皆さんもRunner’s high(ランナーズハイ)という言葉を聞いたことがあると思います。ランナーズハイとは、苦しさを我慢して走り続けるとある時点から生じてくる、快感・高揚感を表す言葉です。

 

最近までランナーズハイは、β-エンドルフィンという快感ホルモンにより引き起こされるのではないかと仮定されていましたが、ついに脳内麻薬がある受容体(mu-opioid receptor: MOR )に結合することで起こることが証明されました。

 

MORは3つある脳内麻薬受容体の1つで、MORにカンナビノイド系の化学物質が結合すると高揚感や幸福感を作ります。マリファナで痛みが和らいだり、悲しみが和らげられるのはこの受容体と結合するからです。

 

誰でも運動すると脳内麻薬が分泌されるのですが、誰もが気持ち良くならないのは周知のことです。その理由は「結合可能なMORがどれだけあるか?」にあります。

 

苦痛を和らげたり、幸せに感じたりするためには、分泌だけではなく、分泌された物質がMORに結合しなければならないので、MORが少ない人はランナーズハイになりにくいのです。

 

さらに脳内にMORが少ない人はうつ病や不安症になりやすいことも同じ研究で明らかになりましt。

 

つまり、運動しても苦しいだけで爽快感や高揚感が得られない人は、うつ病や不安症になる可能性が高いので予防策を取ることが重要なのです。

 

「走ったことあるけど辛すぎて2度としたくない」という人にお勧めの運動は強度の高いインターバルトレーニング(HIIT)です。HIITは1時間以下の短期間お運動で、MORの結合力を高めることが知られているので、もしかしたらランナーズハイが得られて運動好きになるかもしれません。

 

ゲーム性のあるテニス、卓球、サッカーなどやボルダリング、ヨガ、ダンスなど、別の喜びが得られる運動も良いでしょう。

 

 

一方、慢性痛のある人、総合失調症の人、喫煙者、麻薬中毒者はMORが少ないことがわかっています。有酸素運動はこれらの症状の改善に効果的ですが、辛い症状のある患者さんにやる気を出させるのは大変です。

 

今の所、MORを増やす方法は見つかっていませんが、近い将来きっと「ランナーズハイ」になれる「薬」が発明されるかもしれないです。