​ 先日6月28日とその2日後、2つの小惑星が相次いで地球に最接近して通過した(想像図)。どちらも、地球近傍に飛来する天体としては非常に大きい。うち1つは、双眼鏡程度でも見えた可能性があるものだった。​

 


先にやって来たNEOは直径1.6キロの「超大型」​

 先にやって来たのが「2011 UL21」だ。直径が1.6キロ以上あり、現在知られている多数の地球近傍小惑星(NEO)の99%以上は直径数十メートル程度なのに、圧倒的に大きい。

 NEOでは大型だが、幸いにも今回も地球から月までの距離の17倍以上も離れて通過したため、差し迫った脅威はなかった。

 ただ、このサイズの小惑星との接近遭遇は、発生頻度が10年に1回程度と非常に珍しい。多くの天文学者やアマチュア天文家が観測に参加したと見られる。


地球と軌道共鳴​

 欧州宇宙機関(ESA)は、NEO「2011 UL21」の興味深い特徴を指摘している。

​ 地球とこのNEOは「11:34」の軌道共鳴にあることだ。これは、地球がちょうど34回公転する(つまり34年)間に、「2011 UL21」が11回太陽を周回することを意味する(=「2011 UL21」と地球の軌道)。たまたま地球近傍の軌道までやって来たこのNEOは、そうした軌道共鳴をとることによって長い間に安定したのだろう。​

 

 

 推測だが、おそらく「2011 UL21」が現在の軌道をとるまで少なくとも数千年はかかっただろう。
 

月軌道の内側を通過した「2024 MK」​

 このNEOが飛来してから約2日後(日本時間29日午後10時45分)、サイズははるかに小さいが、それでも珍しいNEOが、月の軌道よりもさらに地球の近くを通過した。この小惑星「2024 MK」は、前記時間に地球に最接近した。

​ 「2024 MK」は、最接近のつい10日ほど前に発見されたばかりで、野球場くらいの大きさがあり、NEO中でもかなり大きい。これほど大きな小惑星が、月よりも地球の近くまで接近するのは珍しく、通常は数年に1回程度しか確認されない(=「2024 MK」の進路=青線=と月の軌道)。​

 

 

 「2011 UL21」と同様、この「2024 MK」も、衝突の恐れがある距離からは依然として数十万キロ離れており、何の危険も及ぼさなかった。もっともけっこう近かったから、ピーク時の明るさは8.5等級程度になり、アマチュアでも観測可能だった。
 

観測態勢は整い、小惑星の軌道変更も可能に​

 万一このような小惑星が地表に到達すると、甚大な被害をもたらす可能性が高いのは間違いない。

 記憶に新しいのは、11年前のチェリャビンスク隕石だ。地球に直撃しなかったのは幸いだったが、破片が地上に達して多数の負傷者を出した(24年5月18日付日記:「2029年4月13日に静止軌道より内側まで最接近する地球近傍小惑星アポフィス」を参照)。

 はっきりしているのは、今回の2つのNEOの最接近例のように、地球近傍を公転する小惑星は、いつ地球に災厄をもたらすか分からないことだ。

 しかし幸いにも、今では観測態勢が整備され、ある程度、不意打ちを避けられそうなことだ。そしてDARTの実験のように、場合によっては接近するNEOの軌道を変えられる可能性も出てきたこともある(22年10月19日付日記:「探査機DART、二重小惑星の衛星『ディモルフォス』に命中、周回軌道の変更に成功! 地球衝突の恐れの小惑星から回避へ」を参照)。

 映画『アルマゲドン』のような世界を右往左往させるような事態は起きない、と思う。
 

昨年の今日の日記:「本で読んでいたがまさか実見できるとは思ってみなかったメテオ・クレーター(バリンジャー隕石孔)の思い出」