この8月25日、デビューから47年を迎えるピンク・レディー。1970年代後半、日本中に大ブームを巻き起こした伝説のアイドルとして、数々のヒット曲とともに今も世代を超えて愛されている。現在DVDで視聴できる往時のミーちゃんケイちゃんの映像の中から、最大のヒット曲「UFO」の歌唱シーンをリストアップし、テレビで放送された順に鑑賞している。


前回の記事はこちら↓


今回は、1978年の5月と6月に放送された3件の映像を取り上げる。この時期は、歌番組では主にリアルタイムでヒット中の「サウスポー」が歌われていたのだが、まだテレビで「UFO」を視聴する機会はあった。海外で収録された冠特番が2本放送されたためでもある。当時は今と違って、多くの日本人にとって海外旅行がまだ高嶺の花だった時代。この頃のピンク・レディーの勢いの凄さを象徴するものと言えるだろう。


78年5月4日放送「木曜スペシャル ピンク・レディー・イン・ラスベガス」(「Singles Premium」DVD所収


【20】78年5月4日(木)放送「UFOセブン大冒険!」


TBSがこの年4月から木曜夜7時の枠で放送したバラエティー番組。前のクールまで水曜に放送していた「たまりまセブン大放送!」を移設し、リニューアルした。「UFO」の大ヒットにあやかって企画されたことは、想像に難くない。新番組を紹介するスポーツニッポンの記事(78年3月23日付)では、見出しに<「UFO」便乗SFバラエティー>と露骨に書いている。


タイトルに「UFO」を掲げたものの、番組のメインは榊原郁恵さんだった。未来からタイムマシンで現代に迷い込んだ少女の役が郁恵さん。ミーちゃんケイちゃんは郁恵さんの姉の役なのだが、未来の世界にいる設定なので、毎回ちょっとしか登場しない。これはもちろん制作の都合で、この頃ピンク・レディーがさらに多忙を極め、スケジュールを押さえるのが難しくなったからだろう。


78年5月4日放送「UFOセブン大冒険!」(「Pink Lady Chronicle TBS Special Edition」所収)


この時の2人は円盤、というか、どんぶりのような形状のセットの上で歌っている。以前の「たまりまセブン…」でもそれっぽいキャラクターが登場していたが、新番組ではさらにブラッシュアップして「スター・ウォーズ」のR2-D2に似せたロボットを登場させている。スポニチの記事によると、<五百万円の製作費をかけ、ラジコンで動く精巧なもの>とのことだ。チープなように見えて、実はものすごく力が入っていたようである。


(同上)


(同上)


2人の衣装は番組のオリジナルのようだが、よく見ると、「UFO」を歌う時のいつものシルバーのスパンコールの衣装の上から、セーラー風の襟付きベストとビニール製の透明なミニのワンピースを重ねて着ているようだ。


(同上)


2人が歌っている間に、500万円のラジコンロボットがセットの周りをぐるっと動き回るのが、演出の目玉。歌唱はワンコーラスのみ、1分42秒。


【21】78年5月11日(木)放送「ピンク・レディー・イン・ラスベガス」


日本テレビが木曜夜7時半から設けていた「木曜スペシャル」の枠で放送された。4月21日と22日に、アメリカ・ラスベガスで行われたピンク・レディーのコンサートを収録したものである。DVDに収録されているのは、同じ公演を収録したライブアルバム「アメリカ!アメリカ!アメリカ!」の音源に、この「木曜スペシャル」の映像をドッキングさせたものだが、実際に放送された映像と違う部分がある。


DVDに収録されている「UFO」は、残念なことにイントロから歌い出しの<♪手を合わせて見つめるだけで>までが、静止画になっている。以前も書いたが「木曜スペシャル」の放送では、映画「未知との遭遇」の映像を使用したりしていたため、DVDではこのような映像処理を施したのかも知れない。そのことも含めて、この時の「UFO」についての詳細は、下記の記事を読んでいただければと思う。



78年5月4日放送「木曜スペシャル ピンク・レディー・イン・ラスベガス」(「Singles Premium」DVD所収


公演が行われたのは、トロピカーナホテルのファウンテンシアター。ベーシストのチャック・レイニー氏が率いるリズムセクションなど、指揮の原田忠幸氏以外は全てアメリカ人ミュージシャンが演奏している特別な「UFO」である。


(同上)



(同上)


2人の衣装はラスベガス公演のために新調したもので、シルバーのスパンコールを縫い込んだ上下のセパレート、腰には赤のスカーフベルト。頭にはバンダナを着けている。


(同上)


会場を埋めた聴衆の多くはアメリカ人だったというが、臆することなく全力で歌い踊り、魅了する2人。デビューからまだ2年も経っていないのだが、そのオーラはやはりただものではない。フルコーラスで2分51秒。


【22】78年6月4日(日)放送「ピンク・レディー特報エーゲ海で大冒険‼︎」


TBSの日曜夜8時「日曜スペシャル」枠で放送された特番。ピンク・レディーがギリシャの旅を楽しむ様子と、ヒット曲を現地で歌う歌唱シーンを織り交ぜて構成している。2人はこの番組のロケと写真集の撮影を兼ねて、5月18日から28日まで渡航していた。


78年6月4日放送「ピンク・レディー 特報エーゲ海で大冒険」(「Pink Lady Chronicle TBS Special Edition」所収)


「UFO」の歌唱シーンだが、まず上の映像に2人の声が入り、前振りをしている。


ケイ「港」

ミー「お城」

2人「UFO!」


…なんともユルい。


(同上)


お馴染みのシルバーの衣装を身にまとった2人が、エーゲ海の日差しを浴びて「UFO」を歌う。


(同上)


撮影場所は、ホテルの中庭だろうか?白い階段の前に立つ2人の後ろには、夾竹桃のようなピンクの花が咲いている。


(同上)


フルコーラスで3分10秒。演奏はレコード音源のカラオケを使っている。最初からボーカル入りの音源を使って口パクにした可能性もあるのだが、長いコード付きのマイクを用意しているのと、間奏の終わりと曲の最後に、レコードにはない「UFO!」の声が入っているので、歌は現地で収録したと思われる。


(同上)


この特番だが、旅のパートの買い物や食事のシーンなどは、正直言ってビミョーなところもある。買い物では「視聴者プレゼント用にとにかくたくさん買うように」という指示がディレクターから出たようだ。当時ミーちゃんケイちゃんはともに20歳。高校を卒業してすぐにピンク・レディーになり、芸能界で超多忙な日々を送ってきた2人に、この時それほどの社会経験はない。生真面目なミーちゃんケイちゃんはディレクターの指示に忠実に従って、店頭の品物を次から次へと手に取るのである。いくら買い物の予算が潤沢に用意されていたとしても、日本人の若い女性2人が手当たり次第に商品を買い漁っている光景を見て、事情を知らない人は眉を顰めたのではないだろうか。


さらに「値切って」とか「オマケしてもらって」とかの指示も出たらしく、素直なミーちゃんがやたらと店員に頼むのだが、その場にちゃんとした通訳がいないようで、なかなか通じない。そこでケイちゃんが何とか片言の英語でやりとりするのだが、冷静なケイちゃんはおそらく半分くらいこの大量買いの異常さを自覚しているので、心から買い物を楽しんでいるようには見えないのだ。食事のシーンも然りである。もう少し周りのスタッフが考えてあげられなかったものか。


そもそもミーちゃんケイちゃん自身がギリシャに関心があった訳でもなく、テレビ局が勝手に立てた企画であり、2人にとってはあくまでもお仕事メインの旅行なのである。もちろんギリシャの美しい風景に癒されたとは思うが、結局のところ、番組全体を見れば、歌っている時の2人が一番生き生きしているのがよくわかる。


なお、DVDの解説によれば、番組は再編集して「ピンク・レディー ヒットアルバム イン ギリシャ」のタイトルで、同年9月3日(日)にも放送されたようだ。


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