最終日、起床すると窓から外を見る。今日も曇りか、と思っていたら、そのうちホテルの窓からの眺めに動く通勤客が傘を差している。雨、なのだ……。


百年記念塔が無くなっていた​

 飛行機は午後の便だから、午前中はほぼ遊べる。

 考えた末、小型とはいえキャリーケースを引いて雨中を歩き回る鬱陶しさを避けるために北海道開拓の村に行くことにした。あそこなら、無料の大型ロッカーがあり、しかもビニ傘を貸してくれる。

 札幌駅からJRで新札幌に行き、そこでバスに乗り継ぐ。

​ 札幌啓成高校前に来ると、もう野幌森林公園だ。次のバス停、野幌森林公園で車窓左を見ると、去年まで見えた北海道百年記念塔が無くなっていた。老朽化で危険だからと解体されたのだ。僕にとって、晴れた日には藻岩山やJRタワーからもよく見え、野幌の森のランドマークとして親しんでいたので残念だ(写真=2019年に訪れた際に撮影)。​

 

 

 次が北海道博物館に続いて、終点が開拓の村だ。


旧有島家住宅、中にはあがらず​

 ここで大型スーツケースも入るロッカーにキャリーケースを収納する。

 身軽になって村内鑑賞だ。といっても、ほぼ毎年、訪れているから、見逃したところはない。しかも時間も2時間弱しかない。

​​ 入り口から入ってすぐの旧開拓使札幌本庁舎(写真)を眺めながら、市街地群の東側を歩いた(マップ)。このすぐ隣は、野幌森林公園である。大きな樹木が枝を伸ばしていて、その下を歩けば雨にも濡れない。雨は、ほとんど小止みだが、しつこく降り続く。​​

 

 

 

​ 5軒目が旧有島家住宅だ(写真)。札幌の生んだ文豪、有島武郎が明治末に実際に住んだ家だ。中に入るには玄関で靴を脱ぎ、出る時はまた履かねばならない。一昨日の藻岩山登山行で筋肉痛にもなっており、それが面倒だ。以前に訪れた時、屋内も見学した。​

 

 

 なるべく内部は、スルーすることにする。


旧北海中学を見学​

​ その先に旧北海中学がある(写真)。私立では道内最古だが、旧制中学なら、一中(現・札幌南)の紹介だろうと思うのだが、明治末に建築されたこの北海中学本館建物は、明治半ばから大正期の官庁や学校の木造建築によく見られる様式だそうだから、代表して復元建築したのだろう。​

 

 

 ここはさすがに靴を脱いで、中にあがった。

 内部は、当時の旧制中学生や女学生のディオラマ展示など、旧制初等、中等学校のちょっとした博物館になっていて、面白い。

 ちょうど市内の中学生たちの課外授業の一行に出遭った。同じ年頃の明治期の学用品や教科書などが展示されているので、興味があるのだろう、しかもよくしつけされ、ダラダラした子はおらず、熱心にメモをとっている。

 彼らは班ごとに行動しているらしく、5~6人の班とどこででも遭った。


旧旧青山家魚家住宅を再訪​

​ 僕は漁村群の旧青山家魚家住宅まで行った。以前も来たことがあるが、今日はガイドのボランティアが出ている。その人に、母屋の前に設置された流しみたいな施設が何かと尋ねると、大鍋で獲ったニシンを煮て、魚油と粕を分ける装置なのだという(写真)。脂を搾った粕は、肥料として売られた。​

 

 

 ここから入り口に戻る。

​ とにかく開拓の村は広い。1日でとうてい見終えない。そもそもひたすら歩くので、疲れる。馬車鉄道も運行しているけれども(写真)、その距離は短く、行楽として乗るだけの意味しかない。​

 

 

 レンガ造りの旧札幌警察署南一条巡査派出所に、この日は昔風の征服を着たボランティアの人が詰めていた(写真)。ちょうど同じ課外授業中学生の質問攻めにあっていた。

 

 

 そろそろバスの時間だ。雨もあがりつつあった。

(完)


昨年の今日の日記:「函館の旅(29):1500年間もの時代幅の中国銭=志海苔古銭38万枚余が埋納されて忘れられたデポ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202306170000/​