連日熱戦が続くパリ・オリンピックだが、気候も暑さに見舞われているという。

​ 7月30日には、パリ市でめったにない35℃の猛暑だったそうだ。今まではパリの夏は涼しいとされ、エアコンの無い家庭が普通だ(写真=パリ市内に設けられたミスト)。​

 

 

​ ところがこの暑さ、選手、特に屋外競技の選手にとって過酷な毎日が続く(写真=熱中症症状になり試合後に首筋を冷やす小野寺吟雲選手=左=と、熱中症の危惧を語るオーストラリアの競歩代表のリディアン・カウリー選手)。​

 


酷暑で開催候補地が狭まる夏の五輪​

 国際研究チーム「ワールド・ウエザー・アトリビューション」によると、人間活動による温暖化で地中海沿岸地域の7月の気温は、2.5~3.3℃引き上げられているという。

 昨年も過去最高の暑さだった。この時はエルニーニョ現象のせいと説明されていたが、エルニーニョはとっくに終わったのに、昨年を上回る全地球的な暑さとなっているのは、地球温暖化のためであることは明らかだ。

 地球温暖化は、容赦なくスポーツ競技も襲う。

 2021年の東京五輪では、一部のアスリートから「暑さで死んだら責任をとれるのか」という声も挙がったという。JOCはIOCの勧告もあり、マラソンと競歩を涼しい札幌に移して対処した。

 たぶん「世界一暑い夏」である東京や関西諸都市は、8月開催ならもう開催に手を挙げられないだろう。1964年東京五輪のように10月に開催を移せれば問題はないが、IOCの財政のかなりを占めるテレビ局の放映権料は、アメリカでは9月以降にアメフットのシーズンが始まるので、9月以降にずらすことが難しい。

 従来どおり8月開催にこだわるなら、開催可能都市はかなり狭まってくる。


冬季五輪も開催候補地無くなる?​

 地球温暖化は、夏の大会ばかりか冬季大会にも暗い影を投げている。ある意味、こちらの方が問題の根は深い。このままでは、雪不足もあり、冬季競技の盛んな都市でも、冬季五輪を開催できなくなるという。

 この中で2030年招致を断念した札幌は、冬も夏も、開催適地のナンバーワンだという。いっそのこと重複投資を避けるために、夏・冬を同一都市、札幌で開催したらどうだろうか。


トンデモない、7回戦制​

​ 7日に始まった夏の高校野球は、もっと深刻だ。今や私立野球学校大会に堕した甲子園野球などあまり興味はないが、それでも温暖化への対策は待ったなしであることは分かる(写真=担架で運び出される選手)。​

 

 

 今年から1回戦の最初の3日間、午前と夕方遅くの2部制にするというが、これは小手先の対処に過ぎない。

 さらに一部には、イニング数を2回減らす7回戦制の採用が議論されているという。

 9回・9人制は野球競技の根幹だ。7回戦制に短縮したら、先発メンバーの下位打者の中には2回しか打席に入れない者が出てくる。地方大会で採用されている大差の付いた試合のコールドゲームを甲子園大会でも採用するならまだしも、甲子園で7回戦制にするなら、野球なんて止めた方がいい。


夏の大会を大阪ドームに移転するか、甲子園球場のドーム化を迫れ​

 猛暑に選手の健康を気遣うなら、甲子園にこだわらず、冷房のある大阪ドームで開催すればいい。

 どうしても甲子園にこだわりたいなら、球場の所有者である阪急阪神ホールディングスに、「大阪ドームに移転するぞ」と脅して、甲子園のドーム化を迫ればいい。

 しかし古くからの甲子園野球ファンの中には、あの猛烈な暑さがたまらなく良い、というサディスティックなファンもいる。僕も昔、焼け付くような甲子園で夏の大会を観たことがあるが、確かに一種のサディスティックな感覚に襲われたことがある。

 長い間放置していた地球温暖化は、いよいよスポーツに変革を迫りつつあるのは確かだ。


昨年の今日の日記:「横浜の旅(後):港の見える丘公園の早朝散歩、庭園の鮮やかな花を愛でる」