イメージはRunner’s worldからの転用

 

ランナーからの質問です。レース後に配布されるチョコレートミルクは飲んだ方が良いかどうか?皆さんはどう思いますか?

 

もしあなたが17歳のアスリートで体調も良く次の日も走る場合は、同量以上の水と一緒に飲むなら結構いい回復食と言えます。というのは、チョコレートミルクにはスポーツドリンクより多くのカロリーとナトリウムなどの電解質が含まれる上に、完全タンパク質と言われる牛乳の栄養も入っているからです。

 

ココアには健康効果のあるビタミンや抗酸化物質、食物繊維が多く含まれています。

 

チョコレートミルクの原料であるココアは量にもよりますが、含まれるマグネシウムが回復に役立つかもしれません。一方、ココアのポリフェノールは走ることによってできた酸化ストレスを軽減するので、筋力や血管増加効果を抑制する可能性は否めません。

 

もしあなたが大人のランナーで体調も良く走りきり、その後打ち上げで飲んだり食べたりする予定があるならチョコレートミルクよりスキムミルクをお勧めします。というのは、1パック(8オンス=237ml)にスポーツドリンクより多い20g前後の砂糖または果糖が多いコーンシロップ(HFCS)が入っているからです。

 

砂糖はブドウ糖と果糖でできた2糖類です。液状の砂糖は小腸から即吸収されてブドウ糖は血糖値の回復のために使われますが果糖はすべて肝臓に送られます。果糖は酵素反応のために肝臓内のATPを消費して細胞内のリン酸不足を引き起こします。その結果尿酸を作る酵素(AMP deaminase、大人には多い)を活性化し、血中尿酸値が上昇します。

 

ビールはイーストで作られるのでたくさんの核酸(=プリン体)が含まれています。

プリン体の取りすぎは痛風だけではなく、高血圧、内臓脂肪を増加します。

 

脱水した体の中で尿酸値が上昇すると、痛風の危険性が高まり、血圧も上昇します。そこで塩分の多いおつまみでプリン体が多いビールを飲んで「乾杯!」したらどうなるか?賢いみなさんならお分かりですね。

 

なぜスキムミルクが良いかというと、脂肪がなく胃の浸透圧にもあまり影響しないため、弱った胃腸でも消化吸収しやすいからです。しかもスポーツドリンクよりも多くの電解質を含み適度の乳糖があるため水分補給効果が高く、回復を助ける完全タンパク質を供給します。チョコレートミルクと違って果糖を含まないことから肝臓に負担をかけず、摂取した必須アミノ酸を有効に使えると考えられます。実はチョコレートミルクが回復に良いという考えのほとんどはスキムミルクを使った研究に基づいています()。

 

それでもどうしてもチョコレートミルクが飲みたい人は、一気飲みではなく、一口ずつ時間をかけて飲んでください。そうすれば肝臓も果糖を酵素分解して解糖系で使う時間があります。

 

配布されるんだからいいんだろうと多くのランナーが思っていますが、ご自分の体調やその後の行動を考えて「飲むか飲まないか?」をご判断ください。

 

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