国民生活センターは3月15日、「糖質カット炊飯器」を実際にテストしたところ、含まれる糖質(デンプン)の総量は「通常の炊飯の場合と大きな差はみられなかった」と発表しました (図は、IT Media Newsからの転用です)。

 

注目すべき点は、「同量の米を通常のマイコン炊飯器で炊いた場合に比べて水分が1~2割多い炊き上がりになったものの、含まれる糖質の総量に大きな差はみられなかった」という点です。

 

つまり、糖質カット炊飯器だと、柔らかいご飯が炊ける=量が増えるので、お茶碗1杯あたりの糖質は1~2割減る、ということになり、普通の炊飯器で水増しして柔らかいご飯を炊くのと同じってことです。

 

水増しで量を増やせばカロリーが減ってダイエットになるという、いわゆる「おかゆダイエット」と同じで、根本的に栄養素の吸収と代謝のメカニズムがわかってない人がやりがちな間違いです。

 

例を挙げて説明しましょう。

 

お茶碗1杯のおかゆと、同量の米を固めに炊いて作ったおにぎりを比較すると、糖質とカロリーは同じなのにおかゆの方が圧倒的に量が多いので満腹感があるように思えます。

 

ところが、おかゆは、胃での停滞時間が短いので満腹感は持続しません。消化吸収が早く、すぐに血糖値を上げるため、インスリン分泌も促進されて血糖値が下がるので、すぐに空腹感に悩まされます

 

一方のおにぎりですが、見た目が小さくてなんだか物足りない感がある反面、よく噛まなければいけないので、実は食べた感があります。胃での停滞時間もおかゆに比べて長く、固形なので消化吸収にも時間が必要なため、血糖値への影響も低く、急激なインスリン分泌も起こりません。さらに消化吸収されずに腸内細菌の餌になって体調を良くするレジスタントスターチも含まれます。

 

温かな柔らかいご飯は、おかゆと同様にあまり噛まずに食べられるし、胃での停滞時間及び消化吸収も短時間のため、固めの冷や飯よりも血糖値とインスリン分泌に影響する、つまり、糖不耐症のリスクを高める食品になります。

 

米飯は日本の大切な食文化です。とは言え、米が主食となったのはここ100年程度のことです。さらに言えば、温かいご飯を食べるようになったのは、三菱電機が1967年に保温機能と炊飯機能を備えた炊飯器を発売してからなので、始まったばかりの習慣です。

 

温かいご飯を食べる習慣とともに、糖不耐症がから起こる、糖尿病と心臓血管病が増えたのは、偶然ではないかもしれません。

 

昭和2年、東京日日新聞の連載記事として、食べものにうるさい32名の各界の方々から聞いた食通話をまとめた『味覚極楽』の中に、増上寺大僧正の道重信教氏の「飯は冷たいのに限る。炊きたての温かいのは飯そのものの味がない。」という話があります。

 

高い炊飯器を買う代わりに、香りの良いヒノキのおひつでご飯本来の味と健康効果を楽しむのはいかがでしょうか?