【コラム】 筆洗 2015年10月9日東京新聞
そのオーストラリアの少年は裕福とはいえぬ家庭に育った。十二歳の時、胃がんで父親を亡くした。少年の生活は荒(すさ)んでいった。けんかや学校でのトラブル。母親は悩んだ。このままではいけない▼幸い、少年にはゴルフの才能があった。母親は決断した。全寮制高校とゴルフアカデミーに入学させた。高価な学費は家族の住んだ家を売って用意した。少年も決意した。週に三十二時間、練習に打ち込んだ▼別の日本の少年も、やはり小学校六年生の時に父親を胃がんで失った。母親は中学校の非常勤講師として復職し、この少年を含む三人の子を育てた。亡くなった父親は少年がプロ野球選手になることを望んでいた。その望みのため少年にとにかく食べさせた。夢を追わせたかった▼一人目の少年はプロゴルファーのジェーソン・デー選手(27)である。全米プロ選手権など今年、米ツアー五勝を挙げ、最高のシーズンを終えた。全米プロの勝利に高校のコーチでもあったキャディーと抱き合い、号泣していた場面が忘れられぬ▼もう一人の日本の少年は埼玉西武ライオンズの秋山翔吾選手(27)。シーズン二百十六安打の新記録を達成した。長いプロ野球の歴史の中で誰よりも一年間で安打を放った選手になった▼同じ世代、境遇の似た二人の「少年」が努力と母の支えで大きな花を咲かせた。励みとなる少年少女もきっといる。」
日米のプロ野球選手の話です。ですが、誰もができる話ではありません。多くは日々黙々と働いています。
「認知度低い貧困の実態 大戸はるみ
最近、知人たちと旅行した 際に、「なくせ『女性の貧困』」 という講演会に参加したことを話すと「女性の貧困ってどういうこと」と聞かれました。 普段は福祉関係者と話すこと が多く、貧困問題は共通認識 のように感じていましたが、 知らない人は知らないんだな、と実感しました。 昨年、厚生労働省が2012年の子どもの貧困率が16・3%だったと発表しました。それに合わせ、困窮してご飯が食べられない子のドキュメンタリー番組が放送されたときには、「そんな子どもがいるんですか」と福岡市立ひとり親家庭支援センターに問い合わせがありました。
背景には54・6%というひとり親家庭の貧困率の高さが あります。母子家庭の多くは パートで働いていて、厚労省の調査では就労収入の平均は 180万円くらい。時給はなかなか上がらず、少し上がったかと思えばパワハラなどにより、辞めざるを得なくなったという話も聞きます。 ストレスが多い職場で働 き、保育園や学童保育の迎えに走り、家に着けばご飯の用 意や洗濯。合間に教科書の音読など子どもの宿題にも付き合う。ひとり親は、そんな毎日を「自分が稼がなければ生きていけない」という圧迫感とともに過ごしています。とはいえ、実際に困っている人が「困っている」と声を上げる例は少ないんです。多くの人に実態を知ってもらいたいと思っています。(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福岡理事長) 」(2015年10月10日西日本新聞)
なぜ、知られることが少ないのでしょうか。知る努力も必要かもしれません。
