市役所勤務の現役保育コンシェルジュ、ナナです。
今日と明日は「保育園の空き状況」についてのお話です。
多くの市では、市役所のホームページ内で認可保育園の空き状況を公表しています。
「多くの」と言いましたが、中には「空き状況は公表していない」という市がありますね。
うちの市の近くの市も公表していないところがあります。公表していないという市は、待機になっているお子さんがあまりいない市だと思います。
うちの市の近くの市、仮にX市としましょう。
X市は、昔から保育園とか幼稚園が人口の割にはなぜか多い市で、認定こども園の制度が始まってから、さらに何園かの認可外園が認定こども園に移行しまして。
もう、需要と供給のバランスが完全に崩れていて、以前から定員に達していない園が何園もある状況になっています。決してド田舎という訳ではないのですが、ただただ、保育園を作り過ぎた、のです。
少子化も進み、人口も減っています。特別に子育て支援に力を入れているという市でもありませんから、今後、急に子どもが増えていくとも思えません。
だから、空き状況なんて公表しなくても、まあ入園申込みをしたら、どこかに入れるだろうという感じです。都市部では考えられないことですね。いいえ、都市部でなくても、すぐ近くのうちの市でさえ、X市の状況は異様だと思っています。
子どもを保育園に入れたい保護者さん達にしてみれば、それはすごくありがたい状況ではあります。必死になって保活をして、それでも保育園に入れないことがあるなんて、X市の保護者さん達は、遠い国の話ぐらいに思っておられるかもしれません。
でも、X市の保育園事情、市役所側から見ると深刻な問題もはらんでいます。
園は定員割れが続くと赤字経営になりますから、園児募集には力が入ります。そうなると、もう「子どもの取り合い」です。あの手この手で園児募集します。
「うちの園だけ申込書に書いてね。絶対に入れるようにするから」
と、見学に来られた方に言っちゃってたりします。保育園の入所選考で「絶対に」なんて、ありません。他にその人より点数が高い人がいたら、その人を差し置いて入所決定できるはずがないんです。
ところが、小耳にはさんだところによると、X市は入所者決定において市役所より園の方に力があるんだとか。
例えば、「△△さんって方を8月から入れたいと思っています」という連絡は普通にあるらしいです。
びっくりするのは、
「6月入所の方、決定しました〜」と市役所が決定者氏名等を書いた通知書を園に送ると
「○○さんって方は申し込みされていませんか?」
と電話がかかってくるんだとか。
「申し込みはされていますが、今回決定された方の方が点数が高いんです。○○さんは次点です。入園可能は1人のみとお聞きしていましたから」と言うと、
「あと1人ぐらい大丈夫よ。○○さんも決定ね」と言われるそうです。
もう、市役所で選考している意味がない。
そんな市で「保育園の空き状況」なんか公表する必要がありませんね。
うちの市は西の方でちょっとだけX市と接しているんですが、その地域の方は、もううちの市の園よりX市の園を希望する方が確実に入れると思います。
実際、住所を見て「近くのX市の園にも申し込みできますよ」と私は積極的に案内しています。
「申し込み前に園の見学に行った方がいいですよ」と付け加えて。
最近では、保護者さん達の中でも「X市は入れるらしい」と口コミが広がっているようです。
「保育園に入りたい人が入れる」という点においては、X市の状況は良いのかもしれませんが、でもね。
あと、何年か、何十年かしたら、日本中がそういう状況になるのではないかと思ったら、ちょっと怖いんですよね。
少子化が進み、子どもの数は確実に減ってきている訳ですから。X市は未来の縮図のように思えます。
今、大学が学生が集まらなくて閉学する時代です。
そのうち、保育園もそうなってもおかしくないんじゃないかと思います。
最近のニュース。
「こども誰でも通園制度」。
空きのある保育園に週1〜2回程度、就労などの保育必要事由がなくても、誰でも希望したら子どもを保育園に預けることが出来るようにする制度を、実施する方向で政府が検討中だとか。
都市部の方々は、
「そんな『誰でも』入れる余裕なんかある訳ない!入りたくても入れない人がいっぱいいるのに」
と思われたと思います。
うちの市のような地方の小さな市でさえ、このニュースを聞いた時は「は?」と、なりました。
でも、X市なら、何ならスグにでもやれる。
いや、やった方がいい。
「保育園の空き状況」をホームページに公表している市は、
「申し込みをしても入れないことがあるんですよ。
ほら、見てください」
って意味で出しているんです。
これから保活を始める方は、
うちの市は田舎だから大丈夫だろう、とか
小さな市だからそんなに厳しくないだろう、とか
簡単に考えないで、まず市役所のホームページを見て「保育園の空き状況」の表を探してみて下さい。
「空き状況」が公表されているのなら、思っているより保活は厳しいかもしれませんよ。
ご参考にしてくださいね。
はい、今日は長くなってしまいましたが、最後までお読みいただいて、ありがとうございました。
次回も「保育園の空き状況」のお話になります。