どうしても話が噛み合わない人はいませんか?説明しながらも、「この人絶対理解してないなー」とか、「なんでそんな馬鹿げたダイエット(トレーニング、インフルエンサー、資格)を信じるんだ?」と思うことありませんか?


日本語でググると、自称専門家が発信する「あなたも1億稼げる」、「〇〇で10キロ痩せた」、「XXでガンが治る」などのサロン、本、商品がヒットし、またそれを信じる人が「拡散」させてインターネット上での「事実」が作られています。

 

なぜそんなことが起こるのでしょうか?

 

2002年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンによると、人間には2つの思考回路があって、早くて短絡的な思考、システム1と、腰が重いがやり出したら精査して決断する思考のシステム2があることが原因していると著作の中で説いています。

 

この2つの思考回路はどちらも脳がオーバーヒートしないために重要です。

 

例えば、歩く、座るといった基本的な行動を無意識にできるのは無駄に脳機能を使わない直感力のシステム1のおかげです。重要な書類作成や会議で発表する時は、脳機能をフル活用するシステム2が主導権を握ります。

 

ではネット検索ではどうでしょうか?「奇跡の」、「トンデモ」、「ヤバイ」、「カリスマ」といったよく見る形容詞が自分の興味のある「痩せる」、「時短」、「節約」などについていると、システム1が好意的なバイアスを作ります。

 

そこにさらに「医師がすすめる」、「あの有名モデルが実践する」などの社会的に信頼がおける職業、よく見かける情報がつくと、本来論理的であるはずのシステム2が「これがいいようだ」と錯覚して根拠のない決断をします。

 

つまり、「モデルの〇〇さんも実践。医師がすすめる奇跡のダイエットがヤバすぎる!□□□で10キロ痩せた!!」というTwitterを見ると、つい錯覚で良い情報と感じ、記事を読まずに拡散してしまうというカラクリです。

 

このカラクリは政治家からスイーツやファッションのトレンド作りにまで使われています。雇われたインフルエンサーやライターはあなたのシステム1を刺激する言葉や映像で様々な錯覚を作り上げ、拡散や炎上を作ります。

 

「私って直感の人だからー」なんて言っている人はもはや自分で判断することをやめて(システム2を起動させずに)誰かの指示通りに行動している「指示待ち人間」なのです。

この写真を見せられて、赤と黄色のパプリカ、どちらがレアか?という質問を受けるとどう返答しますか?

 

指示待ち人間は説明に興味を持ちません。「なぜそうなるか?」よりも「何をすれば良いか?」を待っているので、「最も騙されやすい消費者」です。

 

また、「なぜそうなるか?」を知らないため、同様の状況に対応できないし、同じような手口で騙されます。詐欺被害者が別の手口の詐欺にまた引っかかってしまうのはそのためです。

 

論理的思考は何歳になっても鍛える反面、使われないと若くても退化して、指示待ち人間に成り下がります。しかもこのカラクリの怖いところは、錯覚に惑わされたシステム2の思考で判断するので、自分の意思が操られていることに気付かず、自分で決めていると勘違いしてしまうことです。

 

今あなたが正しいと思うことの「根拠」と「信憑性」を考えてみてください。正しいと証明できますか?根拠が不確実な商品(本、サプリ、お取り寄せなど)に対価が見合っているでしょうか?優秀そうに見える部下が本当に結果を出していますか?オピニオンリーダーの発言から形容詞と曖昧な言葉をとったら何が読み取れますか?

 

面倒なようですが、このような自問自答の反復練習で情報を精査する習慣をつけるとシステム1の感度が高まり、システム2が起動しやすくなります。「あれっ?」て思う思考力でネット上での自立を守りましょう。