「目の前に広がる青い海 そっと近づき 手のひらですくう 指の隙間からこぼれる一滴のしずく 海とは、この一滴のしずくが集まったものだ」

 

 この世界には大きく見えるものがあふれている。視界いっぱいに広がる青い海。両手で囲えないほど大きな木。見上げるくらい高くそびえ立つビル群。そのどれもが私たちを驚かせる。ある人はその光景に胸を躍らせ、またある人はその大きさに息をのむ。

 

 あなたはこのような経験をしたことはないだろうか。ある日、自分の能力以上の難しい問題に取り組むことになった。自信がなく、初めはつまずいてばかりだったが、時間が経つにつれ、コツをつかみ、何を難しく感じていたのかを忘れてしまった。またある時は大きな問題に直面し、その問題の全容がつかめず、圧倒された。だけど諦めずに、時間をかけて、その問題を小さな要素に分解した。そしてその分解した小さな問題に取り組むことで、最終的に圧倒されていた大きな問題を対処可能なレベルまで落とし込み解決することができた。

 

 もし、あなたが何か問題を抱えていて、その問題がとても大きく見え、圧倒されているのであれば、どうか落ち着いてほしい。目をつぶり、ゆっくりと深呼吸をしよう。大切なことは、意識して気持ちを落ち着けること。焦りや怒り、悲しみといった感情は、あなたの見る世界を狭めてしまう。狭まった視界では、その問題の本質を捉えきれず、とることが出来る選択肢が限られてしまうことがある。

 

 ここで間違わないでほしいことは、問題を解決するにあたって、感情が不要なものだとは言っていないということ。あなたの感情は、それがどのようなものであっても、あなたが生きていくうえで必要な熱。その熱は、問題に取り組むにあたって大きな力となる。

 

 これから勧める方法は置かれている状況や人によっては難しいかもしれない。だからこういう方法もあるという一つの視点としてみてほしい。

 

 やることはとてもシンプル。ノートを取り出し、直面している問題についてひとつ一つ書き出していく。大切なことは、言葉にすること。言葉にすることで、問題の本質を捉えることができるようになる。言葉にする前の問題とは、目の前に広がる海のようなもの。限りなく広く、捉え切れないほど多くの性質を持っている。その海を、ひとつ一つ言葉として定義していく。そうすることで、はじめて私たちは海のように大きく見える問題が、どういうものなのかを知ることができる。

 

 あなたが抱える問題も同じような性質を持っている。言葉にすることは、かなり辛い作業かもしれない。時間もかかる。だけど、それをする価値はある。あなたが抱える問題という海を、言葉によって水滴にし、あなたが扱える範囲まで細かく分解していく。そうすることで、あなたは自分が抱える問題を知り、その問題を構成するより小さな問題に適切な働きかけができるようになる。そこまでいけば、あなたは海そのものに対処することができる。なぜなら、その一滴のしずくが集まって生まれたものが海だからだ。

 

 瞳に映る存在の大きさが不確かなこの世界で、懸命に生きるあなたに敬意を。あなたが抱える問題とは、あなたがこの世界で懸命に生きている証にほかならない。どうかその問題を、あなたが受け止めてあげられますように。今日もあなたという星が、この世界に確かに存在している。

「目の前に広がった果てしない世界 コンパスと地図を取り出し 星を見据える 世界とは、人が作り上げるものだ」

 

 私たちの目の前に広がる世界。その在り方と見え方はひとり一人異なっている。あなたはこのような経験をしたことはないだろうか。友人たちと出かけた先で、美しい花を見つけた。その花について、意見を交わした。ある人は、その花の持つ特徴が、他の花にはないものだと言って絶賛した。またある人は、栽培の難しさと商業的な観点から、その花にはたいした価値がないと一蹴した。

 

 このように、同じものを見ていても、返ってくる評価は人によって異なる。ここで注意してほしいことは、誰が間違っていて、誰が正しいのかというシンプルな問題にはならないということ。価値観というものは、その人が生きてきたなかで育まれた、世界を見る視点。生まれた環境、出会った人々、体験した出来事、その全てが世界を見る視点に影響を与える。そして、そのひとつ一つの価値観が、この世界に新たな価値をもたらす可能性を秘めている。

 

 間違わないでほしいことは、あなたが持つ価値観も重要だということ。価値観とは、自分の進む方向を定めるコンパスに等しい。そのコンパスが未熟な状態だと、自分の進む方向を見失ってしまいやすい。コンパスを鍛える方法。それは、心の声に耳をすませること。自分が何を好きだと感じ、何を嫌いだと感じるのか。それをひとつ一つ丁寧に集めていく。そうすることで、あなたの中に明確な価値観が形成される。その価値観は、星が多いこの世界で、あなたの道を照らす大切な灯火となる。

 

 コンパスによってある程度方向が定まった。次に必要となるのは地図。人はいる場所によって見える世界が全く違ったものとなる。都会と田舎で見える風景が異なるように。身を置く環境によって、あなたが見る世界は百八十度違うものとなるかもしれない。地図とは、あなたがどの場所で生きていくのかを決めるということ。この地図は、生涯をかけて更新していくことになる。根気のいる作業ではあるが、やる価値はある。あなたがその地図を見出したとき、世界は、あなたに新たな景色を見せてくれるかもしれない。

 

 人が創り出していくこの広大な世界の中で、懸命に生きるあなたに敬意を。あなたが持つコンパスや地図は、この世界にとって唯一無二のもの。過去、現在、未来を通して、あなたと同じ存在はもう二度と現れないだろう。そのコンパスと地図が、あなたの進む道を暖かく照らしてくれますように。今日もあなたという星が、この世界に確かに灯っている。

「明確に引かれた線 世界を分かち 両者を育む 線引きとは、お互いを尊重する行為の一つ」

 

 今回は少し真面目な話をしようと思う。ヒーリングというには内容が重くなってしまったので、苦手な方はそっと画面を閉じてほしい。

 

 この世界には優しさをもって人と接してくれる人がいる。その存在は、この世界にとって得難く、世界を暖めてくれる大切な灯火。私はその大切な灯火が、一秒でも長く、健やかに、この世界に在り続けてくれることを、心の底から願っている。そのうえで、優しさについての話をしていこうと思う。

 

 あなたはこのような経験をしたことはないだろうか。困っているとき、知り合いが相談にのってくれて気持ちが楽になった。川で流されている子供を、命の危険も省みず助けにいった人の姿を見て、胸が熱くなった。優しさとは、人の心からこぼれた熱がかたちをとって、世界に現れてくれたものだと私は思う。

 

 もちろん、優しさにも色々な種類がある。目的を達成するための優しさもあれば、相手をおもってこぼれた純粋な優しさもある。優しさとは、非常に複雑なもの。相手に対して、明確な悪意や害意を発生させることを目的とした優しさを除き、全ての優しさにはこの世界を照らす力がある。

 

 あなたは、優しさと言われてどのようなことを思い浮かべるだろうか。相手の視点にたって考える、相手の言うことを受け入れてあげる、ダメだと思うことを正す、相手が喜ぶことをする。そのどれもが、優しさだ。優しさに正解はない。千人いれば、千通りの優しさのかたちがある。あなたが思う優しさも、この世界にとってかけがえのない光。

 

 そのうえで、こういう考え方もある。私は優しさとは、明確な線引きの中で行われる価値の提供だと考えている。線引きとは、何を許容して、何を許容しないのかをはっきりとさせること。そうすることで、お互いの理解が深まり、それぞれ自分の中にある世界を成長させることができる。

 

 大切なことは、お互いの間で価値観をしっかりと表明すること。相手と健全な関係を成立させるうえで、この過程は避けることはできない。価値観とは、人が生きていく中で必要な、エネルギーを生み出すコアのようなもの。価値観に反する献身は、それが優しさから生まれたものであっても、お互いの在り方を歪めてしまう。尊重のない関係は、あなたや優しさを向ける相手の輝きを弱める要因となってしまうかもしれない。

 

 この意見を聞いて複雑に感じた方もいるだろう。その感情は尊重されるべきもので、あなたの大切な感情だ。この世界には様々な正しさのかたちがある。正しさとは言い換えれば、その人が持つ価値観。私の考えを聞いて感情が発生したのであれば、どうかその感情を大切にしてあげて欲しい。それがどのようなものであれ、あなたの価値観から生じた、大切な感情。あなたの持つ価値観が、あなたを守る灯火となってくれることを祈っている。

 

 様々な価値観がかたちをとって現れるこの世界で、懸命に生きるあなたに敬意を。あなたが持つ優しさとは、この世界を照らす大切な灯火。その世界の中には、当然あなたも入っている。あなたという火が、一日でも長く健やかに灯り続けますように。今日もあなたという火が、この世界に確かに灯っている。

「視界に広がる深緑 頬を撫でる優しい風 降りそそぐ太陽の光 そのやわらかさは、心のよどみを静かにとかすでしょう」

 

 晴れた日に散歩をしていると、色とりどりの花やたくさんの緑の葉をつけた植物が目に入ることがある。太陽の日差しを受け、風に揺れるその葉はとてもみずみずしく、力強い生命力にあふれている。

 

 あなたはこのような経験をしたことはないだろうか。達成すべき目標と課題の締め切りに追われる毎日。そんな日々をすごす中、ふと気分転換を兼ねて外を歩いた。太陽の眩しい日差し。街頭に生えたみずみずしい街路樹。ベンチに座って木々の葉っぱが風に揺れる姿を眺めていた。その音を聴いていると、張りつめていた神経が緩み、ついウトウトしてしまった。

 

 これは、自然という美に私たちの心が触れた証。忙しすぎたり、精神的負荷が高い状態にあると、人は自然から得られる癒しを忘れてしまうことがある。そんな時は、ベンチに腰をかけ、ゆっくりと周りを観察しよう。目にうつる深緑、太陽の日差しから感じる暖かさ、肌を通りすぎる風、耳から聞こえる植物のざわめき。そのすべてが、あなたの緊張をやわらかくほどいてゆく。大切なことは焦らないこと。自然に触れるという行為は、言い換えれば、自分の中にある本来の感覚を少しずつ取り戻していくということ。音を奏でる楽器が定期的に調律を必要とするように、あなたの精神にも休息は必要だ。

 

 社会を生きるなかで、人が持つ柔らかさは、生きていくうえで弱点になると考える人もいる。精神の固さは周囲の影響をはねのけ、常に緊張状態にあることで、競争本能が高まり、パフォーマンスを劇的に向上させる。それをほどく行為は、己を弱め、パフォーマンスを低下させる悪しき習慣だ。この考えを否定するつもりはない。人は誰しも、自分の中に世界を持っている。生きてきた環境、体験した世界。見えている景色が違えば、考え方も見い出す結論も違うものとなる。全ての考えの根底にあるのは、人が生きていく中で生み出した強い想いの結晶。その全ての考えが、この世界を形づくっている。

 

 そのうえで、こういう見方もある。人が持つ柔らかさとは、精神の柔軟性。精神が柔らかくなれば、見える範囲と、考え出す手段が格段に多くなる。イメージして欲しいのは、一本の剣。硬さのみを追及した剣は、衝撃で簡単に破損してしまう。製造過程で柔らかさを持たせることによって、その剣は初めて実用に耐える品質になる。これは、人が持つ精神にも当てはめることができると私は思う。硬さを持ちつつも、適度な柔らかさを獲得したあなたは、今まで見えなかった世界を見ることができるかもしれない。そしてその世界は、あなたに新たな視点を示してくれる。

 

 柔らかい緑の葉が芽吹くこの世界で、懸命に生きるあなたに敬意を。あなたが持つ柔らかさとは、あなたが持つ強さにほかならない。あなたが持つその強さが、あなたを温かい道へと導いてくれますように。今日もあなたという灯火がこの世界に確かに灯っている。

「精神に生じるよどみ 影響を受ける世界 変わらず咲く美しい花々 そっと息をはき、花をなでる 衰退とは、精神の老化だ」

 

 人は日々生きるなかで様々な感情と出会う。喜びや悲しみ、怒りと愛情、恐れと期待。そのすべてが私たちが生きる世界に色をもたらす。

 

 あなたはこのような経験をしたことはないだろうか。楽しみにしていたイベントに出かけた。大勢の人とその熱気、場の雰囲気に当てられ、くたくたになるまで楽しんだ。またある時は、試験や課題が積み重なり、そのあまりの量に目を見張った。

 

 このような時、心には感情という名の雪が舞い始める。喜びでも、悲しみでも――どんな感情であっても、心の中に雪は降り積もる。そして、その量は、あなたが感じた感情の大きさと比例する。間違わないで欲しいこと。それは、感情を感じることが悪いと言っているわけではないということ。感情とは、私たちがこの世界を生きている証。感情とうまく付き合うことによって、私たちが生きる世界は、より色のある世界となる。

 

 心に降り積もった雪はその量に応じて重みを持つ。イメージして欲しいのは、木の枝に乗った雪。少量であれば、木の枝はその影響を受けず、真っ直ぐとした姿を保つ。だが、枝に付着する雪の量が増えるにつれて、枝は垂れ下がり、酷い場合には折れてしまうことがある。怖がらせたいわけではない。ちゃんと、対処法もある。ここで言いたいこと。それは、感情という雪はあなたが見る世界に影響を与えるということ。それが少量であったとしても、雪から伝わる熱と重みは、あなたの世界の見方に影響を及ぼす。

 

 その雪が、暖かい感情から生まれたものであれば問題ない、とあなたは思うかもしれない。暖かい感情から生まれた雪は、あなたが見る世界を優しく美しいものにしてくれる。しかし、注意しなければならないことがある。感情というものは、その良し悪しに関わらず重みを持っている。強すぎる喜びや期待、興奮は、知らないうちに、あなたを疲れさせてしまうかもしれない。

 

 意識することは、この世界に確かに存在するものに、感覚を集中させるということ。手に持った飲み物から伝わる熱、ただよう香り、口に入れた時に感じる味。その全てをひとつ、一つ丁寧に確認していく。視界に花が入れば、その花がどのように揺れ、なぜ美しいと思うのかを観察する。その余白が、あなたの心に降り積もった雪を静かにとかしていく。

 

 雪の重みは、私たちを強くすることもあれば、弱くすることもある。精神の老いとは、私たちの心の中に降り積もった雪が、その重みを伝えてくることによって引き起こされるものだと私は思う。雪に気づき、それを優しくとかしながら、再びこの世界を眺めよう。そこには、今までとは異なる景色が広がっているかもしれない。

 

 感情という雪が降り積もるこの世界で、懸命に生きるあなたに敬意を。心の中にある雪。それはあなたがこの世界を生きる証にほかならない。どうか、あなたがその雪とうまく付き合えますように。今日もあなたという火がこの世界に確かに灯っている。

「目の前に置かれた三枚のカード 分岐する未来 ささやく理性 そっと目を閉じて 空を見る 選択とは、星をつくる行為だ」

 

 人は選択するという行為によって、この世界を切り開いてきた。あなたはこのような経験をしたことはないだろうか。ある日、知り合いと出かけることになった。どこに行こうかとワクワクし、たくさんの場所をピックアップした。またある時は将来を左右する大きな選択と出会った。複数の進路から一つの進路を選ばなければならず、その道を進んだ自分の姿を想像して、なかなか決めることができなかった。

 

 もし、そんな状況に出会ったときは、そっと一息つこう。大切なことは、その選択によって、あなたが何を失って、何を得るのかを明確にイメージできること。イメージした内容が、あなたの心を暖めるものであれば、その道を選ぶ価値がある。選んだ道で、困難に出くわすこともある。そんなときは、胸に手を当てその道を選んだときのことを思いかえそう。道を選んだときに感じた熱、その温もりが、あなたの心を支える灯火となるかもしれない。あなたが行った決断。その全ては、この世界にとって、確かな意味を持っている。

 

 人は選択をすることによって様々な光景を見ることが出来るようになる。選択をするとは、目の前に広がる無数の道から一つを選んで、その道を進むということ。選ぶ際に、様々な葛藤があなたをさいなむかもしれない。選ばなかった道に対するあこがれ、進むと決めた道に対する不安、見えている道への戸惑い、その全てがあなたをかたちづくる大切な感情。決めるという行為には、とても勇気がいる。だからこそ、選択というものは、とても大きな価値を持っている。あなたがどの道を選んだとしても、その道はあなたに価値を与えてくれる。あなたが行う選択とは、あなたが持つ世界に色をつけるという行為に他ならない。

 

 時には、悩んで立ち止まってしまうこともある。そんな時は、好きなものに触れよう。気分が上がる音楽、気持ちを緩める甘い飲み物、そばにいると心が安らぐ存在。なんだっていい。大切なことは、心に熱がある状態で決断を下すこと。目を閉じ、そっと胸に手をあてて、自分の熱を感じよう。あなたの中には、静かに燃える灯火が存在している。決断をするたびに、あなたの中にある灯火は、その輝きと力強さを増していく。その灯火は、あなたの歩く道を確かに照らしてくれる灯りとなる。そして、その灯火からこぼれた熱は、あなたが感じる寒さをほんの少し和らげてくれるかもしれない。

 

 無数の道が分岐するこの世界で、懸命に生きるあなたに敬意を。あなたが選んだ道。その選択が、あなたを、あなたが生きる世界を優しく照らす星となりますように。今日もあなたという星が、この世界に確かに灯っている。

「すれ違う価値観 生じる疑心 揺れる天秤と誰かの涙 荒野に咲いた一輪の花 その小さなきらめきが、世界の色をわずかに変えるでしょう」

 

 人はそれぞれ違う価値観を持ってこの世界に生きている。食べ物の好き嫌い、人との関係の築き方、仕事に対するスタンス、善悪に対する捉え方。その全てが、人によって異なっている。

 

 あなたはこのような経験をしたことはないだろうか。ニュースを何気なく眺めていた時、あまりにも酷い事件が流れてきて、思わず目をみはった。内容を確認し、なぜこんなことが起こるのかと、天を仰いだ。もし、こんな状況に出会ったときは、目を閉じてゆっくりと深呼吸をしよう。衝撃的な出来事というものは、私たちの価値基準を揺さぶってしまう。沸騰した心は、私たちの目を濁らせる。そのような状況で、まともな判断をすることは難しい。運動をしたり、好きなものを見る。何だっていい。大切なことは、沸騰した気持ちを落ち着けること。気持ちが落ち着けば、見える範囲や取れる手段、得られる学びも格段に多くなる。

 

 生きるということは、価値観をすり合わせていくということ。あなたは生きるなかで、様々な価値観を持った人たちと出会うことになる。価値観とは、言い換えれば、一人の人間が持つ世界。人は、自覚にかかわらず、誰もが自分のなかに世界を持っている。イメージして欲しいのはシャボン玉。世界という空間の中に、大小様々なシャボン玉が浮いている。この中にある一つのシャボン玉が、あなたが持つ世界だとする。シャボン玉は時に、他のシャボン玉と接触する。これが、あなたが経験する、価値観の交流。

 

 シャボン玉同士が接触した時、お互いの様々な情報が、シャボン玉の膜を通してやり取りされる。ここで注意して欲しいことは、シャボン玉の膜の厚みは、人によって異なるということ。紙一枚分の厚みで情報を通す人もいれば、数十メートルの鋼鉄の膜を通して、情報を受け取る人もいる。これはつまり、お互いの間で発生する感情と価値観への影響は、あなたとその人で、全く異なるものになるということ。

 

 誤解しないでほしいことは、世界を覆う膜の厚みに優劣は存在しない。ただ、この世界で果たしている役割が違うだけ。あなたの心の膜も、相手の心の膜も、この世界にとっては等しく大切で、価値あるもの。あなたが持つその心を、どうか大切にしてあげて欲しい。あなたの心は、この世界に灯る一輪の花。それは、数え切れないほどのシャボン玉が浮くこの世界でも、決して色あせることはない。

 

 無数のシャボン玉がゆらめくこの世界で、懸命に生きるあなたに敬意を。あなたが出会う様々な世界は、それがどのようなものであれ、あなたに確かな強さを与える。どうかその強さが、あなたの世界を優しく色づけてくれますように。今日もあなたという花が、この世界に確かに咲いている。

「手に持ったコーヒー 重いまぶた 静かにくびを振り カーテンを開ける 差し込む朝日 それは、一日が始まる証」

 現代という時代は、人類が積み重ねてきた時間感覚を失ってしまいやすい環境にある。太陽の光が届かない夜でも、無数の照明器具が輝き、時間を問わずインターネットで世界中の人と繋がることができる。

 あなたはこのような経験をしたことはないだろうか。調べ物をしていたらつい楽しくなってしまい、気がついたら朝になっていた。締め切り間近の提出物が完成しておらず、コーヒーを片手に徹夜で仕上げた。これは、体力と精神力がある人ほど出来てしまう。もし、あなたがそうなのであれば、それは本当にすごいことだ。体力と精神力を高い水準で保つには、並々ならぬ研鑽が必要になる。意識的であれ、無意識であれ、それはあなたの努力が作り出したもの。私はその努力に深い敬意を持つ。

 だが同時に、細心の注意をする必要がある。夜通し活動すると、気づかないうちに体力と精神力が削られていく。イメージして欲しいのは、精神力という燃える炎の上に、体力という四角い氷があぶられている状態。精神力という炎は、コーヒーを飲んだり、音楽や映像といった精神に刺激を与えるものでその勢いを強めることができる。徹夜中にテンションが高くなった場合は、炎が勢い良く燃えさかっている状態だと思ってほしい。炎の勢いが強くなればなるほど、体力という氷のとける速度は上がっていく。これは、非常に危険な状態だ。

 体力という氷は二つのエネルギーから作られている。表面を覆うのが『体力エネルギー』、そして中心に位置するのが『生命エネルギー』。氷の外側を形成する体力エネルギーは、日常的に消費することを目的に作られている。これは、いくら溶けても、もう一つの生命エネルギーがある限り、眠っている間にじわじわと補給される。通常は、この体力エネルギーしか消費されない。なぜなら、体力エネルギーが尽きた時点で、人は疲れて眠ってしまう。

 しかし、例外が存在する。それが、睡眠不足と興奮状態。この二つの状態のとき、普段は使われないはずの生命エネルギーが消費される。生命エネルギーとは、人が生きるために必要な超重要なもの。体力エネルギーを作り出す氷の核であり、ここまで炎が到達すると、冗談抜きで命にかかわる。睡眠不足によって、体力エネルギーの氷の層が薄くなり、そこに興奮という燃料が注がれると、炎は勢いを増し──氷の奥、命の核へと迫ってくる。燃え盛る炎は気がつかないうちに、あなたの生命をとかしてしまうかもしれない。

 もし、あなたがあまり睡眠をとれていないのであれば、無理をせず夜にゆっくりと眠って欲しい。責任や役割、職務や状態によっては十分な睡眠がとれないこともある。その時は十分でも良いので、時間を小分けにして、たくさん睡眠時間を確保して欲しい。大切なことは『眠る』という行為を意識して、生活に取り入れるということ。そうすればあなたは、より長く、明るく輝き続けることができる。

 常に太陽が輝くこの世界で、懸命に生きるあなたに敬意を。睡眠とは、あなたをより長く、明るく輝かせるために必要なもの。あなたがこの世界にいる、それだけで変わる未来はある。どうか、あなたという火が、一日でも長くこの世界に灯り続けますように。今日もあなたという火が、世界に確かに灯っている。

「心からこぼれた嘘 降り積もる雪 地面からのぞいた小さな花 そのかすかな揺らぎが、世界の雪をとかすでしょう」

 人は生きる中で嘘がこぼれてしまうことがある。それは、意識的であったり、無意識から生じることもある。嘘とは、心からこぼれた感情の結晶。善悪にかかわらず、その人の深いところにある感情がにじみだす。

 あなたはこのような経験をしたことはないだろうか。何かを失敗してしまったとき、バツが悪くなってつい事実と違うことを言ってしまった。友達と話すとき、心では違うと思いながら、話を合わせた。嘘というものは、心がつくった防御機能のようなもの。もし、あなたがそのことで悩んでいるのであれば、どうか落ち着いて欲しい。その嘘がどのようなものであれ、あなたの心の中から生じた叫びには違いがない。ゆっくりと目を閉じて深呼吸をしよう。心から生まれた叫びには意味と可能性が秘められている。こぼれた嘘は、自分の心を知る、とても重要なカギになる。

 想像して欲しいもの。それは雪の結晶。嘘というものはとても繊細なもので、知ろうと手を伸ばすと、身体の熱ですぐに溶けてしまう。ひとつ一つは、小さなものかもしれない。降り始めた雪が、太陽の熱ですぐにとけてしまうように。嘘というものは、時間の経過とその量によって持つ性質が変わってくる。降り始めた雪は少しずつ周囲の気温を下げ、地面に積み重なっていく。小さな雪の結晶は、集まることで強度を増す。そして、巨大な雪のかたまりへと変わってしまう。これは、人の心からこぼれた、嘘という雪の結晶でも同じ。大切なことは、降り積もってしまった雪のかたまりを、無理にどうにかしようとしないこと。雪のかたまりは非常に強固で、とても冷たい。なんとかしようと頑張ってしまうと、その冷たさに、身体の芯まで凍り付いてしまう。まずは、暖かい飲み物を飲んで気持ちを緩めよう。それからでも遅くはない。

 最初にすることは、心からこぼれた嘘に気づいてあげること。既にある雪のかたまりを見るのではなく、こぼれ落ちてくる雪の結晶を、そっと手のひらで受け止めてあげる。嘘という雪の結晶は、言い換えれば、その人の心の中にある花がこぼした、花びらのようなもの。姿や形、温度は変わってしまっているかもしれない。しかし、その雪の結晶が映す色はあまり変わっていない。ゆっくりと観察をしよう。その嘘がどのような心の声から生じたものかが分かれば、雪の結晶を花びらへと変えることができる。その花びらは、色とりどりの灯火となって、あなたの雪をとかす熱となる。花びらが多くなれば、あなたが生きる世界はほんの少し暖かくなるかもしれない。そして、その暖かさが、あなたが見る世界に色をつける。

 花びらが雪となって落ちるこの世界で、懸命に生きるあなたに敬意を。嘘とは、あなたの心がこぼした感情の結晶だと私は思う。その感情がどのようなものでも、あなたがこの世界に生きている大切な証。その嘘が、いつかあなたを暖める花となってくれますように。今日もあなたという花が、この世界に確かに咲いている。

「花一つない雪原 春風が吹く 融ける粉雪 穏やかに揺れる小さな花 どれだけ微かなきざしでも 世界の冬をとかすでしょう」

 私たちが生きるこの広大な世界には、様々な景色が広がっている。色とりどりの花が揺れる花園。絶え間なく流れ星が過ぎ去っていく美しい夜空。広大な海が広がり、眩しい日差しと肌を焼くような熱気が照りつける砂浜。その全てがこの世界の美しさをあらわしている。だが同時に、あなたはこのような光景に出会うかもしれない。一切の温度を感じさせず、吐いた息は凍りつき、肌に吹き付ける風は鋭く冷たい。見るもの全てが雪と氷に覆われた世界。

 怖がらせたいわけではない。ここで覚えておいて欲しいことは、この世界には美しいものがいっぱいあるということ。雪原だけがこの世界の全てではない。色とりどりの花園も、星が降る夜も、眩しく熱気を感じる砂浜も、全てが凍りつく雪原も、その全てがこの世界の一部として存在している。

 では、雪と氷に覆われてしまった雪原には何も残っていないのだろうか。もちろん、そうではない。あなたは春に吹く、柔らかくあたたかい風を感じたことはあるだろうか。寒さに震えた身体に広がるじんわりとした熱。それは、降り積もった雪が静かに溶け出す感覚と似ている。暖かい言葉、ちょっとした気遣い、美しい在り方、誰かの笑顔。その全てがこの世界の氷雪を少しずつ溶かしていく。

 その変化は、最初は目に見えないかもしれない。降り積もった雪が、春の熱にあてられて、少しずつとけるように。その変化はゆっくりと進行し、確実に積み重なっていく。とけた雪は水となって、受け取った熱を周囲の雪に伝える。それが繰り返されることで、広大な雪原は少しずつ溶けていく。やがて、雪の下から青々とした草木や小さな花が顔を出す。

 人は誰しも心の中に熱を持っている。もちろんあなたの中にもある。厳しい寒さのなかで、消えてしまったかのように感じることがあるかもしれない。そんな時は、目を閉じ、胸に手を当て、ゆっくりと深呼吸をしよう。手のひらに感じる鼓動、体が発する熱、呼吸の音、その全てが、あなたがこの世界に熱を生み出している証。『ない』と『ある』の間に天と地ほどの差があるように、あなたがこの世界に生きている。それだけで、この世界は少し暖かくなる。

 様々な風景が入り乱れるこの世界で、懸命に生きるあなたに敬意を。深い雪の下には青々とした草木や美しい花の種が埋まっている。いつか、あなたという熱がその雪をとかすだろう。今日も世界に、あなたという熱が確かに灯っている。