世の中は悪い奴だらけだ。

 

粗大ゴミとして自治体に回収してもらうのが一番安く手っ取り早いが、大きな家財を自力で運び出すのは、いささか骨が折れる。かといって、子や孫をわざわざ呼びつけるのも申し訳ない。そんなときに頼りになるのが、片付け業者だ。  ポストに投函されたチラシやネットの広告を見てみると、多くの業者が格安で不用品回収を行っているが、そこには思わぬ落とし穴が存在する。片付け業者による詐欺が多発しているのだ。  不用品回収のトラブル相談を受け付けている国民生活センターの広報担当者が話す。  「相談のなかでもっとも多いのが広告や事前の見積もりよりはるかに高額な料金を請求されるケースです。また最近では、見積もりに出したもの以外の家財を強引に安く買い取られてしまうトラブルも増えています。

 

相談件数は'18年度が1354件だったのに対し、'22年度は2143件と急増しています」  不用品回収はトラックが1台あれば、誰でも始められるから、どうしても悪徳業者が入り込んでしまう。法外な値段を吹っかけるだけではなく、回収したものを不法投棄するケースもある。  不当な請求であれば、クーリング・オフ(一定期間内であれば契約を解除できる制度)を利用できると思うかもしれないが、悪質だと返金に応じない場合がある。  もちろん、法的手段を取れば回収することは可能だが、費用と時間のコストを考えれば、泣き寝入りとなってしまう事例がほとんどだという。  詐欺にあわないためには、怪しい片付け業者を見抜く目を養う必要がある。以下、順番に見ていこう。

 

「無料回収」を信じてはいけない!

 多くの業者が「無料見積もりだけでも可能」と宣伝を出しているが、そのなかですぐに家に来たがる業者は要注意だ。  「不要な家具や家電を回収するというのは、家に上がるための口実に過ぎません。こういった業者の本当の目的は、価格が上昇し続けている金をはじめとした貴金属を安く買い叩くことです」(同前)  アポなしで訪問してくる業者は論外だ。そもそも特定商取引法には、自宅訪問は事前の承諾が必要と明記されている。突然、家に来る時点で問題のある業者であると考えていいだろう。  では、価格面ではどうだろうか。高すぎても安すぎても問題だが、とくに無料回収を謳っている業者は危険だ。彼らも不用品の回収ではなく、貴金属を買い叩くことが目的の場合が多いので、家に上げてはいけない。

 

ネット広告やポストに投函されたチラシを見てみると、超格安で不用品回収を請け負っている業者は少なくない。安い値段に飛びつくと、痛い目を見ることになる。買い取り一括査定サービス「ウリドキ」を運営する前出の木暮氏が解説する。  「不用品回収や出張買い取りは移動費、人件費などがかかるので、いくら以上でないと利益が出ないという金額があり、ノルマが設定されています。ですから、健全な業者だったら、見積もり段階で所定の金額に達しないと想定される場合は、『ほかにも回収できる商品があればお伺いできますが、そうでない場合はお伺いできません』と事前に言うはずです。  出張査定は広告費を含めて一軒当たり1万円以上のコストがかかります。見積もりが安価なのに、『行きます』と言う業者は他に狙いがあると思ったほうがいい」

 

ベッドの解体料、2階からの運び出し料も加算され…

 杉並区で一人暮らしをしている河野雅代さん(仮名・78歳)は、格安の値段に釣られてトラブルに巻き込まれてしまった。  '22年に夫を心不全で亡くしたことをきっかけに夫が使っていた高さ2mほどのタンスと本棚、ベッドの処分を決めた。夫の寝室は2階で、とても運び出せないし、郊外に住む息子を頼るのも気が引ける。ポストにチラシが投函されていた片付け業者に依頼した。  「チラシには軽トラックに詰め込める分だけ回収して、8800円と書いてありました。  当日やってきたのは、30代ほどの男性2人。どちらも普段着のような格好で来たので変だなと思いましたが、淡々と事前に見積もりを出した家具を運び出してくれました。  けれど、最後に請求された額は5万円。理由を聞くと、『8800円は1人で伺った場合の回収料で、2人分の作業量、遠方出張料、ベッドの解体料、2階からの運び出し料を加算した』と言ってきました。到底納得できずに反論したら、『では、運び出したものはここに置いておくしかないですね。もう一度、運び入れるなら追加料金がかかります』と言われました」

 

荷物を軒先に置いておくわけにもいかないし、もう一度、家に戻すのも馬鹿馬鹿しくなり、河野さんは請求された料金を払うしかなかった。  後日、息子にチラシを確認してもらうと、驚きの事実が判明した。チラシの右端に〈価格は一例。現場の状況に応じて追加料金がかかります〉と小さな文字で書かれていたのだ。視力が衰えた高齢者には到底読めない大きさで、詐欺目的であることは疑いようもない。  片付け業者詐欺を未然に防ぐもっとも手っ取り早い方法は、電話などで複数の業者に見積もりを出してみることだ。そうすれば、大体の相場感がわかるはずだ。その際、追加料金の有無も必ず確認しておこう。

 

実際に本誌記者(50代)は7つの業者に見積もりを出してもらい、そのうち4つを下の表に示した。内訳はソファ(2人掛け)、ベッド(セミダブル)、テレビ(40インチ)だ。

その結果、品目ごとに若干の値段のばらつきはあるが、相場は1万2000から2万円だとわかった。この価格帯を提示してきたのは5社だった。  なお、5社のうちB社、C社以外は電話した当日に自宅訪問を提示してきたり、追加料金については「現場による」と濁したりしたため、安全とは言いきれなかった。  こう見てみると、A社が明らかに法外な値段を提示していることがわかる。反対に、軽トラに積載できる容量であれば、一律9800円と提示したD社は安すぎる。

 

 D社は先述した河野さんのケースのように、見積もり以上の金額を詐取する可能性が高いが、追加料金はなく、家具の状態次第で値下げも可能だという。「現地で正確な見積りをしたい」と言うので、本誌記者が実際に自宅で査定を受けた。  当日の12時に来た業者は2人で、ともに水色のつなぎを着ていた。リビングに入るなり、「今日回収しちゃっていいですか? よかったら、見積もりを出してもらった以外のものも」と言う。  すると、おもむろに引き出しのレコードや、クローゼットのなかのスーツを物色し始めた。こちらが「見積もりの3つだけでいい」と伝えると、「それだけだとちょっと回収は難しいかもしれません」と言い出した。彼らの狙いはやはり、見積もりに出した以外の貴金属やレコードなどの価値のあるものだったのだ。

 

ネットやチラシの「釣り広告」

 加えて、そもそも査定だけの依頼だったはずだ。こちらが断ろうとしても、なかなか納得しない。押し問答が続き、結局彼らが去っていくまで実に1時間半以上がかかった。  このように詐欺とわかっていても、業者は食い下がってくることが多い。実家の片付けや遺品整理など様々な案件を請け負う「ブルークリーン」の鈴木亮太氏が言う。  「業者に不用品回収や買い取りを頼むときは、子供などの親族や信頼できる知人に立ち会ってもらったほうがいいでしょう。悪徳業者だった場合、一人だとなかなか断ったり、追い払ったりするのが難しく、正常な判断ができない場合が多い。

 

結果、押し切られて、手放すつもりのなかったものまで買い叩かれてしまう。第三者が横にいれば意見を聞けるし、焦らずに決めることができる。また、回収品の使途を確認することも重要です。そうすれば、業者もそこまで強気に出ることもないと思います」  これまで見てきたように悪質な業者ほど、ネットやチラシに「釣り広告」を出している。少しでも怪しいと思ったら、業者のホームページをチェックするのが大事だ。不用品回収事業者のポータルサイト「不用品回収受付センター」担当者が語る。

 

怪しい業者の見分け方

写真:現代ビジネス

 「業者選定で重要なことは、身元がしっかりしているかです。ホームページに住所や電話番号などの会社概要の記載がない業者は危ない業者である可能性が高い。

 

自社ホームページだけではなく、ネットで会社名を検索して、チェックしましょう。口コミの件数が少なくて高評価のものばかりだと、やらせの可能性もあるので注意が必要です」  もしネットやチラシが信用できないなら、自治体の環境部(東京23区の場合)に問い合わせてみるのも手だ。少し時間がかかるが、一般廃棄物処理業の認可を受けている業者を紹介してもらうことができる。  不用品回収は事前の調査と家族への相談を忘れず、慎重に行おう。「チラシには8800円と書いているのに、5万円も請求」悪徳「不用品回収業者」の“やり口”すべて暴く!【怪しい業者の見分け方チェックリスト付き】(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース