去年最も興奮した本、「Lifespan」の日本語訳が発売されたというニュースを聞きました。翻訳者によっては読みづらいかもしれないですが、現役の科学者が書く「本当に科学的なアンチエイジング」の本として、断然お勧めします。

 

この本はハーバード大学の教授であり、複数のバイオテックカンパニーの創業者であるDavid A. Sinclair が、ユタ大学のジャーナリズムの教授のMatthew D. LaPlanteとタッグを組んで書き上げたものです。

 

Davidは「老化は病気なので予防も治療もできる」という考えを持つ超エリート集団の一員で、医学会の救世主、とかスーパースターとかと呼ばれる人です。Mattが、Davidの発見や考えに社会問題や「老化しないで生き続ける人が増える上で生じる問題点」も盛り込んでいて、遺伝子の辺りを読み飛ばしてもSFの世界が現実化しつつある感じを楽しめると思います。

 

彼の考える老化は、インフォメーションセオリーです。これについては以前のブログ、還暦まであと5日、老化の仕組みとその対策に書いています。

 

この本の日本語訳が出て嬉しい反面、これを利用して儲けようとする人たちが出てくることを危惧します。というのは、この本ではある種のサプリメントや処方薬が「老化という病気の治療に役立つ」ことが紹介されているからです。

 

NMN(NDH+の前駆体)や糖尿病治療薬Metforminは70代以上の人を対象とした臨床試験で効果を出していますが、これらの薬で得られる効果は、前述のブログで紹介した食事法や運動で得られます。

 

アメリカでは、「NMNの注射で若返り!」なんて広告もあるから日本でも絶対その手のクリニックが出てきます。

 

もしあなたがNMNやレスベラトロールをネットで見つけても本物かどうかは疑問です。たとえ本物でも、NMNの場合、臨床試験で効果があった量(毎日1−1.5g)を続けるには相当な出費となります。サプリメントなので効果が出なくても返金は求められません。

 

あなたが運動のできない体で、主治医がMetforminを処方してくれるなら効果が期待できますが、運動をする方が薬を飲むよりもはるかに多くの若返りメリットがあります。

 

この本では、薬以外の方法も紹介しています。一般的に体に悪いと考えられること、例えば、寒さを我慢する、食事を抜く、タンパク質を減らす、カロリーを減らす、などが科学的には老化の速度を遅くすると書かれていたと思います。

 

この本は、アメリカでは去年の9月発売であったにもかかわらず、パンデミックが近い将来必ず来ることを予言し、その対処法も表しています。感染症は老化を進めます。

 

さらに、将来は「老化の予防接種」が実現すると予言しています。子供の時に摂取して、中年になると摂取された「必要な情報を持つウイルス」が目覚めて遺伝子をゾンビ細胞に送り込み、若返りが始まるというのです。

 

もし英語でもよければ、アメリカのアマゾンからオーディオブックが買えます。普通はプロのナレーターを使うのが一般的ですが、著者のDavid自身が読んでいて、彼の伝えたいところがしっかりと強調されています。また章と章の間で、科学者のDavidにMattが質問とかしていて面白いです。