制裁発動直後はテロ国家ロシアを貿易・金融面で締め上げると期待されながらも、その後、巧みな制裁逃れで、ロシアは、ウクライナ侵略を続けながら戦時経済で経済成長を続けている。


アメリカによる二次制裁の方針​

 継戦能力を削ぐことはできなかったと短期的には結論づけられるが、最近、アメリカのバイデン政権が、ロシアの制裁逃れに荷担する第三国の金融機関に二次制裁を科す方針を表明したことから、スターリニスト中国の金融機関などがロシアとの決済を停止したことが明らかになった。

 そのためロシアは、武器製造の部品として不可欠の電子製品の調達が難航しているようだ。

​ ロシア中銀によると、2024年1~4月の輸入総額は、前年同期比10%も減った。ロシアが戦時物資の調達で依存するスターリニスト中国からの輸入が3月以降に急減しているのだ(写真=スターリニスト中国からロシアへの輸出品の積み出し)。​

 


スターリニスト中国からの対ロ輸出が大幅減少​

 中国税関総署のまとめによると、4月の対ロシア輸出額は前年同月比で14%も減った。22年6月以来の減少だった3月の同16%減よりはやや持ち直したものの2カ月連続のマイナスだった。それまでスターリニスト中国の対ロ輸出が右肩上がりで、23年の中ロ貿易が過去最高だったことからすれば、大きな変化だ。

 侵略者ロシアとの友好関係を維持する新興国でも、対ロ輸出は減少している。

 例えばトルコの1~3月の対ロ輸出額は前年同期比3割減、中ロに挟まれたカザフスタンも同25%の減、となっている。これらの国が、それまで対ロ輸出を伸ばしていたのは、アメリカの制裁を気にするスターリニスト中国が、これらの国を通して迂回輸出していた可能性が高く、それが最近になってスターリニスト中国の「自粛」で急減しているのだ。


スターリニスト中国の銀行などにアメリカが相次いで警告​

​ アメリカとEUは22年、ロシアのウクライナ侵略の野望を制するため世界的な決済ネットワークであるSWIFT(国際銀行間通信協会=ロゴ)からロシアの主要銀行を遮断した。これが、まさに原爆級の強力な対ロ金融制裁だと思われた(22年3月1日付日記:「ロシア金融制裁に2発の『核兵器』:ロシア中銀制裁でルーブル暴落を促し、SWIFT排除で貿易決済阻止」を参照)。​

 

 

 ところが侵略者ロシアは、スターリニスト中国の金融機関に口座を開くなどして、貿易を続けた。

 これに打撃を加えたのが、23年12月のバイデン方針だった。大統領は、ロシアの物資調達に関わった第三国の(すなわちスターリニスト中国の)銀行についても経済制裁の対象に加える方針を示したのだ。イエレン財務長官らも、今年訪中した折、アメリカの制裁対象になっている企業と取引すれば、アメリカ市場のアクセスを失うと警告した。


中国工商銀行は決済拒否​

 つまりスターリニスト中国の銀行に、アメリカを取るかロシアを取るかを迫ったのだ。答は自ずから明らかだ。経済力が自国の10分の1しかないロシアと取引し、自国よりもずっと経済規模の大きいアメリカ市場を失うなど、中国共産党員ですら考えない。

​ スターリニスト中国の4大国有銀行である中国工商銀行(写真)などは(社長、頭取はむろん共産党員だ)、ロシアからの人民元建て決済を拒否している。取引全体の8割の決済が一時停止に追い込まれたもようだ。​

 

 

 トルコの主要金融機関も、1月以降、軍事関連のロシア企業に法人口座の閉鎖を通告した。軍事関連以外の企業でも、書類確認などに時間をかけ、決済手続きを厳しくした。

 UAE(アラブ首長国連邦)の大手銀行もロシア企業との決済を停止し、5月22日にはかつてのソ連の衛星国だったモンゴルの一部銀行も決済を一時停止した。


中国からの支払いが処理されない​

 ロシアの関係企業は、こうした事態に悲鳴を挙げている。ロシア紙「コメルサント」は、国内の電子部品メーカーの支払いが3月以降、中国の銀行で処理されていない、と報じた。

 テロ国家ロシアの体力消耗へ、徐々に効いてくるとみられる。


​☆関連日記​

・22年9月16日付日記:「ロシアが頼るスターリニスト中国との同盟は長続きするのか、中ソ同盟破綻の歴史」

・22年2月9日付日記:「人口減少に悩むスターリニスト中国とプーチンのロシア、対策は戦争?」


昨年の今日の日記:「函館の旅(28):雨の朝、市立函館博物館に志海苔古銭を観に行く」