むすんで、うみだす | 「言葉」をミカタに、人生に「物語」を!

「言葉」をミカタに、人生に「物語」を!

コピーライター&作家の川上徹也が 
心に刺さる「言葉」、心を動かす「物語」の
生れる舞台裏を公開!

あなたの人生を変えるのは、
あなたの「言葉」だ。

大学の話が続いた流れで、

2015年に携わらせていただいた

京都産業大学の川上コピー

についてご紹介します。

 

 

京都産業大学は、

京都市北区上賀茂にある私立大学。

1965年に世界的な宇宙物理学者で

当時京都大学名誉教授だった

荒木俊馬氏によって創設されました。

 

2015年の梅雨頃、

秋に迎える50周年に向けての

新スローガンについて相談を受けました。

 

その半年程前に

当時、副学長だった教授が、

私の講演を聴きにきてくれていたことが

京産大とむすばれたきっかけでした。

 

実は新スローガンについては、

大学はある大手広告代理店と、

1年近く何度もやりとりをし、

何度も提案を受けていたとのこと。

しかし、どうもしっくりくるものがなく、

期限は迫っているしどうしようと

川上に相談いただいたという経緯でした。

 

(実は広告代理店に頼んだけど、

 どうもうまくいかず、

 セカンドオピニオン的に

 川上を訪れる人は非常に多いんです)

 

それまでの私は

京都産業大学に対して

ほとんど知識がなく、

京都の北の外れにあり、

関西の著名芸人やタレントを

多数輩出している

というイメージがあるくらいでした。

 

しかし初めて

京都産業大学に訪れて

本当に驚きました。

 

まずその場所です。

神山キャンパスは、世界遺産の

賀茂別雷神社(上賀茂神社)の北隣。

神社の御神体とみなされる

「神山(こうやま)」とも隣接しています。

(神社好きとしてはたまらんです)

 

山の斜面に作られているため、

高低差が非常に大きいのが特徴です。

バスターミナルを降りると、

長い長いエスカレーターがあり、

それを登り切って眼下を見下ろすと、

京都盆地の北側が一望できます。

 

特に最初に訪れた時には

霧がかかっているような天候だったので、

まるで「洛北のマチュピチュ」

と名づけたくなるような

幻想的な風景が広がっていました。

 

キャンパスの一番高い場所には

神山天文台があります。

天文台があるキャンパスも

珍しいので非常に目立ちます。

創始者が宇宙物理学者であったことから

2010年4月に設置されたものです。

 

神山天文台 京都産業大学サイトより

 

 

京都都産業大学の学名の由来を伺うと、

創始者が「産業」を「むすびわざ」と説き、

 

「新しい業(わざ)をむすぶ

  =新たな価値を生み出す」

 

という期待を込めて

名づけたものであることを知りました。

 

私は「むすびわざ」という言葉の中にある

「むすび」という言葉に注目しました。

 

むすびの語源は

「むすひ(産霊・産巣日)」で、

天地・万物を生み出す

神秘的な力を意味します。

 

「むす」は「産す」で「産む」という意味。

 

考えてみたら、私たち人間はもちろん、

他の生物も、この世に存在している物質も、

すべて元を正せば

何かと何かがむすばれて産まれたもの。

 

古事記の冒頭で登場する

造化の三神のうち、

二神も「むすびの神」です。 

 

天之御中主神(あめのみなかぬし)

高御産巣日神(たかみむすび)

神産巣日神(かみむすび)

 

 

この 「むすび」という言葉

を使わない手はない。

しかもこれは後から

付け加えたものではなく、

京産大の創設時からの精神なのです。

 

さらにいうと、隣接している上賀茂神社は、

平安時代から、かの紫式部も

「縁結び」のお祈りのために

足しげく通った場所です。 

まさに「むすびの聖地」

「むすびのパワースポット」とも言えます。

 

私は、初めての訪問の時に、

この京都産業大学が持っている

一番の価値をあらわす

「むすび」「むすぶ」という言葉に

改めてスポットライトを

当てるべきだと直感しました。

  

そして提案したのが、

 

むすんで、うみだす。

 

という川上コピーでした。 

 

「むすぶ」の中にも

「うみだす」という意味はありますが、

より多くの人にわかってもらうために、

このようなフレーズにしました。

 

 

「むすんで、うみだす」ものは色々です。

 

「学問」と社会・企業・自然をむすぶ

「京都」と日本と世界の諸地域をむすぶ 

「むすぶ人」をうみだす 

 

そして求める学生像としては

 

むすぶ人になろう

 

というフレーズを提案しました。

シンプルでないと学生に浸透しない

と考えたからです。

 

 

これらの提案は非常に好評で、

執行部に満場一致で

受け入れていただきました。

 

「神山ST2030」の

メインコピーとして採用され

2030年まで使われことになりました。

 

そして2015年11月の

国立京都国際会館の大ホールで

開かれた50周年式典で発表されたのです。

 

   

 

私自身もこのような大ホールで、

大々的に自分が書いたコピーが

発表されるのは初めてだったので、

ちょっとドキドキしました。

 

その後、
ロゴ上のタグラインとしてはもちろん
交通広告でも使われました。

 

   

今でも、

大学のサイトを訪れていただくと、

トップページに

「むすんで、うみだす」が出てきます。

 

 

大学紹介の動画でも