ある物語 | 手が知っている異界の彩~絵師・緋呂 展示館~

手が知っている異界の彩~絵師・緋呂 展示館~

神・仏・天使。そして、「あなた」の光を、緋呂が描きます。陰陽併せ持つ「人間」の中に、すべては在る。
描くべきもの、進むべき道。すべては、手が知っています。

山中をひたすら歩いていた。


私は、この世の真理を求めて旅をするものである。

人の世はあまりに醜く、救いがない。

そんな風に思っていたこともある。


私は、人が「素晴らしい」としている物を捨て去って

自分だけの本当の価値を見出す為に、旅を始めた。

衣服はみすぼらしいが、心は以前よりも強くある。

向かい風が衣服を揺らす。

それが、なんとも心地いい。


昔、とある寺にて、僧をしていた。

寺というのは、一見すばらしい教義に従う人の集まりの様に見える。

しかし、少なくとも、私の居た場所は、そんな場所ではなかった。



なぜこの様な人間が?

と思う様な者が、権力を持っていた。

本来であれば人の世の救いになるであろう素晴らしい教えが

寺の人間によって汚されている。

その事実が許せない。


しかし、自分には何もできない。

私は無力だ。

怒りがこみあげ、心が震える。

「このバカどもめ。」


本当に見下げ果てる。

しかし、この場所にいるのが

嫌だからといって、すぐにやめてしまうのもどうなのか?

という思いもあり、しばらくは、その寺に居た。


結局は、そこに、私が思う様な素晴らしい物事はなかった。

ここには素晴らしい物は一切ない。

あえていえば、それを経験した事に意味があったのだろう。


だから私は自分の道を探す旅に出た。


山中を歩く。

自問自答。答えが出ない。少し頭が整理される。

日が落ちる。


山中で、夜を越す。


中々に恐ろしいが、慣れれば、どうということはない。

何事も慣れれば・・。

・・・しかしそれでいいのか。


意識が朦朧とし、眠りに入った。


夢の中では私は岸壁にて、夕日を背にしている。

そこに、滝壺から、大きな青銅色の龍が現れる。


私は、きっとこの龍は答えを知っているに違いないと感じる。

「本当に素晴らしい何かはどこにあるのでしょうか?」

と聞く。

「私に、答えを求めても意味はない。」

と龍は答えた。

続けて

「もともと、お前の中に神が居る様に見える。」

と言った。



私は、その時は、その言葉の意味がわからなかった。

神は・・いるのか?


神とはなんだろう。

ただの夢だったのか。

しかし、確かに神としか思えない様な、「何か」はあるのかもしれない。


私は、その答えこそ、真理に至るものと考えた。


その後、様々な神秘具を揃え、玉を集め、各地を放浪した。

時に、体の中に、確かに、神としか思えない「何か」

を感じることはある。


私の真理追求の旅は、神との対話。

気づきの連続。

何度も新境地に至り、その度に神に感謝する。


私にできる事は、神に通じる事。

人の世は、自分の力で及ばぬ事もある。

しかし、私の神は、私にいくらでも答えてくれる。


もはや、昔に比べ、神が側に実感できる様になりつつある。

私にとっての神は、他の誰かが言う神とは少し違うのかもしれない。

しかし、確実に神としか思えない何かを実感する時がある。


いつの間にか、真理を探求しているという事を

忘れていた。


真理に近づいたからだろうか。




BY ゆういち




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これが何かは、また後ほど。


$異界への扉をひらく神との対話 心の闇を照らす天上画