現在DVDで視聴できるピンク・レディーの映像の中で、「UFO」の歌唱映像をピックアップし、当時テレビで放送された日付順に鑑賞している。今回は1978年3月と4月に放送された3件の映像を取り上げる。


78年3月4日放送「8時だョ!全員集合」(「Pink Lady Chronicle TBS Special Edition」所収)


歌謡曲全盛のあの頃、人気歌手はだいたい3か月に1枚のペースで新曲のシングルレコードを出すのが一般的だった。「UFO」は77年12月5日、次のシングル「サウスポー」は78年3月25日にリリースされたが、テレビの歌番組では2月下旬から早くも「サウスポー」が披露されている。大ヒットした「UFO」だが、3月にはテレビの前の視聴者の関心も、新曲「サウスポー」の方へ移りつつあった。そのせいか、この時期の「UFO」の歌唱映像でDVD化されているものは、それほど多くはない。


前回の記事はこちら↓



【17】78年3月4日(土)放送「8時だョ!全員集合」


(同上)


ご存知、TBS土曜夜8時の「全員集合」、この日は東京・渋谷公会堂からの公開生放送。ミーちゃんケイちゃんは1月下旬以降すっかりお馴染みになったゴールドのスパンコールの衣装で、右腕にはアームカバーを着用している。


直前がどんなコーナーだったかはわからないが、舞台が暗転して完全に真っ暗な状態でイントロの演奏が始まり、中央にスポットライトが当たるのとほぼ同時に2人が所定の位置について、すぐに振付を始める。ケイちゃんの後ろで、前のコーナー(少年少女合唱隊か?)で使ったであろう大きい箱のようなセットが運ばれていくのが一瞬だけ映る。いかにも「全員集合」っぽくて懐かしい。


フルコーラスで2分39秒、基本的にはスポットライトのみで、イントロと間奏ではチカチカと照明を点滅させる演出が施されている。バックは、岡本章生とゲイスターズ。


(同上)


(同上)


DVDには収録されていないが、実はこの日の放送は、長く「全員集合」のレギュラーを務めていたキャンディーズの最後の出演となった。キャンディーズは4月の解散を前に2月25日にリリースしたラストシングル「微笑がえし」を歌っている。前回書いたように、渡辺プロと日テレの確執によって、月曜の夜8時には裏番組でキャンディーズに対抗させられる形になっていたピンク・レディーだが、土曜8時の「全員集合」では仲良く共演していたのである。


ちなみに、この回のゲストは他に沢田研二さんと西城秀樹さんだった。ザ・ドリフターズの笑いのイメージが強い「全員集合」だが、歌番組としても豪華だった。


【18】78年3月5日(日)放送「ロッテ歌のアルバム 千と一慶生放送」


78年3月5日放送「ロッテ歌のアルバム 千と一慶生放送」(「Pink Lady Chronicle TBS Special Edition」所収)


TBSの日曜お昼、午後0時45分からの30分番組。タイトル通りこの日も生放送だったとすれば、上の「全員集合」と2日続けて生出演ということになる。場所はTBSのスタジオのようだが、観覧者を入れている。トランプの柄をあしらった書き割りを背景に立つ2人。スタジオは狭く、客との距離が近い。ステージに対して客席が横向きになっていて、ちょっと違和感があるのは、おそらく正面方向に別のメインステージが組まれているためだろう。


(同上)


この日もゴールドの衣装で、フルコーラスを2分45秒で熱唱。映像には姿は映っていないが、観覧者の中に親衛隊の男性ファンがいるらしく、歌の間中、「ミーちゃん!」「ケイちゃん!」などと合いの手を入れる、いわゆるアイドルコールの声が聴こえる。ホールでの収録ではそんなに気にならないのだが、スタジオが狭いせいか、その大声がやたらと目立つ。客席の女性たちがお互い顔を見合わせて、「あれ、何?うるさいわね」みたいなことを言っているようにも見える。


(同上)


(同上)


(同上)


映像的に面白いのは、2コーラス目の前半で、ハンディーカメラがローアングルでミーちゃんケイちゃんに迫り、さらに背中まで回り込んでいることだ。2人にこれだけ接近した映像は珍しく、ドキッとさせられる。スタジオの狭さを逆手に取った演出と言えなくもない。


生放送、狭いスタジオ、横向きの客、親衛隊の大声、ぶつかりそうな距離まで攻めてくるカメラマン。これらを全く気にする様子も見せず、いつものように堂々と歌い踊る2人、やっぱり肝が座っている。


【19】78年4月17日(月)放送「NTV紅白歌のベストテン」 ※メドレー


以前の記事にも書いたが、この日の「紅白歌のベストテン」の新聞ラテ欄は、<サヨナラ!ピンク・涙の日本最終公演‼︎>というものだった。実際には、4月21日〜22日にアメリカ・ラスベガスでコンサートを行うことになったピンク・レディーが、渡米の前日に当たるこの日、「紅白歌のベストテン」の生放送のステージに立つというだけの話なのだが、4月4日にキャンディーズがラストコンサートを行って解散したばかりだったので、こんな思わせぶりなフレーズになったのだろう。



この日の放送はピンク・レディーの壮行会のような位置づけだった。主役のピンク・レディーは当然3月25日リリースの新曲「サウスポー」を歌ったはずだが、その歌唱映像はDVDに収録されず、代わりにこの時歌った「UFO」を含む短いメドレーが収録されている。


メドレーのラインナップは「ペッパー警部(英語版)〜ウォンテッド 〜S・O・S〜渚のシンドバッド〜ウォンテッド 〜UFO」となっている。これだけ詰め込んで、わずか1分5秒の短さ。ほとんどの曲がワンフレーズで、「ウォンテッド 」が2回あるうちの最初の方は「ウォンテッド !」の一言だけだったりする。


「ペッパー警部」の英語版は、<Sergeant Pepper>のタイトルで奈良橋陽子さんが以下のような英語詞を書き、この年、スイス、イタリア、ポルトガルなどヨーロッパのいくつかの国でシングルリリースされたものである。


Sergeant Pepper

She can kill you with her smile

Sergeant Pepper

She’s got the looks, she's got the brains, she's dynamite


最後の「UFO」は<♪くちづけするより甘く ささやききくより強く 私の心をゆさぶるあなた>の部分を歌ってから<UFO!>の決めポーズでメドレーを締めている。


78年4月17日放送「NTV紅白歌のベストテン」(「Singles Premium」DVD所収


(同上)


2人は「UFO」の衣装でメドレーを歌ったが、1月下旬から着ていたゴールドではなく、それ以前のシルバーの衣装を再び着用している。カチューシャ(髪飾り)が新調されていて、触角またはアンテナに似た左右の突起物がなくなり、代わりに左側に紐状の装飾がつけられている。


(同上)


ステージの背景には大きく<Pink Lady in Las Vegas>の文字。新聞の番組紹介では「ラスベガス公演のミニ版」を披露すると書かれていたが、実際のラスベガス公演では英語版の<Sergeant Pepper>も歌われていない。このメドレーはあくまでも番組用に準備されたもので、ラスベガス公演の中身を反映するものではなかった。ただ、お茶の間の視聴者の多くはこれを観て「そうか、ラスベガスでは『ペッパー警部』を英語で歌うんだな」と思い込んだに違いない。テレビって昔から罪作りだな。(続く)


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