3月から4月にかけてのシカゴでの調査で、5歳未満の感染者が大人の感染者に比べて10−100倍のウイルスを保菌している、つまりは5歳未満の幼い子供が感染した場合、ウイルスをより多く増殖して家族や先生、兄弟に感染させる力が高いという論文が発表されました。

 

みなさんがよく耳にするPCR検査、実はRTーPCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)という方法です。新型コロナウイルスはいわゆるRNAウイルスの中まで、DNAを持っていません。そこで検体の中にあるとRNAをDNAに逆転写して、PCRという連鎖反応サイクルを繰り返し、新型コロナウイルスに特化したDNAを倍増させ、検知できる量に増やして陽性か陰性かを調べているのです。

 

ウイルスは生物では無いので自己増殖できません。ウイルスが増殖するためには誰かの細胞の中に侵入して、細胞内の仕組みを使う必要があります

 

PCRではDNAのコピーを1反応ごとに倍にします。通常20−40サイクル繰り返すので、元のDNAを20−40乗の数に増やすことで見える化するのです。

 

例えば、新型コロナウイルスが検体の中に存在していても、細胞の中に侵入していなければPCR検査で検知可能なほどのDNAが作れないため陰性になります。

 

細胞に侵入して増殖し、増殖したウイルスが別の細胞に入って増殖を繰り返してウイルスの数が一定以上に増えると検知可能な量のDNAが得られるので、陽性と診断されます。

 

増殖が進んでいる検体から作られるDNAの量は、増殖が限られている検体より多いので、少ないPCRサイクルで検出可能になります。今回の研究では、145人の陽性患者から得たDNAを、PCRサイクルを何度繰り返したら検知できる量になるかを比較しました。結果は以下のとおりです。

5歳未満の感染者の46検体の平均は6.5サイクル(4.8-12.0サイクルの幅)、5−17歳の感染者51検体の平均は11.1サイクル([6.3-15.7サイクルの幅)、18ー65歳の感染者48検体の平均は11.0 サイクル(6.9-17.5サイクルの幅)なので、5歳未満の検体にはより多くのDNAが存在したことがわかります。

 

この結果から、5歳未満の感染者は大人のおよそ10−100倍量の新型コロナウイルスを呼吸器官に保持していたと試算されたのです。

 

アメリカは離婚率が高く、離婚後も両親ともに親権を持つので、子供たちは2つの家を数日ごとに行ったり来たりします。つまり、自粛下でも日本の子供より行動範囲が広く、少なくとも2つの地域で人々と接触します。

 

もし幼稚園・学校が再開すると、幼児を媒体として複数の世帯へ、複数の世帯から保育所、学校、職場へと感染が広がり、さらにパンデミックが拡大する恐れがあると考えられます。

 

日本は状況が異なりますが、幼児がウイルスの増殖媒体になることは同じです。あなたのお子さんがスーパー・スプレッダー(超感染拡大者)となって辛い思いをしないように、マスクと手洗いを習慣化させてあげてくださいね。

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