昔話「かさこじぞう」 のお話をしたときに、「つぎはぎ」という言葉について、豊かな時代の今の子どもたちは、よく知らないんだろうなあと思い、続けてそのお 話 をお伝えしたことがあります。
5年生になると、家庭科の授業が始まります。
「快適な衣服と住まい」という学習内容の中に、「日常着の手入れが必要であることが分かり、ボタン付けや洗濯ができること。」、「手縫いや、ミシンを用いた直線縫いにより目的に応じた縫い方を考えて製作し、活用できること。」というものがあります。
ミシンに入る前に、運針用布を用い、手縫いでまっすぐに縫っていく練習や、ボタンを付ける練習をします。
初心者マークの子どもたちは、これがなかなかたいへんです。
まずは、糸が通せません。「糸通し」なる道具を使う子、多数。
次、「玉結び」ができません。通した糸の端を持って指先でくるり、とやる、あれです。
ようやく、かなり大きな針目で縫い進め、縫い終えるところまで来て、「玉どめ」が、成功しません。
布から浮き上がった地点に、玉が浮いています。人呼んで「空中玉どめ」!
以前勤務していた学校では、「おばあちゃん応援部隊」が組織されていました。
この授業に入るとき、声をかけると、腕に覚えのおばあちゃんたちが、グループに一人ほどの割合で、応援に来て下さいます。
気ながーに、ていねーいに、教えてくれるんです。
皆さん、手提げ袋の中から眼鏡ケースをとりだし、一斉に眼鏡をかけると、はい、スタート。
なかなか心温まる風景では、ありました。
数年前、6年生を担任していたときのことです。
ある男の子のお母様が学校に来られ、(ほとんど私立の中学校がないので、99%が公立の学校に進学する地方ですが)どうしてもお子さんを、(旧国立大の)附属中学に進学させたい。試験科目の中に家庭科もある。他の教科については心配していないが(確かに学力の高いお子さんでしたが)、どうも縫い物がだめだったので、彼のおばあちゃんが特訓してきた。と、おっしゃるのです。
なんでも、2学期の最初に学校に持ってきた2枚の雑巾は、彼の製作とか。
珍しく手縫いの雑巾だな、とは思っていましたが、彼の作品だったとは!
後日、彼に「あの雑巾、K君が縫ったんですって?!上手だから、おばあちゃんの作品かと思った。」と言うと、
「いえいえ、ぼくです。やってみましょうか。」と言うやいなや、ハリーポッター似の彼は、持っていたタオルをささっとたたみ、素早く針に糸を通し、あっという間に縫い上げたのでした。
「制限時間内にできたでしょ。ボタン付けもオッケーですよ。」と、自信ありげ。
彼のお母さんは、こうもおっしゃっていました。
「ゆくゆく大学に入ったら、親元を離れると思います。その時に、男の子でもボタンの一つくらい自分で付けられなくてはいけないと思うし、自分の着る物にアイロンくらいかけられなくては。そんなことも考えて、教えてきたのです。」
彼が「つぎをあてる」経験は一生しないと思いますが、ボタン付けやちょっとしたほころび直しのできる男の子って、なかなかかっこ良くはないですか?