11月18日〜公開 映画 シンデレラガール と私 ① | 森山風歩オフィシャルブログ 〜あたしこれからイチゴちゃんなんだよ〜

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緒方貴臣監督と出会ったのは8年ほど前だと思います。何故か10年、という感覚なのですが。

緒方監督が一枚の義足のモデルさんの写真を観て『カッコいい、美しい』と感じて始まったこの企画を別のプロデューサーでやろうてしていたプロジェクト際に監督と出会いました。

当時のプロデューサーが監督を家に連れてきて「今回監督をやる緒方さんです」と紹介された時に驚きました。
私、緒方貴臣監督のファンだったんですよね。

作品のカメラワークや、こう観てほしい、と答えを誘導しないところ、観終わった後に自分の頭と心で考えさせる終わらせ方とかいろいろ好きで。
【映画は監督のもの】【映画は観た人のもの】という感覚の私には、緒方貴臣という映画監督はたまらない存在でした。
彼の作品を観る際には、映画の中に埋め込まれた細かなディティール探しをするのですが、それを勝手に緒方イズムと呼んでいて、そこも観る側として好奇心を煽られるんですよね。

人見知りと顔色伺いという内気が私の癖なので、初対面の際に目の前の彼に対して心の中で(わー、緒方監督が…!)と思いながらもファンであることは言えず、簡単に挨拶をし合っただけでした。

緒方監督が前回のプロジェクトを辞める時に私も同じ理由と同じ感覚で降りたんです。
障害、というものを前に打ち出したいわけでも無いですし、ただ義足であることをアイデンティティ、パーソナリティの一つに含んでいるだけ。で、女性が美しく生きるその様を描きたいと私は思っていました。世間的にいうところの【障害を持った人】の感動ポルノとは真逆じゃないと制作する意味は無い、という怒りに似た感情が胸の内側にありました。

プロジェクトを降りてからも、ずうっと緒方貴臣監督とはご縁があって。監督が改稿した脚本をその都度読んで意見や大切にすべき感覚について私的な素直な感触や肌感を伝えたり。美意識の波長が合ったのか、様々なことを語りながら一つの目的に向かっての交流が途切れることなく約8年程を過ごしました。

予算や規模が前プロジェクトよりかなり小さくはなりましたが今回、文化庁の補助金を使って再始動する運びとなりました。
私は緒方監督の監督補佐みたいなものだったと思います。監督が要求したこと、やって欲しいと言われたことにしっかりイマジンを使って具現化するのがやるべきこと、というか。

私は主演の伊礼姫奈さんがいらしたオーディションの日から立ち会って参加していますが、予算、時間、人間関係、私の身体的な能力などが連なってチーム戦として今回のシンデレラガールという作品には私はそんなに食い込めてはいないと個人的には思っています。

私自身が社会で進行性筋ジストロフィーという難病で重度障害者といわれる存在です。上京してモデルをやっていても、本を出しても私は「森山風歩」でありその中に【女性】【年齢】【性格】【筋肉少女帯が好き】【お洋服オタク】様々な私の定義があってそのうちの一つに【筋ジストロフィー】があるだけ。
私はあくまで森山風歩という個人なので、ブログやSNSプロフィールには特に治らない難病で重度の障害者であることは書いていませんでした。
シンデレラガールで伊礼姫奈さん演じる音羽も私にはただの女の子にしか映らないんですよね。モデル活動をしている女の子で女子高生で可愛い子なぁ、と。
義足にフォーカスしたところで身体的物理的欠損なのでそれを補えば(それを補う為の努力や生活上の多数派との違い、義足を大切に扱う為の配慮など。いろいろな部分があるのは加味した上で)他、身体自体は健康じゃん、くらいの感覚です。※誤解を招いたら申し訳ないです。

物理的な障害とあわせて、私の場合は体力が日毎落ちますし、筋肉が壊死して全身の筋力がなくなる。言わば不治の病です。でも【可哀想】な人と思われることも扱われるのも本当に苦痛で仕方がなくて。テレビ番組でそう描かれるのも嫌です。PMDの人の前に森山風歩という人でいないと気が済まない性質です。
なので、今作のシンデレラガールの音羽が一人の女の子として、何を思い何を大切にし、どう生きてゆきたいのか、女子高生モデルをやっている音羽がどんなパーソナリティで人間だからどんな物を持つことを選んで何を着ることを選ぶのか、そこにグッと踏み込んで仕事がしたかったですね。
脚本に描かれている音羽の内面が視覚的に現れたその辺りのディティールの部分を本当にやりたかったです。
ただ、やりたかったことが心にザワザワと湧いてくるジレンマの上に被さる様にこの映画に関わりたかったことで、私の好きなこと、やりたいことが自分自身にグッと跳ね返ってきましたね。

相変わらず、車椅子ユーザーだとか筋ジストロフィーだとか呼吸器や心臓にそこからどういう疾患が派生して〜とかプロフィールには書かないと思います。
私の中で私の人生が終わっていない様に音羽の人生も映画ではエンディングがあるけれど、全く終わっていなくて。私の中では今も生きているんです。


写真はシンデレラガールの時期にやたら着ていた自分のショップで扱っているワンピースです♪

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