【アリとキリギリス】
夏の間、アリさんはせっせと働き続けました。
クフ王でもいるのかよ！ってくらい働き続けました。
キリギリスは、そんなアリさんに聞きました。
「どうしてそんなに頑張ってるんだい？」
「これはこれは、キリギリスさん
僕たちは、冬のために今のうちにたくさん運んでるんですよ」
「こんな蒸し蒸しする中働かなくても、今は食べ物が一杯あるんだから
歌って踊って楽しめばいいじゃないか！ 虫なだけに」
キリギリスは片方の眉を上げながら
ぐーたらと寝そべりながら言いました。
アリさんは、「そんなこと言ってたらあとで困っちゃうよ？」
と言いましたが、キリギリスはそれを聞いて笑っていました。
しかし、その言葉通り、恐ろしい冬がやってきたのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「……というわけで。
わしらの先祖は２０年前に一度
絶滅しかけたわけじゃ……。
ほんまギリギリのとこで、生き延びたんやけどな。ギリギリやったわ。
キリギリスなだけに。」
長老は子ども達に、
ご先祖様が絶滅寸前までいった話
アリとキリギリスの本を読んでくれました。
「お前たちにはこの教訓を絶対に忘れないで欲しい！
なんの教訓かわかるか？」
子ども達は皆、顔を合わせながら言いました。
「はい！日々怠けず、働くことです！」
「ちがう！！」
「もちろんアリさんのように怠けないことはとても大切じゃ！
しかし、時には怠けてしまうのが生き物と言うものじゃ！
しかも、わしたちとアリさんは違う。
アリさんにはアリさんにしかできないことが
キリギリスにはキリギリスにしかできないことがあるんじゃ！
わしが伝えたいのは、自分の一番好きなことは
中途半端にするのではなく、思いっきりやれということじゃ！」
長老のキリギリスの教えを守り
キリギリスたちは、大好きな音楽を練習し
好きなことを思いっきりやる楽しさを身に付けました。
しばらくすると、アリさんが歩いてきました。
「やぁやぁ、アリさん、どうしてそんなに働いてるんだい？」
アリさんは困った顔で答えました。
「それは、働かないと生きていけないからだよ。
冬に備えて、今のうちに食料を貯めてるんだよ」
「そうか、音楽でも聴いていかないかい？」
「それどころじゃないよ。しっかりと働かないと」
アリさんは、キリギリスのお誘いを断り
また、一生懸命働き始めました。
すると不思議な音楽が聴こえてきました。
「こ……この音は！！なんだ……情熱が湧いてくる！
不思議なほどに力と情熱が湧いてくる！！
なんだこの不思議なメロディは！」
アリさんはキョロキョロとメロディの正体を確かめました。
「……はっ！！」
「情熱の宝庫や！！
情熱の大陸がおるで！」
アリさんたちは素敵な音楽にのせられ、無駄な力が抜けて
いつもの何倍も仕事がはかどりました。
お礼にアリさんは、たくさんの食料をキリギリスさんにプレゼントしました。
その日の夜は、アリさんだけじゃなく、たくさんの虫たち、動物たちが集まり
キリギリス音楽団の大演奏会で、みんなが楽しみました。
くまさんや、きつねさん、ハチさん、たくさんの動物や虫が
キリギリスに食料をプレゼントしました。
その日は、とても遅くまで音楽を楽しみました。
キリギリスたちの大演奏会のおかげで
みんな、とてもリフレッシュできたみたいです。
「キリギリスさん、素敵な音楽をどうもありがとう」
「いえいえ、みんなも食料を分けてくれてどうもありがとう」
動物たちや、虫たちは楽しそうに、おうちに帰っていきました。
これで、キリギリスたちも、無事に冬も越せそうです。
夏の終わりも近づき、
キリギリスの最後の演奏と花火を楽しんで
冬支度にはいるところでした。
「これで冬も安心して過ごせるね」
そう、キリギリスが言った瞬間
食糧庫から大声が聞こえてきました。
「大変だ！
何者かに食料が
全部盗まれてる！」
つづく
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