トラウマセラピーに役立つメチル化の知識 | 症例と解説 | かわせカイロプラクティック

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症状に対する私なりの考え方や症例の解説などを書いています。

ストレスは神経細胞の発達を阻害します。特に小児期の頃に強いストレスをずっと受け続けた人はミエリン(髄鞘)の形成不全が起こります。そしてミエリンの形成不全はうつ病や発達性トラウマ障害とも関係がある事が明らかになっています。

 

では、なぜストレスによって脳や神経細胞の発達が阻害されるのか? その大きな原因の1つとしてメチル化の異常があります。

 

そしてまず脳や神経細胞の発達にはメチル化という化学反応がとても重要だという事を知っておいてください。

 

例えば、PRMT1というメチル化酵素は、神経細胞の軸索という部分を伸ばしてゆき、脳内の情報ネットワークを作ってゆきます。さらにPRMT1はミエリン形成にも深く関与しています。

 

それから、PEMTというメチル化酵素は、ミエリンの材料として重要なホスファチジルコリンを合成します。そのホスファチジルコリンは、卵や肉などの食品からコリンを十分に摂取できていればPEMTの働きがなくても足りているのですが、多くの人が食事から十分にコリンを摂取できていないので、やはりPEMTの働きは重要です。

 

ではなぜストレスによってメチル化異常が起こるのでしょう?

 

それはメチル化には脳や神経細胞を発達させるだけでなくアドレナリンやノルアドレナリンなどのストレスホルモンを代謝する働きもあるからです。なので、ストレスがかかるとメチル化のために必要な栄養素(メチオニン、メチルコバラミン、メチル葉酸など)がストレスホルモンを代謝するために使われて枯渇する事でメチル化が停滞してしまいます。

 

その他に、ストレスがかかると大量の活性酸素が産生されますが、それが直接的に脳や神経細胞に障害を与えるだけでなくメチル化を抑制する事も関係します。

 

このように、ストレスが神経細胞の発達を阻害するのですから、ストレスを取り除いたり、心理療法によってストレス耐性をあげる事が神経細胞の発達を促す事は間違いありません。

 

その他にも、私はとても重要だと思っているのですが、ストレスによって枯渇する栄養素を補うという方法もあります。また、遺伝的にCOMTやPEMTやMTHFRなどのメチル化酵素に問題がある人も少なくない事がわかっていますから、その遺伝的問題を回避するための栄養素を補う事も必要かもしれません。

 

しかしメチル化に対する栄養療法を行う場合、最初に取り組むべき事は、活性酸素や解毒、腸内細菌異常、消化不良、電解質不足、細胞膜など栄養療法の基本的な事です。これらの基本的な事だけでメチル化が正常化する事もあります。また最初に基本的な事をやらずにメチル化に取り組んでもうまくいきません。

 

私の場合は、ARテストによってメチル化の異常を調べ適切なサプリメントの選択をしたり、身体志向のトラウマセラピーを行っています。

 

 

※参考になるページ

 

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