幼児教育における「リトミック」 | 風の子ぷてぃぱ ~風の子ジャックリトミック教室 講師の日記~

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 リトミックを考案したダルクローズは、学生たちの多くが、理論やテクニックに偏り、心の耳で聴かず、リズム感に乏しいことを嘆きました。

彼が受け持った生徒の中に、与えられたテンポに合わせたり、同じ速さにテンポを保つことが出来ない少年がいました。ある日、その少年が彼の目の前を歩いている姿を見たとき、彼は、人間のリズミカルな歩行の流れは、リズムの中にある拍の流れと同じであることに気がつき、本来自分自身が体に持っているリズムの感覚を自分自身で意識することによって、この少年のリズム感覚の弱点を解決出来るのではないかと考えました。

こうして、ダルクローズは、全身全霊で音楽を感じ、表現できるように、「聴くこと」を重視した独自の「ソルフェージュ」と、身体を楽器のようにして、体内に潜在するリズムを引き出し発展させる「リトミック」を考え出しました。
そして、同じ過ちを繰り返すことがないよう、まず最初に手がけたのが「幼児のためのリトミック」でした。

リトミックレッスンは、音楽に合わせて、日常の生活の中で経験する動き(歩く、揺れる、まわる等)を「即時反応」を伴いながら行っていきます。
レッスンには、ダルクローズサブジェクトと呼ばれる音楽を理解するための諸要素が組み込まれており、課題の1つひとつは実際に身体を動かしながら習得していきます。
子供たちは自分の考えやイメージを身体で表現することに夢中になりながら、知らず知らずのうちに音楽の基礎能力を習得していきます。
「即時反応」は、時間の経過の中で表現されていく「音楽」に欠かせないスキルであると同時に、ダルクローズが最も重要と考えた「聴く力」を養うために行います。
「軍隊式」と勘違いされることがあるのですが、全くそういった趣旨ではありません。

ダルクローズは、指導者は、生徒たちの現況に合わせたレッスンを組むようにと述べています。ですので、出来合いのプログラムを出来合いの音楽で形どおりに進めるのではなく、講師は生徒の表情や反応を見ながら、即興演奏により注意力を喚起し、イメージを膨らませるための話や好奇心を刺激する教材などを用いて、生徒が自ら興味関心を持つように働きかけていきます。
最初のうちは「今日はリトミックはやりたくない」と言う子供がいたとしても、無理やり押しつけることなく、回を重ねるごとにリトミックの楽しさを理解し、心待ちにしてくれるようになります。

「窓ぎわのトットちゃん」の校長先生で知られる小林宗作氏は、日本で幼児教育に初めてリトミックを取り入れ、著書「幼な児の為のリズムと教育」の中で「リトミックが音楽教育ばかりでなく教育のあらゆる分野に有意義な展開をすることが解っている」と述べています。
幼児教育における「リトミック」は、単に音楽の基礎能力の習得のみでなく、心と身体の合一をはかり、子供たちの「よく見て聴いて→感じ取り→それを豊かに表現出来る力」を育みます。

個人的には、これからの時代を生きる子供たちは、統率するための都合の良い優等生になる(言われたことをロボットのようにこなすこと)より、人として生きていく力を育むために「アンテナを張り感じ取る力」「自ら考え判断する力」「自分の考えや思いが伝わるように表現する力」を養っていくことの方が大切であると考えています。


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