講談社BB読書記録 No.5 | BLOGkayaki1

BLOGkayaki1

読書記録、環境問題について


『なぜヒトの脳だけが大きくなったのか』濱田穣/2007.1

 人類進化の最大謎に迫る一冊、と思いきや。何故か章の結論はいつも教育論や世相に話が飛ぶ。このハチャメチャさが、研究者のご愛嬌でございましょうか。

 ヒトの脳は何故大きくなったのか。エネルギーの摂取量の増大が為か。いや、脳が大きくなってこそ摂取量の安定化に繋がったともいえる。直立二足歩行のためか。いやこれも、道具を使うための脳の発達が先とも言える。
 要するに、どちらが先か、というのはまだまだ分からない。はたまた、同時に進化してきた「共進化」とも考えられる。著者は手と脳の関係を共進化と捉え、脳と食料、直立二足歩行に関しては否と唱える。
 個人的にそれらは共進化と思っているのだが、確かに一概には言えないようなところもある。研究者が難しいといっているのだから、素人が頭をひねったところでどうしようもないけれども。だがこうして、人類史の謎を解くというのは実に心ときめくものである。

 脳進化の中で、石器を通した「文化」の話が出てくる。これもまた実に興味深い。
 「文化」とは何か。このコトバは実に幅広くて、あやふやなものだけれども、その根源を、「道具」と「脳進化」に見るのは意義があるように思える。
 しかし滑稽に思えたのは、本書ではタイに生息するカニクイザルの生態研究が出てくるのだが、「石器を使っている」サルを観察しては驚く人間、という構図である。
 文化の始まりでも見るようで面白そうなのだが、しかし一方で、サルをバカにしているような気すら感じた。そのギャップというか、ズレというものがおかしく感じたのだ。

 念のために補足すると、著者は本書中で、サルはヒトより下等ということを否定している。
 サルとヒトは同じ祖先で、そこから枝分かれして進化してきたので、サルヒトは「(生物界の中では)もっとも最近の共通する祖先」の関係にあるとしている。そうだ、サルヒトはそれぞれに進化してきたのだ。サルからヒトへ、ではないのだ。