木からアルコールを作る 〜木のお酒〜 | 西新宿 Bar BenFiddich(ベンフィディック)

西新宿 Bar BenFiddich(ベンフィディック)

BenFiddichの店名は店主の鹿山博康から由来【Ben】→【山】【Fiddich】→【鹿】
畑を持つ農家バーテンダーであり『Farm to glass』を提唱
日本在来種の自生する草根木皮をもカクテルに変える新しい可能性を模索
アブサン、薬草酒、古酒がゴロゴロ転がるBar

お酒の原料といえば万国共通で
紀元前の時代から現代の2020年に至るまで
穀物原料もしくは果実原料である。
(例外で乳製品)



例えば

ワイン→果実原料(ブドウ)
日本酒→穀物原料(米)
焼酎→穀物原料(芋、米、麦等)
ウィスキー→穀物原料(大麦、トウモロコシ等)
ウォッカ→穀物原料(小麦、ジャガイモ、大麦)
ブランデー→果実原料(ブドウ)
カルヴァドス→果実原料(リンゴ)
etc.....
書き上げるとキリがないのでここまで




それはお酒のアルコールは微生物の酵母が発酵によって糖を原料として作り出すわけで
糖分を含む甘い果実原料は容易にアルコールとなる。また穀物原料の主成分であるデンプンは
麦芽や例えば麹に含まれるアミラーゼという
酵素によって分解されに変換しアルコールとなる。



実は木も糖の集合体

 


木材の成分の半分はセルロースでできている。
セルロースの成分が樹体を支えているのだ。



因みにセルロースブドウ糖から構成。
とゆう事はデンプン
アルコールを作る事ができるのだ。



然しながら今迄に木本植物から醸し
アルコールを作った歴史は存在しない。
それは木に含まれるリグニンという
成分が木のセルロースの成分の細胞壁周辺を固く固めているので醸すことができなかったのだ。

木本植物は
セルロースが50%
ヘミセルロースが20%
リグニンが30%
で構成されている


このリグニンの成分の細胞壁の厚さが
0.004ミリ〜0.002ミリ



よって0.001ミリで木材を破砕する事により
リグニンの細胞壁を壊し
セルロースを糖に転換できる技術がわかった




この技術を確立しこの度世界初として論文を
世界へ発表したのが
茨城県はつくば市にある
国立研究開発法人森林研究・整備機構
森林総合研究所である
なので鹿山はいてもたってもいられず
森林総合研究所様へ突撃

【上写真左から】
杉の蒸留酒
白樺の蒸留酒
桜の蒸留酒
山桜の蒸留酒
水楢の蒸留酒
【下写真左から】
杉の発酵液
白樺の発酵液
桜の発酵液
山桜の発酵液
水楢の発酵液



(注)まだ試験段階ということで
国の取り決めで部外者の僕は飲用はできず
香りのみのテイスターとなる

例えばミズナラの発酵液などはもはや香りがウィスキーであった。バーテンダーの僕からしたらミズナラから醸し蒸留した蒸留液をミズナラの樽に熟成した商品が誕生したらもはやもうミズナラでしかないというなんかもう常識が覆りワクワク感しか生まれない


以下、僕の中の官能試験(香りのみ)



①杉→もはや醸し液も蒸留液も杉のあの特有の木部の香りが生きている。森林総合研究所の方も特に杉には力を入れておりいま日本の人工林として溢れている杉の間伐材の新しい利用法を模索している。


②桜→イチゴのような甘い香りが漂うフルーティーな香り


③黒文字→黒文字特有のリナロールの爽やかな
香り成分があり、これも醸し液、蒸留液共に
黒文字をそのまま連想させる香りであった


④白樺→まるでジンの主原料のジュニパーベリーの野生味ある香りが強く鹿山好みだった


⑤水楢→発酵液の香りはウィスキー、蒸留液も
ウィスキーの樽材の香りがする。
穀物原料からできるウィスキーは木の樽に熟成させてあの香り味わいになるというのに
これはもはや樽に熟成させなくても香りがウィスキーという事実


結論、全ての木材から醸したものはそれぞれの木の特性の違いが如実に現れる。因みに砂糖を使わないで木のみで醸した場合どれくらいアルコールが作れるのか



木のみで醸した場合はアルコール度数は約2%のみ



思った通り、そこまで木の木部がそこまで糖分を含んでいるとは考えられないのでやはり木のみの醸しでは2%が限界。
ただ、森林総合研究所の研究員の方曰く
直径30cm、長さ4mのスギ材を原料とした場合、アルコール度数35%の「木の蒸留酒」を750ミリ詰めでおよそ50本作ることができる。材木屋で売ってる大きな杉一本で
750ミリボトルが50本作れるとなると
原価はかなり安い




ここで簡単に木材からアルコールを
作る方法を記載したい

①原料木材を調達

②粗粉砕

③水と粗粉砕の木粉を合わせアルコール生成を阻害するリグニンの細胞壁を破壊
0.001ミリで木材を破砕する事によりセルロースが糖化発酵できるようにする。右のセラミックビーズというビーズを使い真ん中の荒粉砕の木粉と水を合わせ水中で破砕。左赤印のように
ゲル化状にする。0.001ミリ以下の木粉となる

④そこにセルラーゼという分解酵素と
酵母を入れ発酵させアルコール2%の醸し液を作る

⑤蒸留機で2回蒸留しアルコール度数35度前後のアルコール回収。
これにて完成だ。






これで木のみで不必要な熱を加えないで
香りを殺さず飲用目的のお酒を作る事を可能にしたのが森林総合研究所の研究所員の方々で
先日その論文を世界へ発表した

これはすごい事で

果実原料でもない穀物原料でもない

木本植物である木から

飲用目的のお酒を作るということ。

木がお酒になる嗜好品としての魅力の発見だけでなく、間伐材や未利用材などの新しい国産需要、日本の林業の活性化にも繋がるだろう

早くBenFiddichでも取り扱いたい