日本では甘いお菓子は子供のカロリー補給に必要と本気に思っている人が今だにいるようですが、それは大間違いです。特に幼児の砂糖中毒は笑い事では済まされません。
2019年の米国小児科学会は、「2歳以下の子供に加糖した食べ物や飲み物を与えないこと。2歳を超えても1日に摂取する砂糖の総量は25g以下にするように」と発表しました。
砂糖25gはスティックシュガー8本分なので、「うちではそんなに砂糖を食べさせてない」って思うかもしれないですが本当にそうでしょうか?
例えばあんぱん1個、どら焼き1個、ショートケーキ1個で25gを超えてしまいます。
調味料に含まれる隠れ砂糖(例えば、ケチャップ、甘露煮、サラダドレッシング、焼肉のタレ)、食パン、レトルト食品、ラーメン、冷凍のピザ、照り焼きや蒲焼もほとんど加糖されているのでスイーツを食べなくても結構な量の砂糖を摂取しています。
さらに、米国小児科学会は100%果汁ジュースの量も制限をつけています。その基準は以下の通りです。
1歳以下:0ml
1−3歳:100ml以下(料理用計量カップ半分以下)
4−6歳:180ml以下(米の計量カップ1杯分以下)
7−14歳:240ml以下(紙パック1/4以下)
ここで注目していただきたいのが1歳以下の乳児に果汁はダメだということです。離乳期はジュースではなくすりおろしたリンゴなどの本物の果実を食べさせてください。
なぜ100%果汁ジュースの量も制限があるのかというと、ジュースには相当量の砂糖(と果糖)が含まれるからです。例えば、コップ1杯(200ml)の果汁100%のオレンジジュースには22g、ブドウジュースには29g、リンゴジュースには24gの砂糖が含まれています。
ですから、子供が朝食にケチャップをかけたオムレツ、パン、コップ1杯のオレンジジュースを飲めばそれで1日の許容量を超えてしまうため、健康被害が出る確率が上昇します。
なんだか厳しすぎるような気がしますが、それだけ私たちの食生活が砂糖で「汚染」されているということです。
ではなぜ米国小児科学会はそんな制限をしたのでしょうか?
その背景には、将来肥満や糖尿病になるリスクの増加だけではなく、子供のうつ病の増加があります。
幼児期から砂糖(果糖)に慣れた脳は、インスリンというホルモンの反応しなくなり(インスリン抵抗性)、エネルギー源の血糖を取り込む力が弱まるだけではなく、脳細胞を増やしたり、細胞をつなげて記憶のネットワークを作る力が弱まります。
そのため食欲などの感情を制御する力が弱まり、満足度が下がり、満たされない気持ちが高まる上に社会生活に必要なスキルや認知能力も下がることがわかっています。
スタンフォード大学が9−17歳の肥満でうつ病の42人の脳を調べたところ、海馬(脳の記憶や空間学習能力に関わる脳の器官)と前帯状皮質(報酬予測、意思決定、共感や情動といった認知機能に関わる脳の器官)の容量が低いことが明らかになりました(参考文献)。
甘いものを欲しがるのに食べさせないのはかわいそうと思う方も多いと思いますが、そうしてしまったのは環境のせいです。環境にはあなただけではなく、孫に甘い祖父母も含まれるので「変えるのは無理!」と思うかもしれません。
でも今、環境を変えなければ子供の脳のインスリン抵抗性は進行します。そのほうがかわいそうなのではないでしょうか?
脳のインスリン抵抗性は食事と環境で年齢に関わらず必ず改善します。それによって感情の制御、満足度、幸福度、認知機能などが改善することもわかっています。
皆さんのご意見をお待ちしています。