市役所勤務の現役保育コンシェルジュ、ナナです。


昨日あたりが、保育園や幼稚園の卒園式というところが多かったようですね。

小学校や中学校、高校の卒業式も終わったみたいですね。


卒園、卒業を迎えられた皆様は、本当におめでとうございます。


今日のブログは保活には関係のないお話になりますが、ふと思い出したことがあり、私自身、忘れたくないエピソードなので書いておきたいと思いました。良かったら、お付き合いください。


息子の小学校の卒業式でのお話です。


同級生にAちゃんという女の子がいました。

Aちゃんとは幼稚園から同じでした。Aちゃんのお母さんとは、特別に親しいということではありませんでしたが、会えば挨拶をするし、ちょっとした世間話などもする間柄でした。


小学校6年生の2学期だったと思います。Aちゃんのお母さんがご病気で亡くなられたと聞きました。その少し前に電車でお見かけしていたので、突然の訃報にショックを受けました。

その後、学校行事などは必ずお父さんが来られるようになりました。参観日も来られていました。中学校入学に向けての説明会で、1番前の席で熱心にメモを取っておられた姿が特に心に残っています。

Aちゃんは1人娘さんです。父子家庭になられ、色々と体力的にも精神的にもお辛いことはおありでしょう。でも、説明会でお見かけしたお父さんは、苦心しながらも一生懸命に娘を育てておられるのが分かるお姿でした。


そして、卒業式の日。

どういう事情があったのかは分かりませんが、どうやらお仕事の都合か何かでAちゃんのお父さんが来られていないようでした。

それまで、参観日や説明会に必ず来られていたお父さんです。卒業式には絶対に出席したかったはずです。よほどの事があって、泣く泣く欠席になってしまったに違いありません。


私がなぜ、Aちゃんのお父さんが来られていないかを知ったかと言うと。

私の前の席に座られていたご夫婦が式の前にこんな会話をされていたからなんです。

「Aちゃんは1組やな」

「そうやで。B(このご夫婦の息子さん)より先に呼ばれるからな」

「この前の通路を通る時と、卒業証書を受け取る時ぐらいでええかな?」

「いっぱい撮ってあげてよ。Aちゃんのお父さんにしたら、どんな場面でも見たいと思うよ」

「そうやな。責任重大やな」

「ほんまやで。あんた、ちゃんと撮りや」


たぶん、このご夫婦はAちゃんのご近所さん。

卒業式に出られないAちゃんのお父さんのために、せめて写真を撮ってあげようとされているのでした。


ああ、こんな親切にして下さるご近所さんがいらっしゃるんだなとあたたかい気持ちになりました。


そして、卒業式が始まりました。

厳粛な雰囲気の中、式は進んでいき、卒業証書授与となりました。

前の席のご夫婦の背筋が伸び、旦那さんの方がカメラを構えました。


Aちゃんの名前が呼ばれました。

Aちゃんのしっかりとした「ハイ!」の声が響きました。


カメラマンとなった旦那さんがカシャカシャとフル稼働でシャッターを切っています。


Aちゃんが壇上から降りてきました。

もうすぐ、私達保護者席の前の通路を通ります。


いよいよです。

中腰のままでカメラマンの旦那さん、椅子から立ちました。奥様の方は座ったままで

「Aちゃん、Aちゃん、こっち見てー」

と小さな声で呼びかけて手をふりました。


Aちゃんは表情を崩しませんでした。きっと緊張しているんだと思います。もしくは、恥ずかしいのかもしれません。


でも、このご夫婦は何としても、Aちゃんの晴れ姿の良い写真を撮ってあげたいのですね。

旦那さんが一歩、前に足を出そうとしました。


その時です。


旦那さん、必死に撮影しようとするあまり、勢いが付き過ぎたのでしょうか、大きく体のバランスを崩して、通路にひっくり返っちゃった!


いらすとやさんからお借りします。

Aちゃんはもちろん、保護者席の私達もビックリです!

すぐに体勢を建て直されましたが、奥様の方は笑いを堪えられない様子でバシバシと旦那さんの背中を叩かれていました。


でも、この旦那さん、めちゃくちゃ良い人ですよね。

自分の子どもと同じぐらい、いや、それ以上の気持ちでAちゃんの写真を、少しでも良い写真を撮ってあげたいと頑張って下さったんです。


Aちゃんのお父さんは絶対に喜ばれたはずです。



その後、Aちゃんとは高校まで一緒でした。

中学校も高校もお父さんは学校行事にずっと来られていました。

高校の卒業式で、たまたま近くの席になり、

「Aちゃんのお父さんですよね。幼稚園からずっと一緒なんですよ」

と話しかけてみました。

「ああ、そうなんですか」

と、穏やかな笑顔で返してくださいました。


小学校の卒業式で、ご近所の旦那さんがひっくり返ったことはたぶんご存じないでしょうが、あの時の写真はきっと大切に持っておられることと思います。



今日は春分の日。お彼岸ですね。

子どもの頃、

「お彼岸というのは、亡くなった方を思い出す日」

と教わりました。

今日は、このブログを書いたことで、Aちゃんのお母さんのことを思い出せました。

幼稚園のお迎えの時に、コーギー(犬)の話なんかをしましたね。


はい、では。

最後までお読みいただいて、ありがとうございました。