会社と従業員が折半して納付している厚生年金。これをある事情で滞納した大阪の会社は、年金事務所の「強引な徴収」で会社が倒産危機に陥ったと主張して、国と日本年金機構を提訴しました。
この会社の場合、払えなくなったのは経理担当社員の横領によるもの。
■税務署や市役所などは滞納金の納付を猶予
残されたのは税金や厚生年金などの多額の滞納金。村岡さんは税務署などに事情を説明して回りました。 (運送会社「シーガル」村岡大典総務部長)「税務署の方は『そういう事情でしたら職権で猶予します』と。『出来るだけの分割か1年間払わなくていい』という対応だった」 法律では「詐欺や横領などの被害にあった場合、税金や社会保険料の納付を1年猶予する」と定められています。 「税金」を徴収する税務署や市役所、「雇用保険」などの徴収窓口である労働局、すべてが「納付を猶予」してくれました。
※法律では、としてあるが、明文規定のある国税徴収法の準用とみられる。(国税に準じて地方税や社会保険も猶予される。)
■しかし…年金事務所は「猶予する理由がない」 村岡さんは約3000万円を滞納していた「厚生年金」も猶予してもらおうと、おととし1月、吹田年金事務所に相談しましたが・・・ (運送会社「シーガル」村岡大典総務部長)「『猶予する理由がない』と。『横領はおたくの事情、資金をどう捻出するかもおたくの事情』。『そんなことうちには関係ないです』。1年間猶予できるって(法律が)あるじゃないですか?と言うと、『何の法律ですか?』『そんなん聞いたことないですね』『何の何条ですか?』って言われたんですよ」
何度相談しても猶予を認めずおととし8月には、売掛金の差し押さえを始めたのです。
回収金が全部吸い取られて会社を運営できない。
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年金事務所も回収できなくなる矛盾した対応。
■年金事務所"勉強不足"を認めるも差し押さえはとめず ところがその1か月後。年金事務所の職員から“驚きの発言”があったというのです。 (運送会社「シーガル」村岡大典総務部長)「『横領は猶予の対象になるって(法律に)ありましたわ』『勉強不足ですみませんでした』って言われたんです。(差し押さえの)残りの分は止めていただけるんですか?と言うと、『それは無理ですねぇ』と言うんです。どういうことですか?法律が分かったんでしょう?(と聞くと)『もう既に着手しているから』って言うんですね」
さらに年金事務所は、「正式に書面で申請をしていなかったから猶予をしなかった」と主張したといいます。 ■「書類が出されていなかった」と繰り返す年金事務所
■差し押さえ処分の取り消しなど求め…国と日本年金機構を提訴 年金事務所の対応に納得がいかない村岡さんたちはおととし12月、国と日本年金機構を相手に大阪地裁に提訴。 猶予申請を受理しなかったことの違法性の確認や、差し押さえ処分の取り消しなどを求めました。
■厚労省の審査会が差し押さえを取り消す裁決 ■ そして去年12月、審査会が下した判断は・・・ (厚生労働省・社会保険審査会の裁決書)「原処分(差し押さえ)は適切、妥当なものではなく、取り消しを免れない」
審査会は、5件の差し押さえのうち4件について、「横領被害によって納付を猶予できることを考慮せず行った」としてシーガル側の主張をほぼ認め、差し押さえを取り消す裁決を出しました。
その後に行われた裁判で日本年金機構は審査会の裁決を踏まえ、差し押さえを取り消して返金するとしました。
こうした年金機構の対応に、村岡さんは強引な差し押えをされている会社はほかにもあるのではないかと思い、全国の年金事務所に電話をかけ、「横領被害が猶予の対象となるかどうか」について聞いてみることにしました。すると驚きの結果が・・・ ■「横領被害が猶予の対象になる」と明確に説明した事務所はわずか1割
■「こんな人たちに預けてていいのか…怒りよりも恐怖が湧く」 ■ 村岡さんはこの調査結果を、年金事務所の実態を表す資料として裁判に提出しました。 (運送会社「シーガル」村岡大典総務部長)「中小企業もこのご時世、大変な資金繰りの中納めたお金をね、こんな人たちに預けてていいのかな?と怒りよりも恐怖が湧いてきます」
MBSは日本年金機構に対し、村岡さんの調査結果などへの見解を求めましたが、回答は『係争中の案件なのでコメントは差し控える』というものでした。 (2026年4月21日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『憤マン!』より)
☞制度の執行にあたる人たちが制度を知らない。
その恐ろしい現実は、社会保険庁が独立行政法人化された2010年以降特に顕著となっている。
それは年金記録消去などの不祥事を起こして解散となった社会保険庁職員が曲がりなりにも公務員として十分な研修を受けて、頻回の制度改正にも対応する知識や行政法の素養を身に着けて業務についていたのに比して、年金機構では法知識もないまったくの素人を”促成栽培”で現場に出し、あやふやな知識のまま、間違った措置をするのがあたりまえの土壌になっているということだ。
地方税や国保などの窓口である自治体ではプロパー職員が徴収担当となっているところが多く、それは国税庁も同じであるが、年金事務所の窓口を担う徴収担当や年金給付担当はそうではなく、まったくの素人である臨時職員に担わせている場合が多い。 それは不祥事に関わった元社保庁職員を雇えないという他の機関とまったく異なる事情があるうえに、他の機関のようにたとえ臨時職であれども社会保険労務士等の専門家を年齢制限なしに雇うということをやっていないという致命的な採用ミスが根底にある。
役所の臨時職員とは異なり民間企業のはしくれであるから65歳の定年制を設けるのはやむをえないとしても正社員転換が前提なものは除いても、専門家に限っては採用年齢の制限を撤廃して正しい法律知識を素養として持つ者を増やすべきだ。せめて70歳まで(現状)契約更新を認めることとして正しい処理ができる人を増やさなければならない。
