、女性が嵌るロマンスシーンも満載だ。事実、アウトランダーに最初に嵌ったのは私の連れ合いだった。アウトランダーを探し出したのは私だった。しかしエピソード1の展開にしんどくなった私だったが連れにつられて見ているうちに嵌ってしまった。

 

このお話で大変面白く感じたことは、原作者がアメリカ、アリゾナ州スコッツデール在住のアメリカ人女性だということだ。スコッツデールといえば西部劇に出てくるような巨大なサボテンやラトルスネーク(ガラガラヘビ)の世界だ。近隣には巨大な赤岩壁のセドナがある。アウトランダーの世界からは相当かけ離れた世界なのだが、そこで生まれ育った女性が中世ヨーロッパの物語を描いたのだ。大変面白い。もっとも日本でも古くはヴェルサイユのバラとか三国志があるし、昨今ではキングダムがあるが…

 

 

スコッツデール

 

 

 

近郊は西部劇の世界

 

現在シーズン2の途中までの視聴だが、とにかく面白い。私の評価は、4.0、満足度90といったところか。現在はシーズン7の前半まで、今年から来年には最終エピソードが配信される予定。全エピソード視聴した後、再度評価しなおしたい。今のところイチオシのドラマだ。

 

 

セドナ

 

日本のドラマも少し。

まずは「ブラッシュアップライフ」。一年前の作品を何を今さらといわれるかもしれないが、私にとっては年末から年始にかけて視聴し大変面白い作品だったので。長崎に移ってから私は地上波というものを見ていない。アンテナもつながっていない。ゆえに現在のドラマはTverで見るか、後でNetflixで見るかとなってくる。2023年のドラマでベスト3に入っていたので視聴したのだが、大変面白かった。多くの人が既にさまざまな賛同の主張をしていると思われる、おそらくそれ以上に付け加えることはないであろうから、詳細は省く。私の評価は4.5。満足度も高くて95点。

 

高い評価はバカリズムの脚本と主演の安藤サクラだ。この役者は今一番輝いている役者ではないだろうか。彼女の作品で私のお勧めは映画「ある男」。映画自体はいまいちだったが、彼女の演技は圧巻だった。

 

 

次はVIVANT.これも年末年始にNetflixで視聴。巷では高評価の作品だし、視聴していて大変面白かったが、私の評価自体は平凡だ。評価3.5、満足度75点。私にとってマイナスポイントになったのは役所広司演じたテロリスト、TENTのリーダーがいい人過ぎたことと、堺雅人演じた別班のエージェントの甘ちゃんぶりだ。実際の国際社会で起きている現実を踏まえるとお花畑のファンタジーでしかなかったことが残念だった。

 

なぜそうなったのかはやはりTBSの日曜劇場の枠であったからだろう。いわば地上波ドラマのギリギリの限界を狙って日本のドラマとしては大変高水準で面白かったのだが、国際水準からみるとディズニー映画のファンタジーレベルだったという感想だ。

 

 

最新作を少し。

同じTBS日曜劇場枠で「さよならマエストロ」。西島秀俊が演じる主人公夏目俊平はウィーン・フィル?の指揮者を任せられた新進気鋭の音楽家だったが、娘(芦田愛奈)の事故による挫折に責任を感じて指揮者の職を辞した。五年後、静岡県晴見市に住んでいる別居中の妻から、娘と息子の面倒を彼女がフランスへ出張中に見るようにウィーンから帰国しろという恫喝を受けて仕方なく帰国し、今まで没交渉だった、娘と息子と向き合うこととなる。その彼を待ち受けていたのが晴見市民オーケストラだった。市では来年度のオーケストラへの助成金を廃止し、市民ホールも外資へ売却しようという計画が進んでいた。その計画を阻止するために世界的に著名な指揮者夏目の名前を借りようという目論見だ。帰国した夏目を待っていたのはそれ以外にも塩対応する娘の存在だ。物語は夏目と娘の和解、晴見市民オーケストラの存続をかけた戦いといった方向に向かうのであろう。

第1話が済んだばかりだが、私の期待も込めて、評価は4.0。満足度(期待度)90.私は音楽やアートを題材にしたドラマが好きだ。個人的な妄想を言えば、舞台は静岡県。あくまでもうわさレベルだが、静岡県といえば隣国のためにリニアモーターカーの着工を遅らせているといった知事が行政を担っている県だ。その県の市民ホールの外資への売却とくれば、 国際的陰謀のにおいがしてくる。静岡県知事の意向を受けた晴見市長が隣国への市民ホールの売却を進めており、夏目をはじめとする市民オーケストラがその国際事件に巻き込まれるといった話の展開になれば面白いのだが。まあ、TBSの日曜ドラマでは望むべくもないが、妄想ということで。

 

 

最後は皆様のNHK,大河ドラマ「光る君へ」。紫式部と藤原道長のドラマだ。この時代の知識に疎いので個人的には大変興味を持って視聴し続けるつもりだ。1話、2話と放映された。和歌の代筆の場面とか大変面白かった。まだ物語は始まったばかりなので今後の展開に期待する以外ない。それでも気になったのは三郎(道長)の兄、道兼がまひろ(式部)の母、ちやはを刺し殺す場面。平安時代は穢れ、特に血を嫌う時代。公卿の子が直接殺害することは考えられない。この場面は後に続く布石となるのだろうが、歴史を鑑みると逸脱しているように感じた。

 

後は、三郎とまひろが初めて出会う場面、物語の設定ではおそらく鴨川なのだろうが、どうしても水量の豊富さといい鴨川に見えなかったこと。さらに言えばセリフに平安時代の要素が全くなく、普通の時代劇ぽかったので、いつの時代の、どの場所でのはなしか言葉遣いと映像からはわからないところも気になった。

 

そして演出上のことだが、夜の場面が明るすぎたことは、どうしても違和感が残った。平安時代灯明しかなかったので夜の場面はもっと暗いはずだ。暗すぎると視聴者から苦情が出るので明るくしていることは理解できるが、陰陽師安倍晴明や百鬼夜行が跋扈していた平安時代、また同時代には源頼光が大江山の酒呑童子を退治している。いわば漆黒の闇こそ平安時代の特徴といえる。そういった演出が今後も望めそうにないことは残念だ。

 

第2話までの私の評価は3.8、満足度(期待度)80.

 

 

先述した「アウトランダー」がいい例だが、世界のエンタメ界はより作品の質を高めた濃密な作品が高い評価を得ている。視聴率を気にしないでいいNHKは、世界の視聴者の度肝を抜くような衝撃的で濃い作品を制作してほしいと思う。

 

思ったよりも長くなってしまった。ここまで読んでいただいた皆様大変ありがとうございました。