私が小学校に通っていた時代の給食の食器を思い出してみるとアルマイトを使った鉄製の物で、先割スプーンを使用していました。アルマイト製の食器のメリットは丈夫で軽く、洗いやすい、重ねての管理が楽であるなどといったものだと思いますが、その性質上の問題点として熱伝導率が高く、暑いものが食べられないというデメリットもありました。それを改善するために用いられたのが先割スプーンだったと思います。しかし、アルマイト製食器と先割れスプーンを使用することによって、いわゆる「犬食い」と呼ばれる問題点も発生しました。
次に食器で登場したのがプラスチック製食器でした。これによりアルマイト製食器と同じ利点を生かしながら、なおかつ材質の持つ熱伝導率が大幅に下がったことで、熱いメニューでも食べやすくなりました。デメリットととしては油汚れが落ちにくいぐらいであったと思います。加えて、米飯給食の普及により先割スプーンから箸へ徐々に移行していき、先割れスプーン使用による問題も解決する方向に向かいました。
そんな時代がしばらく続く中、２０世紀も終わりに近づいた頃新たな問題が大きく社会的に取り上げられるようになりました。環境ホルモン（内分泌かく乱物質）です。その指摘された内容の中には、プラスチック製食器に含まれる環境ホルモン物質がお湯や油、酢、アルコールで溶け出し、体内に蓄積され人体に大きな影響を及ぼすというものがありました。当時多くの保育園や小学校はプラスチック食器を使用していたので、早急な対策が求められました。学校や保育園で使用する食器は、衛生上の理由から毎日消毒保管庫などを使用して高温で殺菌消毒します。お湯で環境ホルモン物質が溶け出すぐらいですから、高温で殺菌消毒すれば当然それが溶け出すことになり、長い目で見ると大変危険であると言えます。
それを解決する為に食器が変更されるようになりました。陶器、強化磁器、などです。地域によっては、郷土文化の継承などの観点から漆塗りのものを使用しているそうです。では、環境ホルモン対策として大きなメリットがあるこれらの食器のデメリットは何でしょう。まずアルマイト製食器やプラスチック製食器などと比べて大変重く、管理や調理、後片付けなどの作業が大変重労働になります。それに、一番の違いは、使う人がぞんざいに扱うと壊れてしまうということです。これらが、先の食器の性質と大きく違うところです。
しかし、その中の「壊れる」という性質はデメリットになるのでしょうか？。それを管理する大人の意見としてはデメリットかもしれませんが、
（ポイント）
子どもにとってこの「壊れる」という性質はむしろメリットであると私は考えています。もし、ある子どもが食器をぞんざいに扱ったとしましょう。当然その食器は大きな音を立てて割れてしまいます。割れた後での周りの大人たちの助言は当然必要ですが、この割れるということを経験することによって、その子どもの心の中に、「物は壊れる。物は大切に使わなければならない。」という気持ちが芽生えます。私の経験上、一度食器を割った子どもはその後二度と食器を割ることはありませんでした。
今の子ども達が育っていく時代は大量生産、大量消費の時代ではなく、環境問題、リサイクルが重要となる時代です。環境ホルモン対策に優れ、毎日の「食」を通じ、物を大切にするという気持まで学ぶことができる陶器の食器は大変優れたものであると考えられます。
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