市役所勤務の現役保育コンシェルジュ、ナナです。


今日は昨日の続きです。 

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さてさて。

では、「転園しなければ良かった」と窓口で号泣されたママさんのお話です。


2歳児のお子さんがおられます。

先月末まではお隣の市の保育園に行っておられました。

うちの市内にマイホームを建てられたのです。

うちの市に転入しても手続きさえすれば、お隣の市の保育園に通い続けることは可能です。

その選択肢もありました。市をまたいだ通園になりますが、車なら無理な距離でもありませんでした。

でも、いずれは地元の公立小学校に入学するし、今のうちに友達を作っておいた方がいいだろうとのお考えから、転居先であるうちの市のお家近くの園へ転園の申込みをすることにされたのです。


マイホーム購入の際、すぐ近くに園があることを知っていました。

周辺をブラブラと散策していると、子ども達の元気な声が聞こえてきて、その声のする方へ行ってみると「保育園かな?」となりました。

すぐ、その場でGoogleなどで検索すると、認可のこども園だということが分かりました。

「こんな近くにあるんだ」ということと、園庭で遊ぶ子ども達が元気いっぱいで、自由に楽しそうにしているのが好印象でした。

ご夫婦でどちらからともなく「ここの園に通えたらいいね」という話になったそうです。


そのこども園の見学には行っていませんでした。

園のホームページは見ました。あとは、あの散策の時に園の外から見た園庭の子ども達の様子、立派な園舎、そして立地の良さ。

それから、うちの市役所に

「4月、2歳児が比較的入りやすい園はどこですか?」

と問い合わせをされたそうですが、その時にこのこども園の名前が1番に挙がったとのことでした。


それはそうなんですよね。

すごく規模の大きな園なんです。0歳児から5歳児までで200人を超える規模です。小さな園ですと2歳児は「欠員が出ない限りは新規募集なし」という園もある中、このこども園は2歳児でも毎年5〜6名は取って下さる。

このママさんに限らず、「2歳児が入りやすい園」と尋ねられたら、まず私もこの園を挙げると思います。


入りやすいと聞いたら、「渡りに船」ですよね。

希望園の第1希望にして、転園の申込みをされたそうです。


ご夫婦ともにフルタイム勤務で点数も高い。

2歳児募集枠も今年も5名ありました。

私達職員から見たら、すんなりと入所決定された方になります。


そして、いざ4月。

引っ越しも済み、こちらのこども園への入園となりました。


そして。

ならし保育も終わり、来週からは通常時間の保育になるという金曜日の午前中。


思い余ったママさんが市役所に相談に来られたのでした。


「今から転園できませんか」から始まりました。

「何かありましたか?」とお尋ねすると、ポロポロと涙をこぼされました。


コレはただごとではありません。

私、自分のデスクの箱ティッシュを持ってきてママさんに差し出しました。


ママさんのお話を要約すると。


3月まで通っていた保育園は小さな園だったけど、0歳児から小学校就学まで通えて園児数は50人ぐらい。

朝は教室まで送って行くと、担任保育士が待っていてくれて、その日の体調などを尋ねてくれた。

夕方、迎えに行く時は教室まで行くこともあるけれど、日によっては園庭で保育士と遊んでいたり、抱っこされて待っていてくれることもあった。必ず保育士から、その日にあったことなど、小さなことでも話をしてくれて「また明日ね」などの言葉がけかあった。


今の園では、保護者の送迎は門のところまで、と決まっている。

朝は門のところにいる何人かの保育士に子どもを引き渡す。「おはようございます」の言葉はあるが、とくに何もなければそれ以上言葉を交わすことはない。

まだ歩けないような乳児さんは抱っこされて教室に連れて行かれるが、2歳児は自分で教室に行く。とくに保育士が付いて行くということはなく、1人で教室に向かう。

夕方のお迎えの時も、門のところにいる保育士に名前を告げ、子どもが出てくるのを待つことになる。

門のところから見ていると、まだ2歳の子が教室から出て自分で靴箱から靴を出し、靴をはいて自分の荷物を持って1人でこちらに歩いてくる。保育士の付き添いもなく。門のところの保育士は「さようなら」以外に話すことはない。担任でもないから、今日の様子を聞いても分からないだろうと思う。


朝夕の送迎の時だけでも、前の保育園との違いをものすごく感じている。

1歳児と2歳児では、年齢が上がったのだから、そんなふうになるのかなとも考えたが、うちの子どもは2歳児だけどまだ入園したばかり。もう少し配慮があってもいいんじゃないかとも思う。門のところにいる保育士は、何かを尋ねても対応が事務的な感じで話しかけづらい。


入園式以来、ならし保育の期間、そういった事にずっとモヤモヤしていたら、ある日、子どもから言われてしまった。

「前の保育園が良かった」って。

「前の保育園に戻りたい」って。


コレを子どもに言われてしまうと、ママさんとしてはモヤモヤしていた気持ちを自身で抑えていたけれど、1度に崩れてしまったのですね。


「園によって、こんなに対応というか方針が違うって思いもしませんでした」と言われるママさん。


そうですね。

どうしても、3月まで通われていた保育園と比較してしまうところがあるんですね。

ただ、今、行かれているこども園は「そういう方針」の園なんですよね。

どういう方針の園かというと、ここの理事長は何園も園の運営をしていて本も出版されているような、保育業界ではちょっと名の知れた方です。あんまり詳細を書くと園が特定されてしまうので避けますが、この理事長、

「大人に依存せずに1人で生きていく力を育てる」

というお考えをお持ちなんですね。

だから、です。

「朝夕の送迎は保護者は門のところまで」

ということなのでしょう。


このこども園、そういった園の方針や考え方を理解した方に入園していただきたいと、毎年秋に説明会も行っています。


このこども園に関して、保護者さんの意見は賛否両論。

「気に入った!」という方と

「うーん、うちはいいかな」という方。


この度、転園のご相談をされてきたママさんはきっと後者の方に当てはまる方でしょう。


「気に入った!」という方が入園されれば問題ないし、「うーん」と思われた方は他の園を希望されたら良い。でも、何も知らずに入園してしまうと、「子どもは門で引き渡し。保護者が園内に入るのは園行事の時のみ」というルールが人によっては奇異に見えるかもしれません。


この度のママさんは、転園という環境の変化に不安になるお子さんを出来る限り支えたいという気持ちで、園の保育士さん達とも手を取り合いたかったのに、全然思っていた状況と違っていて、とうとう

「前の保育園に戻りたい」というお子さんからのトドメのような一言。


辛い。


「引っ越しをして、大人の都合で子どもに辛い思いをさせてしまった」

と泣かれました。



このお話は、まだ続きます。

長くなりますので、一旦切りますね。


では。

最後までお読みいただいてありがとうございました。