この質問をもらった時、さらりと答えてスルーするつもりだったのですが、調べるうちに、これは反感を買うかもしれないが、黙っていられないと思いブログにしました。

 

こうじ水は、この記事によると、星子尚美医師という方が提唱したもので、米こうじとミネラルウォーターだけで簡単に作れて、低カロリーで毎日続けやすく、「たくさんの健康・美容効果が期待できまる」そうです。

 

作り方は、乾燥こうじに50ー60度のお湯を注ぎ、数時間室温に置いた後に冷蔵庫で7時間おくとのこと。一日に500mlを目安に飲む、加熱すると酵素パワーが失われる、残った麹はスープにすると食物繊維が取れるなど、記事にはフシギな言葉が並びます。

 

結論から言うと、こうじ水はあやしい

 

麹はカビの一種で、50度以上で死にます。なので、本来なら麹の発酵で得られるビタミン類、美白効果のある麹酸、強い抗酸化力を持つエルゴチオエニンなどの栄養素は、例え微量に残留しているとしても、健康効果が期待できるほどの量をこうじ水から得ることは不可能です。

 

 

お湯を注いで室温で30度まで下げるという行為は、(中に糖分が入っているので)雑菌繁殖の原因になります。特に納豆菌のように強い菌は、60度程度のお湯では死なないので、繁殖に適した環境です。

 

米麹には食物繊維は含まれていません。100歩譲って、米麹に残留する、澱粉質分解からできたオリゴ糖類を水溶性食物繊維と呼んだとしても、発酵が止まっているので、たとえ摂取できたとしても微量すぎて健康効果は期待できません。

 

麹に含まれる酵素類は生きているかもしれませんが、酵素が反応するには30度以上の温度が必要なので、冷蔵庫では酵素反応は起こりません

 

そもそも「酵素パワー摂取する」という言葉がバカバカしい。

 

酵素はタンパク質でできているので、胃酸で壊されて効果を失います。つまり「酵素を摂取する」という考えそのものが非科学的です。胃酸は、食べ物に含まれる酵素などの「異物」を、ペプチドやアミノ酸のような「安全」なものに分解する「生きるために不可欠」なものです。

 

逆に野菜や麹の酵素が体に入れば、異物としてすぐに免疫反応(いわゆるアレルギー反応)が起こり、不快な症状がでます。

 

多くの方はこうじ水を甘酒の低カロリー版だと思って、機能食品としての甘酒効果を期待して飲むのでしょうが、全く異なります。

 

こうじ水は、せっかくの麹を殺して、、「乾燥麹に残留する微量の栄養素とともに、未知の雑菌を摂取する飲み物」であるのに対して、甘酒は、作り方によって成分が異なりますが、消化吸収がよく、滋養があり、優れた健康効果が期待できる飲み物になることができます。

 

学術論文によると、麹甘酒は、抗酸化力、長距離走選手の疲労軽減効果、肝硬変患者の生活の質の向上などが報告されていて、酒粕で作った甘酒では、高脂肪食負荷マウスにおける体重増加抑制及び脂肪組織蓄積の抑制,高塩分食による血圧上昇抑制,健忘症による記憶障害予防等が報告されています。

 

私のおすすめする麹の使い道は2つ。①ちゃんと発酵する、または②麹に含まれる酵素を活用する、です。

 

①ちゃんと発酵する

塩麹やみそなど、麹を生かしてじっくり発酵させると、さまざまな健康効果のある酵素反応が進むだけでなく、美白効果のあるコージ酸、強い抗酸化力を持つエルゴチオエニンなどが増えます。塩分なしで水と麹だけで発酵させると飲むだけではなく、化粧水にも利用できます。

 

麹は、37度付近で最も活発に繁殖します。室温でもゆっくりと繁殖しますが、50度で死滅します。この場合雑菌の繁殖が心配なので必ず煮沸滅菌したガラス容器と薬局で買える精製水を利用してください。ヨーグルトメーカーをお持ちの方は37度にセットして一晩、室温の場合は三日ほど発酵します。比率はお好みですが、失敗を避けるために、まずは1:1でやってみてください。残った麹は塩麹、糠床に利用してください。

 

②麹に含まれる酵素を活用する

麹は50度で死にますが、麹に含まれるでんぷんを分解して甘味を高める酵素と、タンパク質を分解してコクと旨みを出す酵素は、50度付近で活発に働きます。60度になると、でんぷんを分解が進んで甘味が増えますが、タンパク質を分解する酵素は不活化します。

 

食品にコクを与え,腸内ビフィズス菌の増殖に貢献する甘味料として使う場合は55度から60度で発酵、吸収の早い有利アミノ酸を増やしてスポーツドリンクを作りたい場合は50度での発酵がおすすめです。必ず容器の煮沸滅菌と精製水の使用をお願いします。

 

最後に、これを飲めば痩せる、血圧が下がる、血糖値が改善するといった魔法の飲み物は世の中に存在しません。麹の発酵食品は日本の誇る素晴らしい食文化ですが、インターネットや雑誌に溢れる,まことしやかな効果・効能は、ほとんどが科学的な根拠が乏しい乏しい、あるいは全くないケースも多いのが現状です。

 

頻繁に雑菌を摂取していると、知らないうちに食中毒や食品過敏症が発症するケースがあります。健康被害が出る前に責任ある行動をとってください。