毎日新聞2018年3月6日 07時00分(最終更新 3月6日 07時00分)

自民党憲法改正推進本部(細田博之本部長)は、大規模災害などに対応する緊急事態条項の条文案に、政府への権限集中や、国民の私権制限の規定を盛り込む方針を固めた。これまでは国会議員任期の特例的な延長に絞っていたが、党内に「(私権制限を明記した)2012年の党改憲草案に沿うべきだ」と異論が強く、方針を転換した。7日の全体会合で条文案を示し、意見集約を目指す。

 

同本部は5日の非公式幹部会合で、災害復旧などの際に土地を強制収用したり国民の移動などの私権を制限したりする「国家緊急権」について協議。幹部の一人は「南海トラフ巨大地震などで国会が機能しない時、国家緊急権の規定はあってもいい」と容認する考えを示した。

 

 同本部による昨年末の論点整理は▽国会議員の任期延長▽任期延長に加えて国家緊急権を規定--の2案を併記した。ただ執行部は「人権制限につながる」との批判が強いことも踏まえ、任期延長に絞る方向だった。

 

 しかし今年1月の全体会合で、石破茂元幹事長ら保守系議員が12年草案に盛り込んだ国家緊急権の明記を要求。「任期延長だけでは国会議員の身分保障だと思われかねない」との声も出て、方針転換を余儀なくされた。

 

 緊急事態に内乱時も含めるかなどの「範囲」は詰め切れておらず、7日に複数の条文案を示して議論する見通しだ。

 

 一方、公明党は私権制限について「憲法上に規定する必要性は感じない」(北側一雄副代表)と否定的。改憲に前向きな日本維新の会も慎重で、改憲の国会発議に向けた他党との協議が難航する可能性が高まる。【小田中大、田中裕之】

 

見出しで少し期待したけれど、ずいぶん控えめですな。「手ぬるい」印象です。安全保障や日本の独立については、何をするにしても「手ぬるい」のが今の政権の苛立たつところです。

 

大規模災害および国家安全保障を理由とした私権の制約は存在して然るべしです。

 

自由主義世界は、基本的に次の近代私法の三大原則が通用する国々で形成されています。それは、次の三つの原則です。

 

・権利能力平等の原則

・私的所有権絶対の原則

・私的自治の原則(契約自由の原則)

 

そして、自由世界の国家対国家は、「相互主義」と言って、原則相手国の自国に対する待遇と同様の待遇を相手国に対して付与」するのがコンセンサスです。例えば日本の企業がイギリスに子会社を置いてビジネスをする場合には、イギリスの他の企業と同等の扱いを受ける。逆もまた同じ。これが「自由貿易」の基盤です。

 

逆に言えば、自国民の私権を制限しなければ、他国民の権利を制限することができない建て付けになっています。私権の自由=多くの場合「所有」の自由は、自由世界では国を超えて互いに認めなければなりません。

 

しかし、「相互主義」はあくまでも建前です。完全な相互主義は実現することはありません。そんなことになれば、「国」というまとまりの意味合いが失われてしまい、それこそNWOの世界になります。

 

世界の多くの国々が、「国家」と「国土」を守る規制を持っています。

 

例えば、米国にはエクソン・フロリオ条項というのがあって、米国の安全保障を脅かすという政府の判断があれば、どのような業種・企業でも外資による買収を止めることができる。土地の取得も同様です。

 

以前も書きましたが英国の土地は等しく英国王室の所有であり、国民には利用権しかありません。ドイツもワイマール憲法下の国民に対する土地の制約があります。フランスは国防上および自然資源、特にワインの産地については強い規制を敷いています。自由貿易圏であるEUですら、参加国の国家を構成する核心的な財産については規制を持っています。

 

これらの国々では、国民もその規制を甘受すると同時に、規制の甘受が自国や国土の外国による「所有の自由」を制限することを知っています。自由世界の国は、それぞれ核心的な利益を守りながら、自由にして良い部分を限定しながら解放しているだけです。もっと強烈に言えば、より強く自由が保障される国に対して有利となる隠れた不均衡条約であり、ある意味、外国人の権利を制限する「賎外主義(せんがいしゅぎ)」を巧妙に隠す隠れ蓑になっています。

 

さて、日本です。日本にも、外為法と各種の個別業法によって外資の規制はありますが、条約による優先と甘い運用、そしてグローバル資本の強欲をうけたレントシーカーと緊縮財政論者の要求による規制緩和によって、惨憺たる状況になっています。「なんでも自由化、なんでも規制緩和」ですから。憲法9条が国を守って平和を実現しているという認識ときわめて似たような文脈で、自由主義や自由貿易は最高の価値だと思い込んでいる人たちがいます。

 

私権を制限するのは、社会主義・共産主義で、「社会主義化する」という批判はもっともですが、むしろ日頃は社会主義的な意見を言う人々が、国家の規制に対して視野狭窄を起こし、ナイーブすぎる反応を示します。本来は、貧困や拡大する格差を是正するには、税制を含めた「私権の制限」が有効な手段となります。にも関わらず、大企業の権利は社会主義的に制限せよ、だが自分たちの自由にはいっさい手をつけるな、というめちゃくちゃなメンタリティの人がとても多いのです。戦後左翼が不法入国の半島人と結びついたと言われますが、そのメンタリティが伝染したかのようです。

 

竹島はもちろん、韓国人・韓国資本によって対馬の土地は買われ、。北海道の原野と水源は中国人・中国資本に買われ放題です。これは、「所有の自由」を実現した結果です。ご存知の通り中国は共産国家であり、中国の土地を外国人が買う場合には70年の期限付きの利用権しか与えられず、中共の政治判断により、立ち退き料を支払われるかもしれませんが、同じ立地は70年さえ守られない。韓国ですら、外国人に対する土地所有規制が存在します。

 

日本は自由主義を信奉するあまり、自国の核心的な存立要素(社会的共通資本)まで売り物にしています。そして世界に対して、深刻な不均衡状態のなかに置いたまま、自由貿易や自由化を推進しています。

 

毎日新聞の報道ですからバイアスはあるとしても、この報道の内容が正しければ、「今は、そこまで」ということになるのですかね?

 

そんなに「じわじわ」進めなくちゃ、この国はダメなんでしょうかね?

 

”くま”は、マルクス主義も中国共産党も、「近代私法の三大原則」も多くの人に恨まれていると思いますけれどね。

 

 

Good Luckクローバー