出張が多い仕事なので夜のお供に出張用ヘッドホンを買った。
もう金掛ける気も無いので予算1万円前後で探してこれにした。
オーディオから足洗って数年経つので全然知らなかったがfinal audio designが展開する廉価ブランド(?)らしい。
令和3年にもなってBluetoothオーディオを初めて使う。
というのも、使っているものがBluetoothに対応していないのである。
長期出張では専らプレステで遊んでおり、スマホに色んなものを集約するのが嫌なので音楽を聴くのはiPod。
よってBluetoothである必要は無いんだがノイズキャンセリングが付いてるのってなるとBluetoothにするしか無いのよねぇ。
民宿に泊まる事が多いので周りの騒音が結構気になるのだ。
という事でトランスミッターも購入。
宿でしか使わないからバッテリーレスでいいんだけど安物に限って何故かバッテリーが付いている・・・
安物のリチウムイオン/ポリマーバッテリーって信用ならないし、年数経つと破裂とか発火の危険があるので必要無いなら省きたかった。
わざわざバッテリーレスのサンワサプライの高いやつを購入。
一応ヘッドホンに合わせてBluetooth5.0。
音質を語るなんて野暮な事はしないが、今のBluetoothってちゃんと使えるのね・・・
ノイズキャンセリングもwalkmanありきの時代で知識が止まっているので、ヘッドホンを優秀な耳栓代わりに使えるのに驚いた。
ただ遮音性を高める為に仕方無いのかもしれないが側圧強すぎんかこれ?俺の頭がデカいだけか?
2時間くらい付けてると耳の周りが痛くなるのでヘッドバンドの骨をグイっと曲げて調整した。概ね満足はしている。
ここまでは前書き。俺はBluetoothオーディオとは別の道を歩み衰退したワイヤレスヘッドホンを10年愛用している。
Sennheiser RS170
2011年の3月に買ったから丸10年。
深い意味は無いが箱も保管してある。
Bluetoothオーディオが普及し始めてはいたもののBluetooth=音質が悪いと言われていた2010年頃、ゼンハイザーやTDKなどの一部のメーカーが"Kleer"という無線転送技術を使ったワイヤレスオーディオを販売していた。
詳しく知りたいなら当時の記事を読んで欲しいのだがざっくりまとめると
①当時のBluetoothでは難しかったCD音質の非圧縮転送を理論上可能としていた
②当時のBluetoothと比較して圧倒的に省電力だった
③当時のBluetoothと比較して電波干渉に強く通信距離も長く、かつ低遅延だった
http://vaiopocket.seesaa.net/article/109198956.htm
当時のワイヤレスはBluetoothのこれから進歩に期待という感じで、普及バージョンは2.1あたりだったと思う。
家庭用なら赤外線かATH-DWL5000とか2.4GHz帯のワイヤレスも一部あったが高かったし電池の持ちも良くなかった。
ちょうどその頃家庭用ワイヤレスを物色していた俺はKleerを知って「すげぇぞこれは!」と思いヨドバシカメラに買いに走った。
自分用と何故か兄貴の就職祝いつって2個買った。
そして今になって最新のBluetoothオーディオを使ってみて驚いたのと同時に、10年前に現代のBluetoothに引けを取らない性能を持っていたKleerが商業的に成功していたら世の中はどうなっていただろうか・・・という想像を巡らせる。
RS170はトランスミッターにアナログのステレオミニ入力しかなく流石に時代遅れ感は否めなくてそろそろ退役させてもいい気はするんだけど、かと言って自宅用もBluetoothにしたいかというと答えはNOである。
使い終わったらトランスミッターにポンと乗せれば勝手に充電してくれる。もちろん電源OFFの操作も必要ない。
次に使う時にはフル充電でスタンバイしてくれている。
不精にはこの手軽さは手放せない。わざわざケーブル繋いで充電なんてめんどくさくてワイヤレスの意味ないじゃん(笑)
ちなみにワイヤレスを今でも使っているのは酒飲んだ時に間違いなくコードを引っかけるから。
ワイヤレスはそのまま便所行けるし便利なのよ。
有線ヘッドホンも1つ欲しい気はするがもうアンプだのケーブルだので悩むのも嫌なので、ヘッドホン自体の能力でほぼ全てが決まるワイヤレスはいい意味で割り切りと諦めが付くのでBluetoothが進化し普及したのは素直に良い事だと思う。
現代のBluetoothの性能が良くなっても気に入らないのはバッテリーである。
DC3.7Vの内臓バッテリーが一般的であるがこれはいつか交換の必要が出てくる。その時バッテリーは手に入るのだろうか。
そもそも交換を想定していないモデルが多いはずだが。
RS170を10年使えている理由はバッテリーにある。
こいつは単四のニッケル水素電池なのだ。最近3回目のバッテリー交換をした。
4年前にバッテリーが3時間程しか持たなくなりカスタマーサポートに交換用バッテリーの設定はあるか問い合わせたところ「メーカーの補修部品として供給しているのはパナソニックエネループですが、市販のニッケル水素電池なら問題ありません」との回答を得た。
4年前俺は無職でガチで金が無かったのでダイソーのReVOLTESを突っ込んだが、エネループでも1000円しないでバッテリー交換ができる。バッテリーの寿命など気にせず使い終わったら即充電。
そして単四のニッケル水素電池は今後も間違いなく手に入る。これがRS170を10年使えて、今後も使い続けられる理由である。
余談だが、ダイソーのReVOLTESは100円にしては大したもんだった。
エネループ等に比べて自己放電が多いのはほぼ間違いないが毎日使って即充電という使い方では問題にはならなかった。
今回交換したのも別に持ちが悪くなったからではなく4年も使ったしそろそろ換えるかとふと思い立っただけ。
3代目バッテリーは安売りしてた東芝のIMPULSEにした。
ちなみに1番上が最初に入っていたバッテリー(捨てろ)。GP INDUSTRIAL製で600mAhだったんか。
Kleerが画期的だったのは駆動時間の長さで、当時の2.4GHz帯のワイヤレスヘッドホンがカタログスペックでせいぜい10時間持てばいいところだったのに対しRS170は24時間、エージング(笑)で全開で鳴らし続けても18時間駆動できた。
エネループもインパルスも750mAhだしカタログスペックの24時間を上回るって事か・・・?
買った時は1日10時間使うとかザラだったし、今でもパソコンする時や映画見る時は必ず使っているので週末の夜は5~6時間くらいは鳴らしっぱなしである。
ざっと計算してRS170はこの10年で軽く10000時間は使っているし、これからも使い続けるだろう。
また余談だがモスキート音を聞いてみたら10年ほど前は17000Hzまでは聞こえていたのが今は15000Hzでギリギリだった。
これはヘッドホンを使いすぎたせいなのか仕事のせいなのかただの老化なのか(笑)
電波干渉へについても、この10年で雑音が入ったり途切れたりという事は一瞬たりとも無かった。
逆に、Wi-Fiを2.4GHz帯で使ってた頃はRS170のヘッドホン側の電源を先に入れてトランスミッター側の電源を後に入れる"儀式"をしないと永遠にWi-Fi接続できないくらいに強力だった。
上記の通りワイヤレス"オーディオ"としての実用上の課題、Bluetoothオーディオが抱えていた問題を早い段階で全て解決していたKleerはなぜ天下を取れなかったのか?
今検索してみても数年前の、しかも割とオーディオ好きだった人達が書いた情報しか出てこないくらいに普及しなかった。
数少ない情報を寄せ集めてみるとBluetoothの方がKleerより汎用性で先を行っていて、後からオーディオとして求められる性能が追いついたって感じじゃなかろうか。
Kleerもカーナビとの連携や動画転送という構想があったみたいだけど、それ以降の情報は無いし自分も専用のトランスミッターを必要とする音声転送のカタチまでしか見たことが無い。
Kleer社ことKleer Semiconductorは2010年にStandard Microsystemsという会社に買収されていて、その会社もとっくに買収されているらしい。
その変遷を辿ってみるとまた面白いかもしれない。
そんな感じで日の目を浴びる事のなかったKleerだが、Bluetoothの進化によりその思想は受け継がれ一般に定着した・・・
Sennheiser MX W1('08)
今街中でよく見かける完全ワイヤレスってやつ?
MX W1が出た当時、Bluetoothではこのカタチはまだ不可能だった。というのはトランスミッターとレシーバーは1対1までだった。
MX W1はKleerのトランスミッター1機に対しレシーバー2機以上を接続できる強みによって左右独立を実現していた。
AirPods?とかいうのが出る数年前にそのカタチと思想は完成していたという事。今は完全ワイヤレスイヤホンという呼び方でこのカタチは定着したようだ。
「こんなの耳から外れたらどうすんだよw 一式6万円が外れて下水にでも吸い込まれたら立ち直れねぇよw」というのがMX W1を初めて見た時の俺の感想。
だからAirPodsなんてものがこんなに普及するなんて想像してなかったよ。
まだこうやって当時のレビュー記事が残ってるとなんだか嬉しくなる。
ゼンハイザーの家庭用ワイヤレスヘッドホンはRSという名を冠し何世代かに分けられる。
初代はRS100とRS110?これらは多分乾電池式だと思う。全く情報が無いのでよくわからんが・・・
RS120からトランスミッターの上に乗せて充電できるようなって、無線転送の技術は世代によって違えどトランスミッター兼充電器×単四充電池のこのカタチは変わらなかった。
いや違うな・・・RS170の兄弟機であるRS160は屋外で使えるようにトランスミッターにも単三充電池が入っていた。
こいつは派生モデルみたいなもんか。
またまた余談だがRS170とRS180のバッテリーはGP INDUSTRIAL製だったのにRS160だけ標準でエネループだった(らしい)
2021年現在、ゼンハイザーのホームページに載っているRSシリーズはRS195とRS175のみで、2.4GHz18時間駆動とはなっているがKleerの表記は消えた。
Kleerを継ぐ進化なのか全く別の技術なのかもうわからないし、確実に言えるのはRSシリーズの新機種はもう出ないということだ。
まだ新品が適正価格で買えるうちにRS195買っておこうかな。光デジタル入力も割と廃れてきてる印象はあるけどやっぱ欲しい。
でも10年に渡ってガシガシ使ってきたRS170はこれからも使い続けられるポテンシャルがある。だから惚れこんでいるし退役させたくない。
道具は使ってこそ美しいという俺の思想の原点はこのヘッドホンから来ている。
ほぼ思い出補正で選ぶならRS220は一機持っていたいと思う。
RSシリーズの中でトランスミッターに乗せた姿のかっこよさはRS220が抜きんでている。
名機と呼ばれたHD650に匹敵するとメーカーが豪語するから俺も期待して秋葉原に試聴しに行ったさ。
読んでて思い出した。
・HD650に匹敵するという期待感からの実際に聞いた時の落差
・駆動時間なんでそんなに短くなった?
・死ぬ程操作し辛い&安っぽいヘッドホン側のボタン
・でも最高にかっこよかった
Bluetoothの台頭でこのカタチが時代遅れならば、最後に本気のファイナルモデルを出して欲しい。
オープンエアー、光デジタルとHDMIのIN/OUT、そしてニッケル水素電池。
Bluetoothって結局屋外で使えないと意味が無いからみんな密閉型になってしまう。ホームワイヤレスという特化した用途にのみ許されるオープンエアー×ワイヤレスの最終形態を見てみたい。
世界で初めてオープンエアーを量産したメーカーなんだろ?
ホームワイヤレスの最新モデルはソニーのWH-L600か?光デジタル入力は魅力的だが・・・
リチウムイオン/ポリマーバッテリーも規格化が進みメーカー供給の補修部品にこだわらなければ代替品の入手も難しくない。
それでもシリーズを通して単四電池駆動を貫いたのは良いものを長く使うというドイツ人の思想が込められているのではないかと勝手に想像している。
こいつは壊れて修理できなくなるまで使うんだろうな。
くたびれたイヤーパッドも俺には耳に馴染みすぎて替えが利かなくなってしまったんで。