○神奈備 かんなび 〖名〗 

(「かむなび」と表記。「かん」は「神」、「な」は「の」の意、「び」は「辺」と同じく「あたり」の意か)神のいらっしゃる場所。古代信仰では神は山や森に天降(あまくだ)るとされたので、降神、祭祀の場所である神聖な山や森をいう。特に、龍田・飛鳥・三輪などのそれが有名。かみなび。かみなみ。 

   •万葉集「神名火(かむなび)にひもろき立てて斎(いは)へども人の心はまもりあへぬもの<作者未詳>」

   •万葉集「甘南備(かむナビ)の三諸(みもろ)の山は春されば春霞立ち<作者未詳>」 •出雲国造神賀詞「倭の大物主くしみかたまの命と名を称へて、大御和(おほみわ)の神奈備(かむナビ)に坐(ま)せ」

   •古今集「神な月しぐれもいまだ降らなくにかねてうつろふ神なびのもり<よみ人しらず>」

 語源説 神嘗の義で、神をまつった所をいうか。また、カンノモリ(神杜)の約であるカンナミの転か〔和訓栞〕。カミナラビ(神双)の義〔古今集注〕。カミノベ(神戸)の転。戸は家の義〔延喜式祝詞解〕。ナビは蛇の古語。神蛇の籠る山の意か〔文学以前=高崎正秀〕。朝鮮語で木をnamuというところから、神木の義〔国語学通論=金沢庄三郎〕。また朝鮮語で山をモイというところから、カム(神)ノモイの約か〔日本古語大辞典=松岡静雄〕。神の山の意。カムはカミ(神)の形容詞的屈折、ナはノ、ビはもり、むれなどという山の意の語が融合したミの音転〔万葉集辞典=折口信夫〕   (おわり)