生井久美子氏が認知症当事者を取材した『ルポ 希望の人びと―ここまできた認知症の当事者発信』に出てくる太田さんが体験を語りだすまでの話です。
「集団の力御大の言葉 太田さんは「いま、いろんな方にかかわっていただいて幸せ。こんなに幸せでいいのかなと思う」と話す。最初から元気に講演できたわけではない。社会とつながりたいと願って、初めに挑戦した配食ボランティアは、道に迷って挫折した。「私の宝物」という、このデイケアで変わった。最初は、戸惑った。ある日、通称「御大」の86歳 の女性が言った。 「笑っても1日、泣いても1日。どうせならブツブツ言わんと、笑っとった方がましやろもん」「息子にボケって言われたっ、なんね、ボケの花はきれいたいって言い返してやったばい」戦火、原爆を生き抜いてきた「バーちゃんパワー」にふっと心がほどけた。「思い直したんですね。こんなことしてていいのかつて」人生には終わりがあること、老い、いつか自分のこともわからなくなる日を覚悟した。いまの自分に、いったい何ができるか・・・。
もう、自分の名前が書けない、計算ができない、時間がよくわからない。運転はあきらめた。できないことがどんどん増え、もたつく自分。おろおろする自分が情けない。持っている物がどんどんなくなるような不安、自分が壊れていく、挫折感。でも・・・。まだ、話すことなら、思いを語る」
私は、「あの人」「この人」と名前が出来なくなってきました。8000歩歩けていた3か月前に比べて5000歩になっています。できなくなることが増えていきます。それに気づくと戸惑いはありますが、悲しむことが減ってきました。認知症当事者の方は、忘れることが私より多いかもしれませんが、記憶が消えてしまうのではないという研究もあると聞く。記憶が引き出せなくなっても暮らせる社会であって欲しい。
