2012年に刊行された「消滅した国々--第二次世界大戦後崩壊した183カ国」(吉田一郎、社会評論社)という本があります。第二次世界大戦で生まれた国もありますが、1945年を戦争終結の年とすれば、67年間のあいだに183カ国ですから、毎年2.7カ国消滅していることになります。無論、小さな藩王国、士候国、首長国なども含まれていますからこれだけの数になりますが、

 

戦後消滅した国で、最大の国家はソヴィエト社会主義共和国連邦ですかね。22の共和国(連邦構成主体は全体で85の自治体)で構成されるロシア共和国連邦に生まれ変わって落ち着きました。冷戦中は、南ベトナムが、アメリカの敗戦により消滅しました。冷戦構造の崩壊は、東ドイツを消滅させました。また戦後のどさくさで中国共産党はチベット侵攻により独立したばかりのチベットを併合しています(分子生物学上、チベット民族は、大和民族・アイヌ民族・琉球民族と同じY染色体ハプログループDに属する、いわば兄弟ですので、ただでさえ横暴な中共にはいっそう激おこです)。

 

その流れで、ユーゴスラビアは見事にバラバラになりましたね。1989年は、下の地図の通り「ユーゴスラビア」でした。ユーゴスラビアの分断の歴史は興味深くて、ナチス・ドイツ占領下ではパルチザンが激しく抵抗し、独力でナチス・ドイツからの解放を勝ち取り、チトーを大統領とする社会主義国となります。しかし、そこにソヴィエトが指導者として入り込み、ユーゴスラビアに中央集権制と集産型の産業を持ち込みますが、今度はそのパルチザンが民族自決を盾にソヴィエトに抵抗します。結果、スターリンはユーゴを見放し、西側でも東側でもなくなり経済的に非常に苦しくなります。

 

ユーゴスラビアは1から7の数字で特徴付けられると言われ、1つの国、2つの文字(ラテン文字とキリル文字)、3つの宗教(カトリック、セルビア正教、イスラム教)、4つの言語(スロベニア語、クロアチア語、セルビア語、マケドニア語)、5つの民族(スロベニア人、クロアチア人、セルビア人、マケドニア人、イスラム人)、6つの共和国(スロベニア、クロアチア、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、マケドニア)、そして7つの国(イタリア、オーストリア、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニア、ギリシャ、アルバニア)と国境を接する、非常に複雑な国でした。

 

チトーの治世は、民族主義を秘密警察によって抑えながら経済成長を図るものでした。チトーの治世が終わると、ユーゴスラビアの共産党は分裂しはじめます。非常に複雑な分裂です。チトー時代の経済政策で、豊かな北西部と貧しい南部で貧富の格差が大きくなります。そこで民族主義が強くなり、セルビア正教会が火に油を注ぎます。アルバニア人弾圧は共産党のミロシェビッチなどにより強化され、その弾圧に抵抗する勢力がコソボ解放軍となります。その間、1991年には、スロベニアとクロアチアが独立を宣言しますが、当時EC加盟国の反対を押し切って西ドイツが承認します。そこが契機となって、国は分裂を始めます。ユーゴは「EUの理念のために犠牲になった」と言われました。1999年、時の米国クリントン政権は、上院で共和党から、コソボ解放軍とクリントン政権は同盟関係にあると指摘され窮地に陥ります。コソボ解放軍は、ウサマ・ビン・ラディンなどイスラム原理主義者の支援を受けているテロ組織なのにと。かくてNATO軍によるコソボ空爆が始まります。

 

 

     

source: wikipedia

 

今は、下の地図の通り、スロベニア共和国、クロアチア共和国、マケドニア共和国、ボスニア・ヘルツェゴビナ共和国、セルビア共和国、ヴォイヴォディナ自治州、コソボ共和国、モンテネグロ共和国の8つに分かれてしまいました。

 

 

チェコスロバキアも。チェコ共和国とスロバキア共和国に割れました(ビロード離婚)。チェコ側が、スロバキア側を経済の足かせになっていると主張し、無血で国を割った事例です。国民は分割を望まない者も多かったと言いますので、まあ、欲の問題ですな。

 

 

サダム・フセインのイラクは残っていて「消滅した国家」には数えられていませんが、換骨奪胎、ある意味別の国になってしまいましたね。サダムはイラクで出る石油をユーロで売れるようにしようと目論んだのが、あの戦争の原因だと言われています。サダムの治世はイスラム教国の中では格段に世俗的で、女性の地位も非常に高かったと言います。

 

またこの本が発表された以降も、いろいろありますね。クリミア共和国は、どうしてもクリミア半島が手放せないロシアが併合してしまいましたね。米国など旧西側(ブルー・チーム)は、まだウクライナに属していると主張し、緊張しています。ついこの間、スペインからカタルーニャが独立すると住民投票を実施して、スペイン連邦政府は拒否しています。IS(イスラム国)は、「国家」というべきかどうかは難しいところですが、ラッカの陥落で「幻の国」になってしまったのでしょうか?

 

 

さて、前振りはここまで。長くてすみません。しかも本題はとっても短いです。次に国家が消滅するか、あるいはイラクのように換骨奪胎となるのは、や・は・り、この辺りになるのでしょうか?

 

北は、無論、核・ミサイル保有と、それらを使った挑発が原因で。南は経済問題と、米中の綱引きで。中国からも日本からもCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を失い、米国とのFTAも失い、南から財閥資本が海外に逃げるようなことがあれば、深刻な事態になるでしょう。そもそも戦後の冷戦構造が生んだバブルで高下駄を履いてきた南朝鮮に、地道に一から積み上げたような国家統治能力も、自発的な革新も望めないでしょう。その点では北のほうが強い。
 

 

上述の通り、1年に2.7カ国が消滅し、戦後70年で、チベット、ソヴィエト連邦、東ドイツ、南ベトナム、ユーゴスラビア、チェコスロバキア、クリミア、国は残ったが政体が滅んだイラク、…国というのは、思って入る以上に、簡単に消えて無くなったり、くっついたり、バラけたり、中身がごっそり変わったりするもののようです。ですので、半島にそうしたことが起きてもまったく不思議はない状態です。

 

言わずもがなの話ではありますが、そんな世界の中で、3万年以上同じDNAタイプを持つ種族が住み、2600年以上同じ神話を民が共有し続ける、日本という自然国家共同体がどれだけ稀有な存在か。国ごと世界遺産にすべきですな(「ユネスコもねぇ…」ですが)。なにより日本人はこのことをもっと大切にして欲しいですよ。

 

本来であれば平成30年12月、つまり来年の12月に任期が切れる衆議院議員。安倍首相と自民党は、現在の勢力をなるべく保持したまま、平成33年まで現政権のスキームを延長するのが、今回の衆議院解散のひとつの目的であるということはおそらく論を俟たないでしょう。

 

「来年の夏までには何かある」というのを当たり前のように語り始める識者・ジャーナリストがぽちぽち出てきています。米国政府も、北朝鮮への武力行使の準備に4ヶ月かかる、というような情報を流しています。無論、これは兵法としてのリークでしょうね。実際にはいつ起きてもおかしくはない。

 

何か起きた時に、来年12月の選挙では絶対に勝てないような見通しが、おそらくあるのでしょう。安倍首相の、国民とのディール(取引)のメッセージは、「世界のトップとの緊密な関係(外交の安定)、既存政党のうち最も現実的な安全保障政策の2つの引き換えに、消費税増税を受け入れ、安倍体制に継続の機会を与えよ」ということなのでしょう。この時期、外交トップ=安倍首相の顔を変え、新任の防衛大臣に国防を任せるのか?

 

私事ですが、仕事では、長くプロジェクトのマネジメントに関わっていました。プロジェクト・チームが優秀なスタッフに恵まれ順調に運ぶのは、プロジェクトを預かる側の日頃の行いと時の運です。ですが、複数のプロジェクトを回す立場になれば、すべてのプロジェクトで良いスタッフに恵まれることは絶対にありません。また、ある日突然スーパー・ヒーローのような助っ人が現れることもありません。優秀でも一人のできることは限られています。しかしどれも、ゴールに達さなければマネジメント側の「債務不履行」となります。今の政治家がアレだと言っても、それはたぶん日頃の行いが悪いせいで、どんなにダメな人材しかいなくても、無責任なことはできません。なのにダメな人は「実施責任」を負ってくれません。でも、投票行為というのは、結果責任を負うんですな。民主主義というのは、考えようによっちゃ、有権者の負担が、こんなときにはひどく重い制度でもあります。

 

今日は投票日ですね。

 

 

海上自衛隊 東京音楽隊, 『宇宙戦艦ヤマト横浜開港祭2017組曲』

 

「宇宙戦艦ヤマト」のいいところは、自己犠牲・利他的・奉仕的であることの尊さをうまく訴えているところじゃないかと思っています。松本零士氏の『戦場まんがシリーズ』は、ごく普通の平凡な兵士たちが仲間を想ってなにかを行動する話が多く、よく読んだ覚えがあります。しかし、海上自衛隊東京音楽隊、すごいですね。MCの「ふたまるひとなな」もいいですし。スキャットの女性歌手は三宅由佳利さんというのでしょうか?あまりの巧さにびっくりしました。お綺麗ですしね。男性のリードシンガーの方もすばらしいバリトンです。最近見つけたのですが、ちょっとヘビロテになっています。

 

 

宮川泰, 『宇宙戦艦ヤマト 組曲』

 

オリジナルはこちら。00:02:20〜くらいからの展開と、フォルテッシモは、ずるい。

 

 

Good Luckクローバー