登場する人物、団体、名称はすべて架空のものです。


この小説は


”Obsessed with you”、


”Forbidden Affection”との


連動小説となっています。


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九条が俺の胸に顔を埋めるようにして泣いていて


俺の背中に回された彼女のその手は俺の腰辺りの


セーターの裾をギュッと掴んでいた。



それだけで


彼女が今までどれだけ自分の感情を


抑え込んできたのかが伝わってくる。



ごめん・・・!


ごめんね。


九条。



俺の力不足で


辛い思いをさせてごめん。




でも、これからは


僕が全身全霊で君を守るから。



俺は彼女を強く抱きしめながら


心の中でそう誓っていた。




しばらくして


周りのひそひそ声が耳に入ってきて


俺は我に返った。




ここは、公共の面前で


しかも3A全員が揃っていたんだった。



恐る恐る顔を後ろに向けると


クラス全員や他の客が


こちらをぽかんと見つめていた。


そんな彼らを背後にして



「ね・・・九条。


そろそろ・・・


大丈夫・・かな・・・?」



と彼女の耳元でつぶやくと



「大丈夫…


大丈夫なんだけど…


どうしよー・・・。


恥ずかしくて顔が上げられない…。」



彼女は


俺の胸元に顔を押し付けたまま


もごもごとそう言った。



彼女も顔を挙げるに


あげられないらしい。



そりゃ当然だよな・・・。


クラスメイトの前で


いきなり先生に抱擁されたのだから。







「そうだよな・・・。




じゃ、俺が皆に説明するから


九条は俺の後ろに隠れてて。



いい?」



俺がそう聞くと


九条はコクコクと頭を縦に振って


彼女は


俺の後ろに回していた手を


ゆっくりと解き


体を少しだけ離した。



俺の体から離れたものの、


俯いているままの


彼女の表情を


ちらっと窺うと、


よくは見えないが不安そうな恥ずかしな表情をしていて


少し不安になったが


俺は後ろで固まっている生徒たちの方へ


クルリと向き直った。


すると俺の眼下には生徒全員が固まっていて


そのすべての視線が俺の顔に集まっていた。



俺の自然と体が強張ってしまう。




「え・・っと」




生徒と向かい合ったものの


混乱する頭の中でまず何を言えばいいのか


全くわからない。



その時だった。



「えぇっ??桧山さん…


ちょ・・今のなんすか!!??」



男子生徒の一人が


と興味津津の声をあげた。





「えー・・・


みんなに説明したいんだけれど・・


えっと・・


ここではなんだから




とりあえず


ちょっと外に出ようか・・」




そう言うと


生徒は


ぼそぼそと何かお互いに


内緒話でもするようにした後、





「桧山さん、


カラオケボックス行かね?


もちろん先生モチで!!」



男子生徒の一人が


そう声をあげた。




彼がそう言うと、


他の生徒も


「それイイ!!」


「そうだよ。それでイコッ!!」


と言いだした。






仕方ないか・・。


急に教師が乗り込んできて


クラス会を滅茶苦茶にしたのだから。





「わかった・・・


俺モチで・・・!


カラオケに行くぞ」



俺がそう言うと



生徒たちは


まるで急に降って湧いた


サプライズイベントにはしゃぐように



「ヤッター」とか


「何これー!!」とか


「マジで―??」とか


口々に言いながら


出口に向かって歩き出した。



その時、


その生徒の中から


城崎 亜由美や他の女子生徒が


何人か飛び出してきて


俺の後ろに隠れていた


九条の周りを囲んだ




そして口々に


「ちょっと、美桜、


何があったの~?」


とか


「ねぇ、ねぇ!!


もしかして


本当は桧山先生と付き合ってるの?」



などと質問しだした。




彼女はその友人の勢いに押されるように


「あ・・えっと・・」


と呟いたものの


答えに迷っているようだった。




「おいおい!!


お前たち、悪い。


九条のこと、今だけソッとしてやってくれないか?


俺から説明するから」



九条の様子を見て


俺が慌てて彼女たちをそう言って制止すると


彼女たちは俺の表情を少し見つめて



「やべー。


先生、美桜にマジ惚れだー!!」



と囃す様に言って


生徒の塊の中に戻って行った。






俺はその様子を後ろから見て


フゥッとため息を1つつくと


後ろからおずおずと着いてくる九条に


「ごめんな」


と謝った。




すると九条は顔をあげ、


真っ赤になった目で俺を冗談ぽく睨んで



とだよ・・もう・・・」



と小さく文句を言った。




その表情を見て


俺は寧ろ、幸せを噛みしめていた。



九条が全てを理解したような顔をしていたから。




別れるのメールから


この瞬間まで


九条とあれこれ話し合ったわけでもないのに


ギュッと抱きしめただけで


お互いに何もかもが通じていて、


お互いがお互いを思いやって


愛してあっていることが伝わる。




そんな不思議な


何とも言えない温かい空気を


彼女との間に感じて




やっぱり九条は


俺の運命の相手だ



そう思った。




本当は今すぐ後ろを振り返って


もう一度抱きしめて


大好きだと大きな声で言いたいけれど、


俺はその衝動を抑えて


その代わり、


自分の片手を


前を歩く生徒たちから見えないように


背中の腰のあたりに差し出した




すると


九条はそれを控え目に握った。






その小さい手を


掌の中で握り締めながら


俺は



何があっても


俺はこいつを、


一生をかけて守り通す、




と誓っていた。




___________________





カラオケボックスには


やはり


30人もの生徒が入れる部屋はなく、


複数の部屋に分かれてしまったが


その中でも一番大きな部屋


―15人程度が限界の部屋―


に30人が押し込まれるように入った。


でも九条だけは


半開きになった部屋のドアの後ろに隠れるように立っていた。



俺はそんな彼女の様子を気にしながら


目の前の生徒を見まわした。



ソファーの上で


お互いにぴったりとくっつくように座る者


部屋の壁にもたれかかるようにして立つ者、


皆様々だが


共通していたのは


全員、俺の説明を待っていると言うことだった。




生徒をここまで間近にして


話をすることなど


今までに経験したことがなく、


教師を何年もしてきた俺でもかなり緊張する。




俺は少し圧迫感を感じながら


「えっと・・」


と切り出した。




その呟くような言葉に


少しざわついていた室内が


シーンとなった。



聞こえてくるのは


周りのカラオケボックスから


漏れてくる音だけ。




そんな中


俺は一度咳払いをして


よしっ


と心の中で気合いの掛け声をかけた後・・





「俺は…




九条と交際しています。」




自分の声を押しだす様にそう告白した。




すると生徒たちは



「えーーーーーーっ!!!」



と金切り声にも似た声をあげた。



そして


「えー!!なんで?」


「どうやって付き合ったの?」


「いつからですか?」


とか、更には


「もうエッチした?」


とか、


「結婚するんですか?」


とかそんな質問が飛びだした。


しかし、俺はそんな彼らに



「ごめん。細かいことはまだ言えない。


今、学校関係者で


俺と九条が付き合っているのを知っているのは


お前たちだけなんだ。


だから、校長や教頭はまだ知らない。




今夜か明日にでも


校長と教頭に相談しようと思う。」


と言うと


「なんだよ」


とか


「それだけしかおしえてくんないの~」


とかそんな批判にも似た声が飛んだ。



俺はそんな彼らの発言を遮るように




「でも・・・


これだけは聞いてほしい」


と言うと、再び室内が静まり返った。




「俺たちは浮ついた気持ちでは付き合っていない。


だから、これは君たちにお願いするしかないのだけれど


面白半分に他の人に触れまわらないでいてほしい。




こんなこと、お願いできる立場じゃないことはわかってる。


ただ・・・


俺は・・彼女と本当に真剣に交際しているから。


お前たちの中にも


誰かと真剣に交際している奴もいると思う。




俺も、その一人だ。




解ってくれとは言えない。




でも、お前たちが


俺たちのことを解ってくれたら


本当にうれしい。」



そう言うと


生徒たちから、


まぁ・・教師も人だしな…


とか、


九条と桧山さんなら応援できる気がする


とかそういう声も聞こえてきて



俺は少しほっとした。



しかし・・・


問題は今からだ。




俺は今から



九条の両親と話し合って


そして校長と教頭に連絡しなければならない。




そう考えながら


九条の方をちらりと見ると


九条も少し不安な表情を浮かべて


床を見つめていた。




これから起こる事柄から


彼女を守らなければ



俺は彼女の不安そうな表情を見つめながら


そう覚悟を決めた。



続く


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